攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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隙あらばイチャイチャしやがるこのバカップル!

 ランレイさんの脚技が、呆気ないほど簡単に男の意識を断ち切った。同時にその身体から悪魔の権能が消え果てていくのをたしかに感知する。

 敗北……あるいは意識の消失。それをトリガーにして権能が失われると見た。身体強化以外に特殊能力もなかったあたり、悪魔によって構成員に与える権能の種類は異なるのかもしれない。あるいは下っ端ゆえ、最低限の力しか与えなかったか。

 

 そのへんも後でセーレに尋ねてみても良いかもだけど、今はとにかく戦闘終了とその後始末だ。

 構成員達は全員、意識を失っている。ランレイさんに直接ノックアウトされた男は言うに及ばず、アンジェさんによる《重力制御》もやはり非能力者にはキツかったみたいだな。

 

 反撃される心配もこれならないだろうし、仮に何かしてきても後詰めに俺達だっている。

 そんなわけで二人の能力者犯罪捜査官は戦闘態勢を解除した。元に戻る重力。かかっていた負荷が消えて、なんだか身軽になった気分だ。

 

「とりあえずはこれで一丁上がりっと……どう? 要はこういうのの繰り返しよ、捜査令状持って乗り込んで、反撃してきたら叩きのめすの。それから警察の能力者犯罪対策課に連絡して全員お縄ってわけ」

「お見事でした、アンジェさんもランレイさんも。やっぱり連行とかはおまわりさんにお願いするんですね」

「一応連携中だしね、便利に頼れる時には頼んなくちゃ損だもの。さてさてスマホスマホ、と!」

「あ、じゃあリーベちゃんは一応ですけど倒れてる人達の傷だけ癒やしときますねー。《医療光粉》ー!」

 

 拠点に乗り込み制圧するまでの過程をかくして示し、アンジェさんはスマホを取り出した。警察に連絡するのだ。

 本当に、鮮やかな手際だったな……これを次からは俺達も手伝う感じになるのか。基本的には人間相手だろうし直接手出しはしないけど、昨日のセーレみたいにちょっかいかけてくる悪魔もいないとは限らないしな。

 

 一応、リーベが意識を失っている構成員達に向け《医療光粉》を使った。背中から六枚の翼を広げ、そこから癒やしの鱗粉を放つのだ。

 3倍の重力ともなれば、下手すると骨のいくらかくらいは折れててもおかしくないしな。負傷者が出るのは常らしいとはさっき神奈川さんも言ってたけど、治せるんなら治しておくに越したことはない。

 

「リーベさん、すげえな……まるで天使みたいだしやってることも本当に回復だ。ステラもああいうこと、受肉したらできるのか? そういうスキルをもらえたりとか」

『……私のステータスは千尋のものだからちょっと難しいかも。一応申請する時には追加で頼んでみるけどたぶん無理かな。むう、リーベさんずるい……!』

「えぇ……?」

 

 天使の翼まんまな姿のリーベに、思わず神奈川さんの視線が注がれてしまったんだけどいけないそれは悪手だ!

 半透明のステラが拗ねて、嫉妬で神奈川さんとリーベを交互に見ている! どちらについてもじっとりした視線だ、怖ぁ……

 

 ステラのステータスは事実上、聖剣使用時の神奈川さんのステータスでもあるからスキル構成はもう決まりきっちゃってるところがあるんだよなあ。

 受肉申請時にスキルを追加するのが認められれば《医療光粉》なりなんなり引っ提げて来れるかもだけど、可能性がかなり低いことはステラ自身も分かっていて、だからリーベに嫉妬の眼差しを向けちゃってる感じだね。

 

 そういう視線なり心境にはリーベも気づいていて、さすがに苦笑いを浮かべている。

 終いにはシャーリヒッタとミュトスがまあまあと止めに入って、ステラを宥めすかし始めるほどだ。やっぱこの子若干ヤンデル気がする……

 

「ステラよう、リーベに妬いたってしかたねーぜ? お前さんにゃお前さんの良いところがあるんだ、そこを誇るべきだぜ」

「そうですよステラさん。神奈川さんも、別にリーベさんとステラさんを比較してどうこう言うつもりはないでしょうし」

「もちろんそれはそうさ。ごめん、言葉足らずだったな……リーベさんがどうであれ俺が愛して夢中なのはステラだけだよ」

 

 こういう時、姉御肌なシャーリヒッタと元々からして調和と協調の神だったミュトスの気質はすごく助かる。

 包容力ってのかなあ。ステラの嫉妬を優しく静かに受け止めて誤解を解し、彼女の心を労りつつ鎮めている。こればかりは明るさ満点のリーベや逆にクールなヴァールでは真似できない振る舞いだろう。

 

 なんなら当の神奈川さんも、堂々たる態度で愛を囁いている。この人、こういうとこマジですごいな。

 普通ちょっとくらい照れると思うし、俺ならそんなこっ恥ずかしいこととてもじゃないけど言えないんだけど、何を恥ずかしがる必要があるのかって言わんばかりに明瞭にはっきりとステラに向けて君に夢中だ、愛してるって言えちゃうんだもの。

 

 そこに嘘や偽り、はたまた誤魔化しの気配は一切ない。完全に心底からの言葉を告げる彼は、純粋に人間としてすごく素敵だし尊敬に値すると俺には思える。

 当たり前の感謝とか想いほど、なんでか言えないんだよ……それをきっちり伝えられるのは、やはり壮絶な経験をいろいろしてきたからなんだろうか?

 

 だとしたらその果てにステラのような子と出会い愛し合えるようになったのは、まさしく運命なんだろうな。

 

『ち、千尋ぉ……愛してる、私の千尋。好き……』

「俺もだ。お前が疑わないように、疑わなくなっても永遠に言い続ける。愛している、ステラ」

『千尋ぉ……!』

 

 それはそれとしてホント、砂糖吐きそうだからそーゆーのは自室で二人きりの時にやってもらえませんかねえ!?

 遠くからパトカーの音なんかも聞こえてきて、ああおまわりさんももうじき来るなーなんてことを思いながらも。俺はやはり、唐突に目の前で展開されたラブラブ空間に当てられて遠い目をするしかないのであった。




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