【マンガ1巻発売中!】攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー/天鐸龍

1202 / 1237
バカップルが来る!

 刑事さんに事情説明するべくこの場を離脱したアンジェさんとランレイさん。

 本来ホテルまでの案内役を務めるはずだった彼女らの代わりに来るというのが、前から噂には聞いていた精霊知能ステラとそのパートナー、神奈川千尋さんだという。

 

 聖剣管理役として400年、役目を果たしてきたステラが選んだ人。一体どのような人物なんだろうか、俺としても非常に興味深い。

 リーベやシャーリヒッタも同様らしく、しきりにソフィアさん──からついさっき、交代したヴァールへと質問を投げかけていた。

 

「ねーねーヴァールー。神奈川千尋さんってどんな方なんですかー?」

「なーなーヴァールゥ。ステラからは話しか聞いてないんだよー。教えてくれよー」

「離れろ……この炎天下で引っ付くな! どうせ待っていれば来るのだ、今に分かる!」

 

 姉二人がウニョウニョ体をくねらせながらにじり寄るのを、ヴァールが鬱陶しげに手を振って追い払う。まあただでさえ暑いんだから、暑苦しいことしないでほしくはあるよね。

 でも俺もウニョウニョしながら彼女に近づいちゃうよ、だって気になるんだもーん。

 

「ヴァール先生ー俺も気になりまーす。神奈川さんって怖い人ですか? まさか出会い頭にいきなり胸倉掴んできたりはしませんよね怖ぁ……」

「そんな輩をワタシが部下になど使うか!? ……良くも悪くもステラのことばかり見ている男だよ。ワタシとしては御しやすいが、ステラのほうも割合神奈川しか見えていないため近くにいると疲れるところはあるかもしれない」

「つまりバカップルと。そこまで言わせるほどかあ」

 

 他人への評価に基本、私情を挟まないヴァールが今完全に自分の所感を口にした。

 つまりはそのくらい、そのバカップルさん達はやりやすいけど疲れる相手ということらしい。

 

 この子にここまで言わせるとは、何やら恐ろしい予感がするな……思えばあからさまなカップルさんって俺、身近なところにはほとんどいないんだよ。

 クラスメイトの松田くんや木下さん、片岡くんに遠野さんはまだ焦れったい距離感の甘酸っぱい関係性だし。でもその段階でもう、見てるこっちは虹色の砂糖を吐いちゃいそうな時がちょくちょくあるのだ。

 

 そんな耐性皆無の俺ちゃんが、本場のマジモンバカップルを見たりした日には全身砂糖菓子になっちゃって死ぬんじゃないだろうか。

 ちょっと怖くなってきた。精霊知能のお二人さんは、瞳を輝かせているけども。

 

「バカップル……! バカップルですよシャーリヒッタ、ドラマで見たようなすごいのが拝めるかもです!」

「ドラマはあんま見てねェけど、ステラのネットリした感じをその神奈川ってのも持ってるってんならヤベェぜ……!」

「ネットリ……言い得て妙だな、あの二人が互いに向ける感情はたしかにどこか、湿り気を帯びているようにも思える。そうだな……倶楽部の火野源一がエリスに向けていたようなものを、より健全かつ双方向にした感じが近いかもしれない」

「ハッハッハーまさかの流れ弾!? というかあんなのとセットで名前出さないでください気色悪い! 公平さん! 公平さんとぜひセットでよろしくでーす!!」

 

 えぇ……? まさかのヴァールからエリスさんに向けての飛び火と、それを受けての山形くん大炎上もののセリフ来ちゃった。

 倶楽部幹部の火野が、エリスさんに向けていた感情はたしかにこう、粘着質のドロっとしたものだったけど。それをステラと神奈川さんとの比較対象に持ってくるのかあ。

 

 っていうかね、慌ててエリスさんが俺の腕に抱きついて抗議してるけどなんか周囲の視線が痛いんですけど。

 主にスタッフさんや能力者犯罪捜査官さん達の視線がお辛いんですけど!!

 

 

「救世主くん、美女や美少女に囲まれてるよ。良いご身分だねえ」

「言って実力は本物ですからね。5月のドラゴンに始まりこないだのS級モンスター二連続と、デビュー半年で3度もS級討伐に参加してますし」

「そもそも有能じゃなきゃあの場にはいられないでしょ。統括理事やら特別理事はじめS級に囲まれるなんて私ならゾッとしません」

「そらそーだ。ま、モテない男の僻みだよ」

 

「もてもて。先輩も羨ましかったりします? 私というものがいるのに?」

「お前は俺のなんなんだ? ……まあ、男としての冥利に尽きるのかな、とは思うが」

「……へー。ふーん。ほーん。先輩も男なんですもんねー」

「あくまで一般論だ。今のところは手のかかる相棒一人で十分だよ」

「…………そですか。えへへっ」

 

 

 隣県のスタッフさん達からはこのハーレム野郎! みたいな目で見られ、能力者犯罪捜査官の人達からはなんかこの、なんだその……ダシにされてしまった。

 つらい。特に後者が辛い。なんで独り身の俺を使ってイチャイチャしだすんだ、人の心とかないのか?

 

 ────と、内心慄いているとヴァールが不意にアンジェさん達が戦っていた方角を向いた。俺やリーベ、シャーリヒッタも同様だ。

 気配を感じた。オペレータでない、同胞の気配。今のところ現世に数体しかいない、精霊知能の魂の気配だ。

 

 視線をやればそこには一人、男の人が歩いてこちらにやって来ている。

 いや、一人ではない。他の人には見えないだろうが俺達には見えている。その男の腕に己の腕を絡め、しなだれかかるようにもたれながら宙を浮く、半透明の存在が。

 精霊知能だ……!

 

「来たな。あれが噂のバカップルとやらだ」

「神奈川千尋さんと、ステラ……!」

 

 ヴァールが指差し、彼と彼女を示す。

 お目当ての待ち人来たる。聖剣の担い手とその相方が、ついに俺達の眼の前に現れたのであった。




ブックマークと評価のほう、よろしくお願いしますー
「大ダンジョン時代ヒストリア」毎日更新しておりますー
https://syosetu.org/novel/333780/
よろしくお願いいたしますー

【お知らせ】
「攻略! 大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」コミカライズ一巻発売中!
ぜひともみなさまお求めよろしくお願いしますー!

コミカライズ版スキルがポエミーも好評配信中!
下記URLからご覧いただけますのでよろしくお願いします!
 pash-up!様
 ( https://pash-up.jp/content/00001924 )
 はじめ、pixivコミック様、ニコニコ漫画様にて閲覧いただけますー!
 コミック一巻についての情報もご覧いただけますのでよろしくお願いします!
 
 加えて書籍版1巻、2巻も好評発売中です!
 ( https://pashbooks.jp/tax_series/poemy/ )
 よろしくお願いしますー!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。