攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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突撃!隣のダミー企業

 さておき、ビルの五階へ一目散に向かう。雑居ビルらしくいろんな企業さんが間借りしているようだけど、この階だけは一つの会社が丸々使っているみたいだ。

 "株式会社スキルラボラトリー"、とかなんとか。これもいわゆるダミー企業らしく、こんな感じでいろんな名義でアジトを分散させているんだとか。

 

「おかげで一々探すのも手間ったら仕方ないのよ。この国の警察にも捜査協力してもらえてなかったら、本当に手がかりなんてろくにないんだものね」

「あ、あとはやっぱり千尋くんとステラちゃんの活躍のおかげ……一年間の戦いで、いろんな資料、見つけてくれてたし」

「そうなんですね……」

「敵もややこしいですけど、それ相手にずっと戦ってきた神奈川さんとステラさんもすごいですね……」

 

 アンジェさんとランレイさんの説明にミュトスと二人、感心して唸る。警察の捜査力もさることながら、やはり神奈川さんとステラの二人こそがここに至るまでのMVPなのだと思い知る心地だ。

 毎度名義を変えて社会の中に居を構えて隠れるサークルの、尻尾を幾度となく掴んできたのはやはり年季のなせる技だろう。おそらく現状、誰より連中を相手取ってきた二人だからね。

 

 ほとんど一年間、誰の手も借りることなく悪を抑え込んできた立派な英雄達へ、リーベやシャーリヒッタも賛辞を惜しむことなく告げる。

 

「いやほんと、お手柄ですよーステラ! 聖剣を無断譲渡したって聞いた時はどうなってるのかと思いましたけどー、あなたは素敵な正義の人をパートナーとして見初めたんですねー」

「いくら聖剣持って、あまつさえステラのステータスを一時的に借り受けられるようになってるからってもなかなかできることじゃねえ。一年もよく、あんな無茶な連中相手にしてきたもんだぜ。すげーぜ、神奈川!」

『でしょう? 私の千尋はすごいんです。強くて優しくてカッコよくて、そして誰よりも目の前の悪を放っておけない善の人。そんな彼だから、私は心の底から愛していけるんです』

「過分な評価だ、照れくさいな……すべてステラのおかげだよ。今ここに生きていられること、身も心も無事でいられるのは彼女のおかげさ。愛の力ってやつかもな」

 

 神奈川さんとステラの二人も、そうした言葉に誇らしげにしたり照れたりしつつも、やはり最後にはお互いを想い合って見つめ合っている。

 仲良きことは美しきかな、とは言うもののバカップルすぎてどうにも直視に耐えない……アンジェさんは苦笑いで済んでるけどランレイさんなんて顔を赤くしてあらぬ方向を空虚な目で見てるし。怖ぁ……

 

 そんなやり取りなんかもしつつ、ビルのエレベーターは使わずに非常階段から五階へ向かう。

 万一エレベーターとかに小細工されていた場合、対処できなくはないけど後手に回るからだ。

 

 迫る緊張の時。五階へ辿り着いてドアの前に立つ俺達に、アンジェさんは最終確認を取ってきた。

 踏み入る際の、段取りについての確認だ。

 

「っし、じゃあ公平にリーベ、シャーリヒッタにミュトスはちょっと下がったところで見ててちょうだい。普段私達がどんな感じで場を制圧しているか、"いつものやり方"をとりあえず見せるから」

「分かりました。もしも負傷者が出た場合、敵味方問わず俺かリーベのほうに連れてきてください。即死でなければ治せます」

「だ、だ、出さないよぉ……!? 捜査で死者なんて出したら、大事だよぉ……」

「負傷者は割合出るけどな。なんせどうしたってドンパチだ、無血開城とはいかんもんさ」

 

 今回初参戦となる俺達システム領域側に向け、お手本を見せてくれるらしい。

 死者はともかく負傷者は普通に出るらしいのが口振りからも察せるけど、まあそういうのも含めて今後は対処していけるだろう。

 

 本当に軽い確認だけして、先行してアンジェさんチームがドアを開けてフロアに入る。

 通路を抜けて、企業ブースへ。どうもこの階の半分以上を占めているようで、一部空き地を除けば多少、壁の向こうから生活音が聞こえてくる。

 仕事をしているようでもない、のか?

 

「はいローン! メンタンピンにドラ八丁!」

「っぜー! 俺の国士返せやコラァ!」

「あん? ……遠いな! せめてリャンシャンテンくらいまで来てから言えよ!」

 

 …………遊んでいるな。これ、麻雀か?

 ジャラジャラとした音に、響く楽しそうな声。他に企業が入ってないからって周囲を気にしてなさそうな、男の声が複数だ。

 他にも人の気配はあるけど、オペレータの気配はない。なんなら悪魔憑きの気配だって今のところは感じないから、この人達が現状サークルの一員なのかってのはちょっと判別しづらいかも。

 

 どうするんだろ、アンジェさん?

 対応を勉強させてもらおうと後ろから見ていると、彼女は株式会社スキルラボラトリーの正式な入口から堂々と入り、無人の受付にあるベルを鳴らした。

 すぐにやって来る男の人。若めの、スーツ姿だ。

 

「はい。おはようございます、ええとアポイントメントのほうはおありでしょうか?」

「ええ、あるわよもちろん……捜査令状がね」

「…………!?」

 

 訝しげな男に、すかさず懐から出した紙を一枚突きつける。

 捜査令状……! 警察ぐるみで動く以上、当然ながら持ってるよなそりゃ、捜査だもんねそりゃ!

 

 警察ドラマとかでありがちなシーンに出くわしちゃったよはーっ! ちょっと感動だよはーっ!!

 後ろで精霊知能達も目を輝かせている。このミーハーさん達め! と言いたくなるけど俺もたぶん目が輝いているから人のこと言えないわ。

 

 唖然として目を見開く男へ、すかさずアンジェさんが畳み掛ける。

 捜査令状を持つ彼女の、名乗りが響いた。

 

「国際探査裁判所所属、能力者犯罪捜査官アンジェリーナ・フランソワよ! 株式会社スキルラボラトリー、あんたらには犯罪組織サークルとの関与が疑われているわ、大人しく捜査にご協力なさいな!!」




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