攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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神奈川千尋の七転び八起き人生

 神奈川さんとステラからの謝罪も受けた。せっかく来てくれたのだからと、そのまま軽い昼食も一緒に取りつつ話をする。

 さすがは高級ホテル、ルームサービスでお昼なんか注文できちゃうんだ。しかもべらぼうに高いけどその分すごい料理ばっかで、特製ステーキだのなんだのずらりと書かれたお品書きを目にして、こんなところでもパンピー山形との格の違いを思い知らされる心地である。

 

「とんでもない宿ですね、さすがに……ビジネスホテルも最近は豪華らしいけど、このレベルまではなかなかいかないんじゃないでしょうか。せっかくだしステーキ頼んじゃお」

「ですね……俺もこの一年でずいぶん生活レベルが向上した自覚はありますけど、こんな宿には泊まったことも訪れたこともあまりないですよ。俺も同じのにしますかね、こちらもせっかくってことで」

 

 神奈川さんが、お品書きを見ながら俺と話す。

 敬語はいらないって言ってるんだけど、彼としては未だに俺との距離感を掴みかねているみたいだ。さっきの今で当然だね、俺だって敬語だし。

 

 とはいえ会話自体はいたってスムーズというか和やかだ。主にこの一年、彼がステラと知り合ってからこっちどのように過ごされていたのかを聞かせてもらう感じなんだけど……

 愛する人との生活を語るのがよほど楽しいんだろうね。神奈川さんてば微笑みながらも饒舌にあれこれと語ってくれているよ。

 

「ステラのお陰で探査者になれて、どうにか生活資金を稼ぐあてができて本当に良かったですよ。出会う直前にはもう実家も売りに出されてホームレスでしたから、とりあえずでもまずはダンジョン探査による報酬を使って衣食住の確保から始まりました」

『千尋、本当に何も持ってなかったんです。着の身着のままの姿でスマホも財布すらもなくて……現世の反社会的勢力は怖いです。身元証明書まで奪い取って、彼を社会から追放してたんですから』

「怖ぁ……」

 

 だからハードすぎるんだよね、神奈川さんの来歴が!

 本当に何もかも奪われた果てに、無茶な山奥への逃避をするしかないほどにまで追い詰められていた。なんてことがつい一年前に起きていただなんて背筋が凍るよ。

 

 いや、もしかしたら今もなお、この国のどこかにはそんな目に遭ってしまっている人達がいるのかもしれない。

 おまわりさん呼ばなきゃ……と震える俺に、神奈川さんは察したらしく微笑んで続けて言う。

 

「今はもう、借金をしていた先の反社勢力は壊滅してますよ。ヴァールさんが動いてくれたんです……そもそもの取り立てから借金の経緯まで何もかも違法だったのを警察のお偉い方に告発してくれて」

『聖剣を受け取ってオペレータとなった後でも、取り立て用の犯罪能力者は何人か仕向けられてきたからそこでヴァールさんも怒ったみたいです。日本警察の能力者犯罪対策課に働きかけてくれて、即日チームが動いて……千尋から奪ったものはもうほとんど換金されたり壊されてましたけど、不当な借金への返済済み分についても取り返してくれて』

「あまつさえ俺達を、対サークル案件限定ながらWSOの特別現地協力者って扱いで直属のエージェントにしてくれました。お陰様で報酬ももらって、今は都内のマンションで暮らせています」

「そうなんですね。いやはや、スゴイ話ですよ……」

 

 すごい人生大逆転というか、本当に浮き沈みがすさまじすぎるよこの人。いやそもそも沈んだ経緯があまりにも理不尽だから、フォローはされて当然といえば当然なんだけども。

 というかヴァール、能力者犯罪には本当に厳格に対処してくれるね。さすがは大ダンジョン時代において人類を牽引し守護してきただけのことはある、迅速な対応だよ。

 

 そうした経緯で見事、借金地獄から解放された神奈川さんだけど。反面、対サークルのためヴァールの直属エージェントとして活動することになったことはそれはそれでまた、別方面での苦労なのは言うまでもない。

 アンジェさんやランレイさんが来るまでの間、ほぼ一年間単独で動いていたらしいんだよね。そのへんについても尋ねると、ステラがうなずいて答えてくれた。

 

『そもそも、ヴァールさんも最初は首都圏の裏社会におけるダンジョンコアの密売買が異常増加していることしか把握してなくて、その調査のために私達を使ったんです。だからサークルの存在も知らなければ、荒事になるなんてことさえその時点では誰も想定してませんでした。けど……』

「調査開始からしばらくして、自分達を嗅ぎ回る者の存在に気づいたのかサークルのほうから仕掛けてくるようになったんです。例の、能力者並の身体能力を持つ非能力者による襲撃が行われ始めました」

「…………なるほど。ある意味サークルのほうから自白してきたって形になるんですね」

 

 よっぽど、身元を探る存在が気に入らなかったんだなサークルは。わざわざ自分達から動いて積極的に潰しにかかるほど、詮索されるのを嫌うとは。

 しかし悪魔憑きを投入するなんて、サークルも思い切ったことをする。それだけ早々に敵を始末したかったんだろうけど、その相手がよもや精霊知能に聖剣使いだったなんてのは、不運としか言いようがない。

 

 ステラであれば一発で彼らが非オペレータであること、代わりに権能によるブーストがかけられていることには気付いただろう。

 加えて聖剣自体、元々は異世界における対概念存在用決戦兵器だ。ステラと紐づけされたことでこの世界の理にも適用された結果、概念存在への特効効果は当然生きている。

 

 つまりは神奈川さんとステラって組み合わせ自体、サークルとその背後にいる悪魔からしたら天敵も良いところなんだよ。

 結果的に最悪の相性の相手に自分達から喧嘩を売りに行ったんだから、サークルもある意味災難だったな。まあ、完全に自業自得なんだけどもさ。




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