攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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きゅう、きゅう、きゅう!

 さて、なんか思い出せないけどドラゴンを、なんやかんやしてそのせいかぶっ倒れちゃったらしい俺ちゃん。

 そんな俺が起きたという報せを受けて、見知った顔が今、何人か病室に到着していた。

 

「ああ、公平くん……! 良かった、本当に良かった……!」

「香苗さん、ご心配をおかけしたみたいで……」

「いえ……いいえ! 信じてましたから。あなたはきっとまた、元気な姿を見せてくれると。私は信じていました!」

 

 入ってくるなり抱きついてきて、それからずっと涙ぐんでいる香苗さん。口振りこそ気丈だけど、相当心配してくれたんだろうな。ありがたい。

 同じく入ってきた鈴山さんとマリーさん。鈴山さんはいつもと変わらないけど、どこかホッと一安心している感じがする。

 そして、マリーさんは。

 

「ファファファ。元気そうで何よりさね、公平ちゃん」

「マリーさん……ありがとうございました。あなたの言葉で俺、自分の本当のやりたいことを、できた気がします」

「ああ、私も御堂ちゃんもちゃんと見てたよ、あんたが、一つの命を救うところをね。立派だったよ……よくやった。大したもんだ、本当にね。ファファファファ!」

 

 優しく俺の頭に手を置き、撫でてくれた。

 なんていうか……うちの婆ちゃん思い出すよなあ。今年のGWは行けないけど、夏休みには会いに行きたいよなあ。

 なんて、変にノスタルジックになる暖かみのある掌だった。

 

「公平様! 良かった、お目覚めになられたのですね!」

「良かったです、公平さん」

 

 次いで、望月さんと逢坂さんが近寄って、横たわる俺の手を握ってくる。柔らかい。得した気分。

 二人とも、元気そうだ……ドラゴンの攻撃の流れ弾を、防御結界が発動して防いだらしいところところまでは覚えてるんだけど。

 直後にぶっ倒れたから、彼女たちの安否も分からなかったんだ。なにはともあれ、無事で良かった。

 

「望月さん、逢坂さん。ありがとう……二人とも、お疲れさまでした。おかげでドラゴンは……ええと、どうなったの結局?」

「ふふ、後でお教えしますけど、悪いことにはなってませんよ。みんな、救世主様のご活躍に感動しています」

「そ、そうですか……」

 

 香苗さんほどでないかもしれないが、望月さんもやはり大概だ。隣の逢坂さんがどこか、諦めたような遠い目をしているのを見て俺は、誤魔化すように次に来てくれた人に目を向けた。

 

「兄ちゃん、案外元気そうだね。ドラゴンと相討ちになったーって聞いて、私たちすっ飛んできたんだよ?」

「まったく! 無鉄砲なのは父ちゃん譲りなんだから」

「考えなしなのはどう考えても母ちゃんの遺伝だと思う」

 

 どう考えても両方の血です。本当にありがとうございました。

 我が山形家の父と母と妹が揃い踏みだ。家族という、一番この場にいて馴染んでいてもおかしくないはずなのにこの人たち、なんか浮いてるな……

 自分たちでも分かってるみたいでものすごーく所在なさげにしてて笑える。帰ったら盛大にネタにしてやる。

 

 しかし、流石に広い部屋でもこの人数だと狭く感じるよなあ。

 香苗さん、マリーさん、鈴山さん、望月さん、逢坂さん、父、母、妹ちゃん。そんでもって俺。合計9人か。多い!

 

 もっと言うと、新田さんや掛村さん、高木さんと言った、ツアー中に俺とパーティを組んでくれた人たちも見舞いに来てくれていたらしい。

 この場にも来たがっていたそうだが、人数が多すぎるというのと、ツアーが今日で最終日のため、解散に至るまでしっかり参加するよう、マリーさんや香苗さんが説得したとのことだった。

 

「せっかく参加した行事だ、最後まで楽しんでもらった方が良いからね」

「そうですね。何だかんだと、得るものの多いツアーだったと思います。公平くんは、どうでした?」

「……ええ。とても楽しくて、たくさんの人と知り合えたツアーでした」

 

 心からそう思う。色んな人を知り、色んなことを学び。

 元から知っていた人を、もっと深く知って。少し、仲の悪かった人とも互いに、心を通わせた。

 そして何より、人を護り、生きたいと願う命を救えた。こんなに嬉しいことはない。

 

「参加できて良かったです。本当に」

「……それは何よりです。あなたが嬉しいと、私も嬉しい」

 

 香苗さんが微笑む。俺は、笑顔で頷くのであった。

 ──と。マリーさんが不意に、言ってきた。

 

「ところでねぇ、公平ちゃん。あんたが倒した……いや違うな、何ていうか、救った? ドラゴンなんだけど」

「え。あ、そうだ! そういえばあいつ、どうなったんですか?」

 

 言われてふと気付く。覚えはないんだけど、ああいうスキルが生えていた以上、たぶんドラゴンに対して何かしら使ってるはずなんだよな、アレ。

 てことはドラゴンは何か、分解? されてそこから再構築されているはずなんだ。無害なモノに。言ってて自分でも怖くなってくるなこの表現!

 

 ともかく、ドラゴンの安否を気遣う俺に。

 マリーさんはにやりと笑い、面白そうに応えた。

 

「ファファファ、慌てなさんな。ほれここに、ちゃあんと」

「きゅるるるる、きゅるー!」

「…………は? うお!?」

 

 可愛らしい、甲高い鳴き声と共に。

 何かがマリーさんの背後から飛び出て、俺に抱きついてくる──ちっちゃいドラゴン!?

 

「きゅる! きゅっきゅっきゅーっ、きゅるーん!」

 

 あの、山のような巨体が見る影もなく。

 まるで幼体とでも言うかのような、赤ん坊くらいな大きさのミニチュアドラゴンが、俺の目の前で、小さな羽をパタパタ動かして飛んでいた。

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