攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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Q.データ領域って? A.ぜったいあんぜんくうかん

 微笑ましい三姉妹とミュトスの話もそこそこに、そろそろ本題に入るべきかとヴァールが切り出した。

 朝5時過ぎ。まだまだいつもなら寝てるような時間帯に、なぜ彼女らがやってきたのか。

 

 本来ならば彼女だけが来るはずだったらしいその用件とは、一体?

 まあ概ね予想が付いてるんだけど、俺は耳を傾ける。

 

「……あなたが確保したという悪魔、セーレについてだ。朝からの会議の前に、いくらか確認しておきたいことがあってな」

「だと思ったよ。あいつに関してはあんまり、人前に出すのも憚られるしな。事前にお前が確認しに来ることもあり得るかもってくらいは考えてた。といっても、ここまで早く動くとも思ってなかったけど」

「変にスキャンダルだのと騒がれるのも面倒ゆえ、人目を避けたほうが良いと判断した。今このタイミングでというのは、やはり貴重な情報源だからな……すみません、朝早くからお邪魔して」

「あー、ゴシップ的なアレか……大変なんだな、統括理事も」

 

 一挙手一投足が常に注目されていると言ってもいい、世界一の権力者たるWSO統括理事。

 プライベートならまだしもこういう仕事の一環の中だと、人目につく形で変に怪しまれるようなことをするとスキャンダルなんかにも繋がりかねないという危険性は常にあるわけだね。

 

 本当に大変だよ、この子もソフィアさんも。WSOのトップに一世紀近くも君臨してきた彼女はそれゆえ、ネットなんかだと時折やりたい放題だの独裁だのとアレコレ揶揄されたりするんだけど……

 こうして間近で見た時、この子にはほとんどの時間、自由なんてものがなかったんじゃないかなって気はするよね。邪悪なる思念を倒すため、アドミニストレータ計画成就の基盤を作るためにひたすら邁進してきたんだ。

 

 大ダンジョン時代の構築に文字通りすべてを捧げてきた彼女は、俺の目をまっすぐに見て告げる。

 100年、いや500年経っても変わることのない真面目で誠実な、そして凛とした眼差しだった。

 

「サークルとダンジョン聖教について、そして委員会と悪魔の関係について聞き取りがしたい。今、この場で呼び出してもらえるだろうか山形公平」

「もちろんだ。俺もそのへんは当然、気になってたしな──ワームホールよ、開け」

 

 断る理由もどこにもなく、快く応えて俺はワームホールを開いた。接続先は現世でも概念領域でもなく、ましてやシステム領域でもない。

 それらの狭間に膨大に積み重なるデータ格納部分、通称データ領域の中の極一部に創った空間だ……誰の邪魔にもならない、未だ手つかずの空白部分にこっそり作った俺ちゃん専用の倉庫。

 

 モンスターのドロップ素材とか、あとちょっとした時に使える日用品とか小腹が空いた時用のお菓子とか。

 あとは神魔終焉結界の普段の保管先でもある。実はあの結界、発動時にその時着ている俺の私服と入れ替える形で展開しているのだ。どうでもいい話だけど余談程度にね。

 

 さてそんな空間に俺は昨日、セーレを放り込んでいた。

 ここに入れた時点で意識はないし、時間の概念もないから文字通り身動き一つ取れなくなる。万一の心配もないからある意味どんなところよりも安全な空間だったろう。

 当然、外部からの侵入者も存在しようがないからね。

 

 というわけでワームホールに手を突っ込んでソレを引きずり出す。

 女顔の少年にも、ボーイッシュな女性にも見える中性的な外見。半透明の、概念存在。悪魔セーレを、現世に再び出現させたのだ。

 

『────え、あ?』

「やあ、悪魔セーレ。驚いたろう、場面がいきなり自然公園からホテルの部屋に切り替わったんだものな。でも落ち着いて聞いてほしい、もう翌日の早朝なんだ」

『……やま、がた、こうへ、い?』

 

 セーレの主観では間違いなく、瞬間移動したようにワームホールに放られた瞬間今ここにいる、みたいになっているはずだ。

 困惑を隠さない様子なので軽く説明すると、数秒硬直してから彼女はすぐに冷静さを取り戻したように見えた。

 

 適応力が高いというか、聡明だな。明らかに異様な現象だろうにすぐさま飲み込むか。

 唖然としつつも俺の名をたどたどしくつぶやいていた彼女はそして、気を取り直して静かに応えた。

 

『入った瞬間、意識がなくなると言っていたのはあなたです。こうなることもある程度の可能性として考えていました。ですが、驚いたのは間違いありません』

「そっか。まあ、悪いけどしばらくはこういう形で必要な時だけ起きてもらう形になる」

『構いません、私は契約を守ります……あなたは聡太を見逃してくれた。その恩に報いるつもりも、ありますゆえに』

 

 静かに語る彼女からは、一切の敵意も反抗的態度も見受けられない。完全に従順な態勢だ。

 都合がいいのは良いんだが、やはり瀬川に執着しているな。なんだ? 元々の契約相手だからって、いくらなんでも気にしすぎなんじゃないのか。

 

 そもそも与えた力も契約に比して重すぎる気がしなくもないし……やつとコイツの間には、一体どんな関係があったんだ?

 訝しみながらも、俺達は質疑応答を開始する準備を始めた。




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