攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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いくつになっても、油断するとすぐ黒歴史は生まれる……!

 新幹線の改札を抜けると、広々とした土産物コーナーが見えてきた。いわゆるホームに辿り着く前に、ここで土産の準備や一時の待合、果ては食事に喫茶なんかも楽しんでね! という空間らしい。

 俺達が乗る新幹線がやって来るまでは30分ほど時間がある。というわけでヴァールがエージェントやスタッフのみなさんに向け、おもむろに伝令を発した。

 

「しばらくは自由行動で良い。8時34分到着の新幹線に乗るので25分すぎにはここに集合だ」

「ないとは思いますがくれぐれも迷子になったりはぐれないようにお願いします。遅れたら置いていきますので、一本遅れの新幹線に乗ってください。自由席になりますがそこはご了承くださいませー」

「はーい」

「本当に修学旅行じみてきたな……」

 

 まるっきり引率の先生みたいなヴァールやリーダーさんの姿に、さっき受けた印象を引きずってどうしても団体旅行感を強く受けちゃう。

 というかエージェントのみなさんやスタッフのみなさんも普通に返事して、普通に各自散開して土産物色しに行ったり喫茶店行ったり、はたまた待合室の喫煙所にタバコ吸いに行ったりしているね。

 

 まあ別に、首都圏についたら即座に戦闘開始、事件解決にあたるってわけでももちろんない。現地のスタッフさん方と合流して、改めて部隊再編なりを行って打ち合わせをした上で動き出すんだろうとは思うし。

 それまでの間にまでずっと臨戦態勢でいるのも難しいっていうか、絶対どこかで緩んじゃうからね。気楽に行ける時には気楽に行く、緩急をきっちりつけるのもお仕事の秘訣ってことなのだろう。

 勉強になるよ。

 

「はっはっはー! わーいお土産お土産ー!」

「ハッハッハー、わーい駅弁駅弁ー!」

 

 お仕事スイッチのオンオフ切り替え、その最たるものと言えよう師弟がはしゃぎにはしゃいでお店に突撃していくのを見ながら、俺はそんなことを考える。

 サウダーデさんやベナウィさん、マリーさんにリンちゃんも土産物を見ながら時折、スタッフさん達に話しかけられて応対してるし。さすがS級探査者の大御所さんに新進気鋭のA級探査者だ、今回参加の人達の中にも大勢ファンを抱えていらっしゃるみたい。

 

 となると俺も何かしら、時間つぶしがてらにでもいろいろ見て回りたいところではあるんだけれど……

 さてどうしたもんか? 気付けば精霊知能三姉妹も俺の近くに寄ってきてるし。あれか、特に用事もないから俺に付き合ってくれるのか。優しみ感じるね。

 

「ここ、前に一度来たことあるんだけど……その時は特に何もせず棒立ちで待機時間過ごしてたしなあ」

「そうなんですかー?」

「そうそう。たしか去年の秋頃、中学の修学旅行の時にさ」

 

 リーベと話しつつも記憶を辿る、中学3年生の時。

 つまり去年の修学旅行の時に一回だけ俺は、この場所に来たことあったんだ。この駅まではバスで来て、そこから直で新幹線駅の構内にやってきたわけだね。

 まあ、その時はもちろん探査者でもなけりゃコマンドプロンプトでもなく、なんていうか陰キャ極まりし山形くんだったんだけども。

 

 班員達も独特のオーラを持つ、必要な場面以外では独自行動するぜ……フッ邪気眼! みたいな連中ばっかりだったもんで、俺なんてのも結局、こういうところでは静かにはぐれないようにだけ動いていたんだったか。

 それもあってそんなに印象に残ってないんだよねー。

 

 記憶にあるのは当時、学年のアイドル的存在だった桜井って子が、たまに話しかけたりしてきてくれたくらいだよ。

 当時を思い返し、しみじみと俺は懐かしい気持ちに浸りつぶやく。

 

「中学生活か……ずいぶんと昔のことになっちまったな……」

「つい半年前までのことに何言ってるんですかー?」

「たまに思うのだが、あなたは時折妙に気取ったことを口にするな……いや、似合わなくもないのだが、時と場合に沿うているかというと疑問符がつくのだが……」

「何言ってんだよヴァール、とうさゲフゲフ公平サンはいつでも何をされていてもサイコーだぜ!?」

 

 ぐうの音も出ない。思わず顔を両手で覆う。怖ぁ……

 中学の頃を思い出したからか古傷が疼いた結果、リーベには首を傾げられヴァールにはおずおずと進言される結果に。

 挙げ句シャーリヒッタは全身全霊で俺を全肯定してくる始末だ、これは恥ずかしい!

 

 思わず顔を赤らめて、それでもなんでもないふうを装って三人を手招きし、顔を近づける。

 急なことに動揺してか同じく頬を染める彼女らの耳元で、俺は静かに、囁くように告げるのだった。

 

「今のはなかったことにしてください」

「えぇ……? 珍しく積極的に来てくれたと思ったら黒歴史の隠蔽依頼ですかー……?」

「今のはなかったことにしてください……」

「繰り返さないでくれ……というか別に恥ずかしいことでもないだろう、気取るくらい。ワタシだってそうしたくなる時はあるのだし何よりその、今のこの、顔が近いほうが個人的には恥ずかしいと言いますか……」

「今のは、なかったことに、してください……!」

「えー? 渋くてカッコよかったですよ、今の公平サン」

 

 今のはなかったことにしてください!!

 至近距離で懸命に頼み込む俺。だのに三姉妹は呆れるやら照れたように視線を逸らすやら相変わらずの全肯定やらで、まともになかったことにしてくれない!

 

 おお、忘れたい過去がまた一つ増えた……高校生にもなって何をしてるんだ俺は……

 ついに堪らず天を仰ぎ、とりあえず瞑想して感情をリセットする俺ちゃんである。




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