攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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【ダンジョン探査】救世主様のダンジョンアタック【伝説の始まり】

 組合本部を出て少し歩くと、地元の商店街が見えてくる。昔からある古いアーケード街で、俺の家からも近いから結構、馴染みだったりする。

 その商店街の真ん中辺りに構える豆腐屋の、すぐ横の道にダンジョンはあった。地面にぽっかり穴が空いていて、落とし穴みたいなのを防ぐ意味合いで鉄板で蓋がされているからそれを横にずらす。

 

 資料にはこのダンジョンは地下一階、部屋数は5個とのことだ。これは別に、調査隊が実地で確認したとかではない。結局地下に穴が空いているわけなので、専用の振動器具と測定機を用いれば大体の中身を調べられるのだ。

 だから地図なんてものはない、予測され得る情報だけが頼りさ。

 

「じゃあ、行きますけど……付いてくるんですか? 本当に?」

「もちろんです。公平くんが時代を紡ぐ光景を、私は特等席で見ていたいのです」

「変にハードル上げるよなあ」

「私頼りのレベリングをしているのではないか、と疑われないように動画を取って配信します。証拠があるならあなたも、要らぬ心配は不要でしょう?」

「えっ……配信? するの?」

 

 びっくりして質問する俺にキョトンとする御堂さん。

 実は探査者のダンジョン探査って秘匿情報じゃないのよね。動画撮って配信したり、何なら探査を生配信したりリアルタイムアタックして完走した感想とか言っちゃう探査者も結構いる。

 ていうか御堂さんもその一人だったな、たしか。前に動画配信サービスのホーム画面でサムネを見たことがある。えっ、有名人に配信してもらうの? 燃えない?

 

「探査者は知名度も大切、まして公平くんは紛れもなく世界最高の探査者となることが確約されています。その最初の一歩を、ぜひとも世界に刻まなくてはいけません」

「世界最高って……あのさ御堂さん、俺のこと何だと思ってるの……?」

「大いなる使命を背負ってこの世に降臨された救世主」

「怖ぁ……」

 

 もう狂信者じゃんこんなの。俺教祖になった覚えないんだけど。

 たしかに見てみると、彼女の瞳は正気のようで、どこか信仰の光にギラついている気がする。

 触れちゃだめな気がして、というかドツボを踏みそうなのでもう、何も言わないことにする。世の中、諦めと見てみぬふりが肝要なんですよ。

 

「……じゃあ、もう、行きますね」

「はい! 撮影はお任せください!」

 

 ウッキウキでスマホを構える御堂さんにため息一つして、俺はとにかくダンジョンへと潜っていった。

 ちなみに服装は学生服のままだが、下着に探査者用の耐刃耐圧シャツとパンツを履いている。武器? ないよそんなもの……

 

 土くれの階段を降りると、そこそこ広い一本道が続く。進むと、4畳くらいの狭い小部屋に出る。暗い。光源がないんだから当たり前か。探査者用の、頭に付けるタイプの懐中電灯を付ける。

 瞬間、俺にめがけて何者かが仕掛けてくるのが見えた。襲撃!

 

「うぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃー!」

「うおっ!?」

 

 醜い見た目の小人、ゴブリンだ。木の棒を振り回して飛び掛かってきている。

 思わずビクッとなったがそこはスキル《風さえ吹かない荒野を行くよ》が発動、10倍に増幅された身体能力ですぐさま体勢を整えて迎え撃つ。

 振り下ろされた木の棒を半身に避けて、握りのあたりを手で払う。それだけで相手はバランスを崩したから、後はこちらからだ。

 

「ぬんっ!!」

「うぎゃーっ!!」

 

 腰を落として左フックを思い切り、ゴブリンの腹にぶちこむ。人を殴るなんて中々ないから奇妙な感覚になるが、思いっきりクリティカルした感触がある。

 ズドン! なんて普通じゃない音が響く。ゴブリンは目を剥き、血を吐き、そのまま断末魔をあげて粒子化していく。一発で致命傷を負わせたのだ。血を吐いたあたり、内臓とか破裂させたのかもしれない。

 

 消えていくゴブリンの、跡には目玉が一つ。モンスターのドロップ品とはこのことで、『ゴブリンの目玉』だ。

 煎じれば痴呆症を著しく治療する効果があるそうで、主に介護現場で高くやり取りされている。いきなりこれだよ幸先いいなあ。

 

「いや、称号の効果か」

「倒したモンスターがアイテムを確実にドロップするなんて、とてつもない効果ですね。億万長者になれますよ、公平くん」

「それは嬉しいですね……というか今のパンチ、すごくしっくり来たな」

 

 ゴブリンを一撃で絶命せしめた左拳を見る。何の変哲もない見慣れた手だが、そこから繰り出されたパンチは変哲しかないし見慣れてもいなかった。

 《風さえ吹かない荒野を行くよ》による、10倍ブーストの影響はもちろん大きいだろう。けれどそれ以外の、不思議なまでにしっくり行く感じもたしかにあるのだ。

 パズルのピースが埋まっていく感じというか。足りなかったものが満たされた感触がある。

 

 もっと敵と戦えば、ピースがすべて揃うこともあるんだろうか。

 何となく楽しくなってきつつも俺は、探査を進めていく。

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