攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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悪魔セーレにとっての"推し"の子

 サークルが元々は委員会と関わりのない、カレッジサーチャーズ出身の探査者ファン達によるコミュニティであったこと。

 そしてそこに悪魔アドラメレクが接近し、知り合いの悪魔達を噛ませた上で今日のテロ組織サークルができあがったこと。

 

 一気にいろいろ見えてきたわけだけど、こうなると捜査範囲がめちゃくちゃ広がったわけでもあり、ヴァールは苦い顔をして顎に手を当てている。

 カレッジサーチャーズ内にサークル加入へのルートが今なお構築されているのなら、残念ながら彼らだって決して無関係ではないのだ。

 極一部だけと言うセーレの言葉を信じたいところだけど、それでも率直に残念だと思う気持ちは俺の中にたしかにあった。

 

『──聡太も、カレッジサーチャーズからサークルに加入した者の一人でした。5年前、私が初めてサークルを見学した時にたまたま新入りだった彼と出会ったのです』

「それで、その場で契約を?」

『いえ、さすがにそれは……しばらくは本当に見学でしたから。サークル幹事長や副幹事長と話をして、彼らの人となりを知った上で判断したいと思っていました。契約を結ぶにしろ、互いにメリットデメリットはしっかり承知しておかなければなりませんでしょう?』

 

 穏やかに語るセーレ。瀬川とは出会ったその場で契約したとかってわけでなく、彼女なりに熟考を重ねてのものだったようだな、この口ぶりだと。

 しかし、サークル幹事長と副幹事長……たしか藤近だの海方だのだったか。当然ながらここまでのことをしでかす以上、彼らにも彼らなりの信念や理想はあるだろう。

 

 そこんとこどうなのか? セーレに尋ねてみる。

 しかし返ってきたのは、困ったような申しわけないような彼女の表情と、曖昧な言葉だけだった。

 

『藤近と海方……彼らの理想や理念はつまるところ"大ダンジョン時代そのものの否定と新時代の構築"と言えるのでしょう。ですがそこにどのような想いがあるのかまでは、すみません私にも理解はしかねます』

「その時点で大概な話だけどよ……お前さんはそいつらの内情とかを聞いちゃいねーのか? この5年で一つも?」

『そもそも会う機会も少なかったですから。ただ、聡太はそんな彼らに対してどこか、複雑な感情はあったようです。いつも、自分達の進むべき道を模索していましたから』

「それでやることが昨日のアレですかー」

 

 大ダンジョン時代の否定と、その先に目指す理想社会の構築。一昨日に会議で聞いた話と概ね一致するけど、肝心要の動機はセーレも知らなさそうだ。

 ただ瀬川はそこについて何やら、思うところがあるみたいだね。幹部内でも意見が分かれているのか? 内部分裂とまではいかないにせよ、一枚岩ってわけでもないみたいだな。

 

 まあ、正直なところサークルの理念や理想とかはこの際なんでも良いというか、それがどんなものであれこれまでやってきた犯罪の数々が赦免されるなんてあり得ないことではあるからね。

 昨日だってダンジョン聖教過激派と組んでウーロゴスを運用してた連中もいたし……一歩間違えれば沢山の人死にが出ていたようなことを平然と行った時点で、どんな事情があれど情状酌量の余地なんてないのだ。

 

 もちろん、向こうにも向こうなりの想いがあることは理解するし、主張そのものは尊重するけどね。

 それでやることがアレなのは話が別なんだ。リーベも呆れたようにつぶやくのを、悪魔セーレは苦笑いして見つめていた。

 

『現世における是非はともかく、私はサークルに手を貸すことにしました。藤近や海方の人格に好ましいものを覚えたというのもありますし、アドラメレクからの頼みというのもあります』

「それで瀬川聡太と契約を結んだ、と。契約内容は?」

『《委員会の傘下組織として指示に従う代わりに、悪魔の権能を得る》──これは私のみならず、他の悪魔達も同様の文言で契約していますね。アドラメレクも藤近と契約しています』

「アドラメレクもか……つまりサークルを叩く過程でどうあれ、藤近と対峙する形でそいつとも戦うことになるかな」

 

 段々と浮かび上がってきた構図。明確に叩くべきはやはり、トップたる幹事長ってわけだ。

 最初に単なる同好会だったサークルに目をつけ、悪魔との契約という形で委員会の傘下組織へと性質を捻じ曲げたモノ、アドラメレク。そいつが力を貸しているらしいサークル幹事長、藤近。

 最低でもその二人は相手にする必要がある……委員会のことも、それなりに情報を握ってるだろうしね。

 

 にしても、今の話だと契約するまでの間、セーレと瀬川にはそこまで強いつながりはなかったように思う。

 それでも昨日の様子を見るに互いに互いを深く信頼し合っているかのような関係性に見えたのは、契約を結んで以降に絆されたということなのかな。

 惚気を聞かされそうなのも嫌だなーとか思いつつ、一応尋ねる。

 

「それでお前は瀬川と契約を結んだ、と。良い契約相手だったのか? 昨日の感じだと、絆はあるみたいだけど」

『そうですね……好ましい感情は抱いています。彼は未熟で青臭い人間ですが、だからこそ前に進もうとする気概を持つ。少なくとも私は、そんな聡太のことを応援したいと思っていますよ』

 

 やはり微笑んで語るセーレ。案の定惚気チックだが、どちらかと言うと、後方から応援したさそうなファン目線さをも感じさせる。

 瀬川は、こいつにとっていわゆる"推し"なのかな。だから変に肩入れもするのだろう。

 なんとなく得心のいく話ではあった。




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