攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
カラオケ店の204号室内にて、ご飯代わりにいろいろアラカルト的なものをつまみつつ俺達は歌い始めた。
といっても俺は音痴だ、実のところあまり歌いたくはないんだけどね。とはいえここまで来といて俺だけ歌いませんってのもさすがにないし、そもそも春先にこのメンツ相手にすでに音痴は披露している。
ある意味怖いものなしってわけではあった。
「えー? でも私公平くんの歌、好きだよ? なんていうか、良い声してると思うし」
「私も! あと音程が独特で聞いてて楽しいし! フライドポテトも美味しいし!」
「フライドポテトと同列!? いやまあその、そう言ってもらえるとありがたいかな、はは、は」
隣に座る梨沙さんと、そのまた隣でフライドポテトを一心不乱に食べまくる遠野さんがフォローを入れてくれる。
その言葉、気持ちは嬉しいんだけど梨沙さんも音痴なのは否定していない。遠野さんに至ってはなぜかフライドポテトと同じラインで語っている気がする。怖ぁ……何、俺のお歌は芋っぽい的なあれ?
一方で今歌ってる片岡くんなんかは歌が上手だ、実に美声。音程も取れているように思うし、何よりビブラートが綺麗だもの。
これにはフライドポテトを頬張りながら遠野さんもメロメロで、目がすっかりハートマークって感じだもんね。いやフライドポテトから手を離そう?
「片岡ー! 歌上手えぞー!」
「ってかマジ上手いんだけど、片岡くん! えっ、プロ!?」
「さすがにそれは……でも結構一人でカラオケとか来てるから。それが関係してるのかもしれない」
「すごい」
なんてこった、同じ陰キャ仲間だとかつてない親近感を抱けるクラスメイトだった片岡くんが、こんなにも歌が上手い上に一人カラオケまでマスターしているなんて……!
っていうかさっき、機種周りでよく分かんないシンパシー感じてたのは俺だけなのかよ。むごい。
一人〇〇シリーズにおいては一人カラオケ、通称ヒトカラなんてのは初歩中の初歩だと言われているが否、俺にとってはそれでもハードルが高い。
まずもって音痴だからね。その時点で行く気にはなれないというのもある。けどそれ以上に一人でお店に入るというのがこう、心理的に怖いのだ。
受付の人にえっ? って目で見られたらどうしようとか。
たとえばクラスメイトとか昔の同級生とかがグループで来ててばったり鉢合わせたらどうしようとかついつい思ってしまうわけ。
繊細な陰キャ心なわけ。
これについてはカラオケのみならず他のことでもそうだ。食事についてはさほど気にしないんだけどね? 一人でゲーセンとか、一人でお祭りとかは同様の危惧を抱いてしまうのでたぶん無理だろう。
ちなみにこのことを我が魂の陰キャ同士、シェン・ハオランさん(25)にチャット内にて語ったところものすごーく理解してもらえた。魂が共鳴した気さえしたよね。
まあハオランさんは俺ごときでは足下にも及ばなくて、そもそも一人で家の外に出ることさえおっかなびっくりなレベルなんだけど。
いやあなたにとっての家の外ってそれシェンの里、つまり身内では? と思わず言いたくなったが……なんだか途方もなく恐ろしい話を聞かされそうなのでスルーすることにしたのは夏休みに置いてきた秘密だ。
「と、なんだ? メッセージ?」
片岡くんの美声に酔いしれているとスマホが軽く震えた。なんらかのメッセージが届いたという通知だね。
取り出して確認すると、我らが伝道師こと香苗さんからだ。なんだろ。とりあえず反応する。
『お疲れ様です救世主様バンザイ。公平くん、もしよければ本日、全探組施設にお越しいただけますか? 少しばかり込み入った事態になりました』
『お疲れ様です、山形です。夕方からですが一応、依頼書を確認しに向かおうとは元々考えていましたからそれで良ければ行けますよ。どうされました?』
『愛知さん……S級探査者の愛知九葉さんが全探組にやって来ました。それもシャルロット・モリガナさんを連れてです。今すぐである必要はまったくありませんので、夕方頃にすみませんがご足労願います』
「────なんだとっ!?」
あいも変わらずトンチキな挨拶から始まって、全探組に来てくれってなもんだからまた探査とかご一緒させてもらえるのかなー、なんて呑気に考えていた俺ちゃん、思わずガチの驚嘆を示してしまう。
いきなりの大声にみんなビックリしてこちらを見るけどいや、それどころじゃない。愛知さんが、しかもシャルロットさんを連れてこっちに来てる!? なんで!?
S級探査者にして公安警察の協力者、愛知九葉さん。彼女はたしかに認定式の日からこっち、シャルロットさんの確保とアンドヴァリの打倒に向けて独自行動をとっているみたいだったけど、それでも首都圏で動いてるのかと思っていた。
なんで関西にいる? しかもシャルロットさんと一緒だなんて。あれから今日にかけての一週間ほどでいろいろあったんだろうってのは分かるけど、それにしたって風雲急を告げすぎる。
怖ぁ……
目まぐるしく動き始めた状況に慄然とする俺に、おずおずと梨沙さんが話しかけてきた。
「こ、公平くん? どうしたの、何かあった?」
「あ、ああいや、ごめん驚かせて。いやちょっと仕事方面でその、とんでもないことが起きちゃって」
「え。それ大丈夫かよ。良いのか、こんなカラオケとかしてても」
「それは大丈夫。夕方になったら全探組に行くけど、それまではみんなと過ごしたいからね。あはは……」
思わずして声をあげてしまって、みんなを不安がらせてしまったことを謝る。落ち着け俺ー、しっかりしろ俺ー。
夕方までカラオケ、そこからは全探組ってのは元からの予定だし、香苗さんもそこはわかってくれてるみたいだし。だったら何も慌てる必要もないだろう。
軽く目を瞑り、称号効果で気分をフラットに。
明瞭に冷静さを取り戻した頭で、俺は切り替えてひとまずは目の前の友人達との交流に集中することにした。
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