攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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マリアベールの孫とカーンの子孫と光太郎の孫とエリス

 目的地に向けてバスが走る。都内は信号も多くてよく赤信号にて止まるものの、渋滞に引っかかるとかもなくて概ねスムーズに進んでくれているんじゃないかと思う。

 そんな中で俺は、二つの能力者犯罪捜査官チームの邂逅を目の当たりにするというある種、すごい場面に出くわしていた。

 

「噂は聞いてます、えーっとモリガナさん! それに早瀬さんも、うちのおばあちゃんともいろいろ縁があるみたいで」

「ハッハッハー、エリスでいいよーアンジェリーナさん。そだねー君のおばあさんにはいろいろお世話になってるよ、昔から」

「私の場合はお祖父ちゃんと師匠の縁ですねーはっはっはー! 私自身も探査者になりたての頃からお世話になってますけどもー!」

「ぴぃ、ぴぃぃぃ……! 眩しい、眩しいノリだよぉぉぉ……!」

「えぇ……?」

 

 エリスさんと葵さんのコンビに、同じ能力者犯罪捜査官ということもあり、また祖母のマリーさんが昔からの知り合いということもあり……アンジェさんがすごい積極的に話しかけていったのだ。さすがの陽キャ、コミュ力抜群である。

 応じるエリスさんも葵さんもにこやかで、特に葵さんなんかは生粋のネアカさんだもんで、アンジェさんともバッチリ相性が噛み合ってる感じを受ける。エリスさんも知り合いの孫ってことでそこまで人見知りも発動してなさげだしね。

 

 まあ、反面ランレイさんはかわいそうなくらい震えているんだけれど。気持は痛いほどよく分かるよ、眩しいんだよね基本、このノリのお二人。

 葵さんの天性の明るさにエリスさんまで影響されてるのか、どこぞの物理的に眩しくなるだけのシャイニングよりよっぽど明るくて眩いのだ。これには生まれついての純粋な陰キャとしてはもうぴぃぴぃ泣いて怖ぁ怖ぁ鳴くしかないわけだね、怖ぁ……

 

 隣でいたいけな陰の者二人が身を寄せ合って震えるのも構わず、アンジェさんは太陽のような笑みを浮かべて礼儀正しく、続けて二人に話しかけていく。

 

「こないだ公平の絡みで同じ場所にはいましたけど、あんまりお話もできなくて残念だったんです。こうしてお会いする機会があって、良かったって思います。あとアンジェでいいですよモリガナさん、早瀬さん」

「ハッハッハーこっちもエリスでいいよアンジェさん。そうそう私的にもそこは残念だったんだよ、マリーの若いころそっくりな君については、すっごーく気になってたからねー」

「私も葵って呼んでください! 同年代ですし呼び捨てで! それにランレイさんともども能力者犯罪捜査官の中でも最強格、A級トップランカーのアンジェさんには個人的にホント、リスペクトしてるんですよねー!」

「そんなに似てるんですね、私? ヴァールさんも前にそんなこと言ってましたし……あ、あと葵、だったら私もアンジェでいいわ。よろしくね!」

「はっはっはー了解! よろしくねアンジェ!」

 

 エリスさんが不老で、実のところ96歳でありマリーさんにとっても大先輩にあたるってのはアンジェさんも御存知らしく、下にも置かない丁寧な言葉遣いでエリスさんと語らっていく。

 一方で完全に同世代同年代だろう葵さんにはお互い即座にタメ口での親しいやり取りをし始めている。

 

 そういうとこだぞ陽キャさん方。陰キャとしては普通ね、タメ口でいいよって言われてすんなりタメ口にはできないものなのですさまじいスピード感で打ち解けていく二人には戦慄を禁じえない。

 というか葵さん、やっぱりアンジェさんランレイさんのことを強く意識してるんだな。こないだ俺の親元でニアミスしてた時にもちらっと仰ってたけど、ほぼ同世代でS級にも到達しかねない同職の探査者となると、気になるものなんだろうね。

 

 とはいえ葵さんだって俺からすれば決して負けちゃいない。

 まずもってAMW、対モンスター用機械兵装フーロイータを自在に操れる時点で相当特別な探査者なのには間違いないのだ。自前の《雷魔導》もレアな魔導系の中でもさらにレアだし、しかもそれを増幅できるツールにも恵まれている。

 

 加えて向上心もすごく強いし、世界各地を巡ってるから経験も豊富だ。

 そういう人間力も含めて葵さんには葵さんの、アンジェさんランレイさんにも決して負けない素晴らしい長所がたくさんあるんだと思うよ。当のアンジェさんもまた、葵さんには興味津々のご様子だしね。

 

「私もあなたのこと気になってたのよ。AMWを自在に使いこなす、あの早瀬光太郎の孫娘にして新進気鋭のA級探査者! 何より能力者犯罪捜査官として世界を股にかけて活動する、スーパーエージェントってね!」

「はっはっはーいやー師匠に恵まれたからね、そこは! あちこち連れていってもらえて、相棒めいた振る舞いも許してもらってるし!」

「ハッハッハー何を仰る葵さん。たしかに君は弟子だけど、今じゃ立派に一人前さんじゃないか。エリスさん的には君はもう、私の友達で素敵な後輩で、何より頼もしい最高の相棒だとも。自信持ちなよ、君にはいつも助けられてるぜー?」

「はっはっはー! ありがたいけど照れます、照れます!」

 

 若くして世界を舞台に活躍する葵さんについては、アンジェさんも気にしていたみたいだ。彼女の祖父、早瀬光太郎さんの存在も併せてだけどどこか似通うんだね、この二人。

 謙遜する葵さんに、エリスさんがにこやかに弟子を労い褒め称えた。口調はからかい気味だがさすがに分かるよ、ものすごーく本気で葵さんを自慢して誇らしくアピールしている。

 

 弟子にとっても誇らしい師匠だけど、師匠にとってはそれ以上に素晴らしい弟子で、誇りに思える友人で、なくてはならないパートナーなんだもんな。

 火野との最終決戦での師弟のやり取りをも思い返す。はにかむそんなお二人を見て、アンジェさんは感心しきりにつぶやいた。

 

「素敵な関係ねー……私とランレイもこんなふうになっていければ良いわね、うん」

「は、はっは、はっ……なんて笑えないよう、アンジェちゃんんん……」

「誰も笑い声真似るなんて言ってないって。今よりもっともっと、信頼しあえるパートナーになりたいわねって話! 友人として能力者犯罪捜査官として」

 

 お互いを誇りに想い合う、師弟関係に大きな感銘を受けたらしい。

 ランレイさんにツッコミを入れつつも、アンジェさんの目にはたしかにエリスさんと葵さんへの敬意と羨望が滲んでいた。




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