攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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数任せなど無関係のところに……S級探査者は存在する……!

 逃げたアンドヴァリと瀬川を除き、この場にいるサークルと過激派の構成員は全員捕らえきった。

 大勢やってきたパトカーとWSOのエージェントさん達に引き渡して、これでこのへんも一段落だね。

 

 話を聞いているとどうやら他の区域も概ね落ち着いたみたいで、あちこちで捕縛作業が始まっているとか。

 近年稀に見るレベルの大捕物だそうで、おまわりさん達もてんてこ舞いなのが傍から見ていても分かるよ。

 

「はい、こっち収容しきったから出発します! 道空けて空けてー!」

「留置所が満員になるなあ、これは! あと怪我人は病院運べ、スキルキャンセラーの捕縛具忘れるなよ! 能力者なら逃げられるぞ!!」

「軽傷者は各署へ連行、それ以上の負傷は病院へ! よその区域からも送られてくるから、ちゃんと連絡は取るように!」

「騎士達よ、ただちに公安警察と連携して尋問に参加するように。少しでも情報を得るのです」

 

 うーん、大変そうだ。大きな護送車が数台、救急車も数台。少なくともここにいる連中は少なからず負傷しているのもいるからね、逮捕とかより前にまず病院に連れていかなきゃいけない。

 概ねそんな結果を引き起こしたと言える張本人、シャルロット・モリガナさんはまるで素知らぬ顔で騎士達に指示を投げかけている。

 

 公安警察とつながりのある彼女だが、独自行動しまくってるから日本政府からは疎まれてるっぽいんだよね。

 アンドヴァリを捕縛次第、今度はシャルロットさんを国外に追い出すつもりでいたみたいだし……そのために寄越したのだろう、愛知さんが彼女に近づく。

 すでにスレイプニルもワイバーンも退去済み、完全に戦闘モードを終わらせてからの話し合いだった。

 

「シャルロット・モリガナ。私は日本政府からの依頼で来たS級探査者の愛知だ。アンドヴァリを捕らえた後、君達ダンジョン聖教と騎士団にはこの国から出ていってもらう」

「ふむ? ……用済みになれば消えてもらう、というわけですか? なかなかに悪辣ですね、日本という国も」

「庭先で勝手に暴れまわる狂犬など煮ても焼いても食えないのだから、追い出すだけマシだと思っていただきたいところだな」

「その狂犬とやらに暴れまわる許可を下ろしたのは家主です。うまく利用できる自信があったゆえなのでしょうが、あてが外れたからと八つ当たりのような真似はみっともない話ですね。使い走りに過ぎないあなたに言ったとて仕方ありませんが」

 

 怖ぁ……言葉でやりあってるじゃん。睨み合う愛知さんとシャルロットさん。

 日本政府とダンジョン聖教、お互いに言い分ってのはあるだろう。そもそも"アンドヴァリを見つけるまで協力関係を結ぶ"的な密約を両者が交わしたのは事実だしなあ。

 

 そこを逆手に取って独自行動しているシャルロットさんにも問題はあろうけど、だからって愛知さんを派遣してアンドヴァリ捕縛のタイミングでまとめて始末しようとした日本政府のやり口もなかなかにエグい気はする。

 愛知さんの物言いにダンジョン騎士団の人達も睨んでいるけど……この人達も大概なんだよなあ、自分とこのリーダーが明らかに暴走してるのを一緒になって付き合ってるし。

 

 せめてこのタイミングでアンドヴァリを捕まえられていたら、もう少し話も早かったのかもしれないけれど。現実はこの通りまんまと逃げられ、シャルロットさんの行動も日本政府の愛知さんへの依頼も宙ぶらりんになった形だ。

 ため息を吐いて、愛知さんが続けて語る。

 

「アンドヴァリの捕縛に失敗した以上、日本政府としては今この場で君達をどうこうはしないと判断した。だがおぼえておけ、ダンジョン聖教……あまり勝手をしていると全員、密約など関係なく消えてもらうことになる」

「S級探査者とはいえ、組織を相手に立ち回るつもりですか? 日本政府への義理もあるのでしょうが、喧嘩を売る相手は考えたほうが──」

「舐めるなよシャルロット・モリガナ。数に任せた暴力では届かぬ次元にいる、だからこそのS級探査者だ。曲りなりにもアンドヴァリを師として仰いでおきながら、それを知らんなどと吐かすつもりか」

 

 挑発めいた言葉を遮るように凄む。全力ではないだろうけどS級探査者の威圧だ、シャルロットさんも騎士達も怯み、一歩後ずさる。

 うん、まあこれについてはシャルロットさんの見立てが甘いよ。騎士団も相当強力な組織なんだとは思うけどS級探査者はさすがに格が違う。

 

 町一つ壊滅させるようなS級モンスターを一人で相手取れるような人ばかりなんだから、組織力で対抗するとか数で押し切るとかそういう領域の話じゃないんだよね。

 そのへん、アンドヴァリの弟子だったシャルロットさんは分かっているようだ。かすかに頷き、ため息交じりにつぶやいた。

 

「……心に留めておきましょう。騎士達よ、撤収します」

「は、ははっ! し、しかし聖女様、あちらの悪魔セーレとやらは? アレこそ回収せねば、貴重な情報源かと思われますが」

「捨て置きます。捨て置かざるを得ません……悪魔を捕らえたそこの少年、シャイニングと言いましたか。チェーホワ統括理事の子飼いたる彼が確保している以上、迂闊に手出しすればWSOともことを構える羽目になります。距離を置くのはともかく敵対などしていられません」

 

 俺、というか俺が捕まえているセーレを一瞥して騎士に説明するシャルロットさん。

 現状最大の情報源だろうこの悪魔を、喉から手が出るほど確保したいだろうにそれでも政治的立場を考えて退いてくれるみたいだ、助かるね。

 

 ただ、一言言わせてもらいたいんだけどさ──せめて山形はつけてほしいんだよね! シャイニングだけだともう何がなんだかわけがわからないんだよね!

 小声で山形ですけど、とつぶやく俺ちゃん。けれどそれは喧騒の中で掻き消され、誰の耳にも拾われないまま霧散していった。哀しい。




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