攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
というわけでやって来ました繁華街。さすが首都だけあって人通りときたら想像の倍以上で絶句するほどの人の多さだ。
高層ビルが立ち並び、空を圧迫している感じすらある光景は圧巻と言えるだろう。俺的に都会と言えば隣県だったんだけど、あっちは古都の風景を守るために建築物の高さに制限があったりしてここまですごいことにはなってないんだよね。
見上げれば青い空とそこにかかって見えるいくつものビル──
誰が言ったかコンクリートジャングル。文明の偉大さを感じさせる、すごい光景だと思えるよ。
「さーて、じゃあ一軒目張り切っていくわよー」
「おー! が、頑張ってぶっ潰しちゃいまーす!」
「怖ぁ……」
そんな中を先頭を切って歩くアンジェさんとランレイさんの、呑気ながら物騒なセリフが耳に入ってきた。殺る気満々すぎて怖いよ。
今のところ17箇所もあるサークルの拠点、今からその一軒目に踏み込もうというタイミングだ。かれこれ数ヶ月、こうした活動を繰り返している彼女らや神奈川さん、ステラにとってはもうすっかり手慣れた、日常動作ですらあるものらしい。
物腰穏やかな耽美系イケメン、神奈川さんでさえ割と乗り気のようで肩を回しているし。
昨日、瀬川相手に切りかかったりしたし普通に好戦的なところがあるみたいだね、この人も。抜け目なく敵の隙をついたりする強かさもあるし、ほぼ一年の間、事実上一人で戦ってきたのも伊達じゃない戦闘への慣れを感じさせる動きだったなあ。
『千尋……大丈夫? 昨日、瀬川相手にパス・オブ・ヘヴンを使っちゃってるけど』
「ああ、まあまあな。ただもう一発撃つとダメそうだ、動けなくなるかも」
『最大威力だけどその分、放つと身体への負担が大きくなりすぎる技……どうにかできないかな、本当に』
ステラと小声でやり取りしている彼だけど、気になることを言っているな。パス・オブ・ヘヴン、昨日放っていた瀬川への一撃、必殺技か。
結構な威力だったのは見るからに分かる斬撃だった。ステラ制御下で聖剣のリミッターを解除する方式だったようだけど、そうしないと神奈川さんへの負担が大きすぎるみたいだ。
聖剣使用時の神奈川さんの実力が大体C級下位からD級上位くらいだとするなら、あの技は下手するとA級にも届き得る威力ではあったみたいだしね。
そんなのを放てば反動も当然大きい。おかし三人娘のチョコさんが《武装化顕現》で武器化した始原の四体を全力で使うようなものだ。リミッターがないと出力に押し負けて、逆にダメージを負っちゃうわけだな。
愛する神奈川さんを想うステラとしては、そうしたリスクを極力取り払うようにしたいらしくしきりに頭を抱えて悩んでいる。
そんなステラを慰めるように二、三言いわゆる愛の言葉をささやく神奈川さんのイケメンぶりもあり、ちょっと余人には口出しできない雰囲気の二人だよ。バカップルどもめ!
「っし、着いたわ! ごく普通の雑居ビル、ここの5階っと!」
「え。こ、こんな普通の建物の中に拠点があるんですか、アンジェリーナの姉御」
「……姉御は止めてもらえる? あなた私より年上でしょうに。ええそうよ、資料によると間違いなくここね」
「こ、ここがですかー?」
なぜか──まあたぶんリーダーだからだろう。アンジェさんのことを姉御と呼ぶミュトスはさておき、俺達は辿り着いたその建物を見上げた。
マジで普通のビルだ。特に怪しい雰囲気もなく、なんなら案内標識を見るにいくつもの企業が入っているようなどこにでもあるタイプの建物の、5階を指さして到着ってアンジェさんは言っているんだ。困惑するしかない。
アンジェさんチームにとってはいつものことなのか至って平静だけどこっちはもちろんそうじゃないからね。
思い切り雑踏の前なんですけど。もしドンパチやり始めたら、下手すると大変なことになりかねないんですけど? あまりにもあんまりな事態に、さしものシャーリヒッタも絶句寸前に質問してきた。
「い、いやいやオイオイ。マジかよ、町中だぜ? 今から踏み込むって、下手しなくても大騒ぎじゃねェか」
「あー、まあ最初はそう思うわよね。私やランレイも千尋と組み始めた頃、めちゃくちゃすぎて唖然としたもの」
「い、一応……アンジェちゃんの《重力制御》で全員拘束して逃すことはないから問題ないんだけど……ち、千尋くんとステラちゃんだけの時って、普通に戦ってたみたいだから怖いよね。えへへ」
「えぇ……?」
「無茶すんなァ、おい」
あまりに乱暴なやり方に戸惑う。いや普通に下手打つと一般の方に被害出るやつじゃん。
アンジェさんのスキル《重力制御》のお陰で今は予防線だって引けているようだけど、神奈川さんとステラ二人きりの時は特にそういうのもなく正面衝突で制圧していたらしいが、さすがにちょっとそれはどうなのと。
疑惑の視線を投げかける俺、リーベ、シャーリヒッタにミュトス。
神奈川さんは苦笑いして緩く首を左右に振った。誤解だとつぶやき、詳しいところを語る。
「俺達もさすがにそんな無茶はしないさ、ヴァールさんにも迷惑かけちまうからな……俺とステラだけの頃は、踏み込んでいたのはいつも決まったシチュエーション、決まった場所と日時だけだったよ」
「と、言いますとー?」
「連中の主な活動であるダンジョンコアの密売買。その現場さ……あいつらは絵に描いたような悪の組織だからな、波止場の倉庫だの山奥の廃屋だの裏社会の地下闘技場だの、筋者しか来ないような場所でばかりやり取りしてるのさ。そこでなら大暴れしたって、市民に被害は及ばない」
『それに聖剣には範囲攻撃もありますから。今のところ一人だって逃さず一網打尽にできてるんですよ、さすが私の千尋ですよね、愛しくて誇らしくて胸が震えます』
「そ、そうなの……」
ダンジョンコアの密売買。そうだよサークルの主な活動ってそれなんだよな。倶楽部相手にも売りつけてたみたいだし。
他の裏社会の反社勢力なんかにも販売してたっぽいのは聞いてるけど、その取引現場を狙って神奈川さんは踏み込んでいたってわけか。
それなら市民へのリスクは低いけど……神奈川さん自身は相当な危険に晒されるのは言うまでもない。
この人、無茶するなあ。ステラもステラでそんな彼に首ったけ状態だけど、聞いててちょっぴり背筋が寒くなるよ。
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