攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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福音伝道!虹色の煌めきともに!(肖像権等対策済み)

 "伝道虹彩"プリズムアーク・エヴァンジェリスター。そんな名前を叫ぶとともに、七色の煌めきを纏いし香苗さんの身体から一際強い虹が放たれ天へと昇っていった。

 七つ色に変幻する彩りの柱……そこに込められたエネルギーは並大抵のものではない。いつもの香苗さんの《光魔導》と比較しても桁違いの出力がある!

 

「こ、これは一体……!?」

「虹の柱が、何かを形成していく!? ……人の形!?」

 

 天を衝くほど、ウーロゴスと同等にまで立ち上ったそんな虹柱がうねり、曲がり、そしてカタチを成していく。

 ヒト型だ。全身がエネルギーの塊だもんで細かいディテールは判然としていないが、服装まで着込んでいるデザインの凝りようは遠目からでも伺えた。

 

 虹色に光る巨体。コートを着た、少年の姿?

 なんだろう、モチーフに見覚えがあるっていうか、明らかに見たことがある。

 薄ぼんやりとしていて断定できない程度ではあるんだけど、なんとなくすごく身近にいるようなー……

 

「…………って俺じゃないのかアレ!? 香苗さんッ!?」

「その通りッ!! この"伝道虹彩"プリズムアーク・エヴァンジェリスターはまさしく我らが偉大なる救世主、山形公平様のお姿をイメージして構築したこれ以上ない究極の伝道必殺奥義っ!! ディテールにこだわりつつ微妙にぼかした造形にすることで肖像権の侵害にあたらない程度に表現しきったまさしく芸術の極地ですッ!!」

「香苗さんーッ!?」

 

 思わず全力で叫んでしまった。そう……あの男型の光、うっすら細目で見ると絶妙に俺っぽく見えるのである。

 それも神魔終焉結界を着込んでいる時の、つまりは今の俺の格好っぽい。ディテールに拘ったとか言うだけあって、基本的にはぼんやり虹色に光るヒト型なんだけど時折"アレ? あれ俺? アレェ? "ってなっちゃうくらいには俺っぽいのだ。

 

 しかもそれでいて、あくまで光が角度によってはほんのりそれっぽく見えているだけなので、たしかに肖像権が云々ってことにはならなさそうだ。いやまあ俺としてもそこを問題にする気もないけども。

 にしてもいつの間に、ここまで大掛かりでしかも無駄に凝った技を開発したんだ? あまりに謎すぎるよ、いろいろ!

 

「…………た、たしかに微妙に山形公平に見えなくもない。基本は単なるヒト型の虹色の光だから、本当に時折だが」

「そもそも探査者の技で権利侵害とかって話もあんまり聞いたことないですしねえ。こんなことでもなきゃ基本、モンスター相手に披露するしかないわけだし」

「か、かつてのマイ・ライバルが……なんかとんでもない技術でとんでもなくアレなことをしている……」

「普段からいつでもアレなリスティさんにそれを言われるのは相当ですね……たしかに、とてつもないですけどいろいろ」

 

 怖ぁ……ヴァールからマリーさんからセーデルグレンさんから愛知さんまで、みんな揃ってポカーンとして巨大ヒト型レインボー山形くんモドキを見上げている。

 なんなら立食パーティーの他の面々も同様だ。お偉いさんも警護の方々も。なんならビュッフェを用意しているスタッフさんまでみんな唖然として俺と香苗さんとプリズムアーク・エヴァンジェリスターを見比べている。

 

 俺に視線寄越すの止めろや! 直接は関係ないだろ直接は! ギリギリだけど、ホントギリギリだけど!!

 思わずこの場から逃げ出したくなったけどそこはグッと堪えて、俺は香苗さんの"伝道虹彩"プリズムアーク・エヴァンジェリスターを見た。

 

 見た目はもう触れないでおくとして、込められた力は相当なものだ。まさしく香苗さんが奥義だの究極だの言うだけあって、彼女が今出せる全力を出したのがこの技なのだろうなとは思えるよ。

 そんな超密度のエネルギー体を、《光魔導》で形成して維持できただけでも正直なところ大したもんだ。

 

 だけど香苗さんは、そこからさらに離れ業を見せてくれた──なんと自らが生み出したヒト型のエネルギーの奔流を操り、ウーロゴスに殴りかからせていったのだ!

 

「救世主様の御威光を少しでも示します!! そのためにも……今ここに我が力の限りを尽くす! さあ行きなさい、エヴァンジェリスター!!」

「う、動かした!? ていうか殴りかかるの!?」

「か、海上で大怪獣バトル……!! やはり御堂もS級であったか、とんでもない無茶を平然とする!!」

「あの御堂っての、何考えてやがんだ……! あんなのやろうとしてもできねえぞ、どういう技術だ魔導系であんな……!?」

 

 沿岸部とはいえ立派に海の一部に入り込んで、巨大な靄めいたエネルギー体二つがぶつかり合う。片や権能、片やスキルととこれ以上ないスケールでの殴り合いである。

 轟音が響く。もはや本当に巨大怪獣二体の激突めいていて、衝撃とともに強い風が巻き起こりこちらに届いてくる始末だ。

 

 これには最上さんや里見さんといった日本のS級探査者さん達も驚きを隠せない様子で、口をあんぐりと開けて呆然としている。

 というか最上さん、エヴァンジェリスターを見て即座に大怪獣バトルとかって単語が出てくるあたり、意外に結構ディープな知識もお持ちなのかなあ。

 里見さんも里見さんで、まさかの魔導系スキルでこんなことをできちゃった香苗さんに愕然としているね。

 

 近くにいる横山さん達も当然驚きまくってるんだけど、こっちの三人については先んじて伝道師のあれこれを目の当たりにしているからか……

 ある程度分かっていたと何やら後方で理解者みたいに頷いているよ。これはこれでシュールだな、なんか。

 

「御堂、とんでもない高みに昇っちゃったなあ……いろいろな意味で……」

「カナちゃん、この技のために《光魔導》を磨きに磨いたんだねえ……!! なんだか私も、救世主様バンザイってしたくなってきた気がする!! あの虹の光から信者になっちゃえ鱗粉とか出てるのかなあ!?」

「本当にただの気のせいだろ、それは!」

 

 横山さん、御陵さん、鈴木さんがそれぞれ同期としての感想を次々に述べている。

 特に御陵さんがはしゃぎにはしゃいでいるみたいで、見かねた鈴木さんがちょくちょく叱りつけているようだね。

 

 三人のパーティメンバーにさえドン引きされつつ見守られながらも、"伝道虹彩"プリズムアーク・エヴァンジェリスターによる攻撃を続行させる香苗さん。

 そんなやり取りを挟みながらも、ウーロゴスとステゴロの殴り合いを仕掛ける姿を俺達は暫し……本当に少しの間、どこか呆然とした心地で眺めるしかないのであった。




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