攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
建物内は清潔ながら、やはり捜査の中でいろいろ差し押さえられたからかもぬけの殻だ。
なにかの研究所だったような、ちょっとラボラトリーめいた空気の漂う空間。無人で閑散としていて、夕陽も落ちかけの頃合いだからかなんか幽霊とか出そうだ。
「倶楽部の関連施設なら、何かしら化けて出てきてもおかしくないだろうけど、な」
それでも関係なし、俺は通路を駆け抜けていく。
気配感知によればヴァール達は通路を抜けた先にいる。謎の気配も、今はもう感じないけど確実に誰かもう一人はいる。
アンドヴァリか、はたまた神谷さんか。もしかしたらまるで関係ない別の者かもしれない。
いずれにせよ急ぎ合流しないと。戦闘面ではなんの心配もいらないメンツだけど、それでも何が起こるか分からないのが委員会案件だからね。
一心不乱に駆け抜ける。
そうして通路の先、部屋のドアを開けて俺は、中に入り呼びかけた!
「無事ですかみなさん! 助太刀に来ました!!」
「公平くん! 来てくれましたか!」
「助かる! 今後釜を呼ぼうかと思っていたのだ、負傷者の手当を頼みたい!!」
広々とした、けれど何も無い部屋。そこに香苗さん達はいて、すぐさま俺に反応してくる。
とりわけヴァールの焦り方は尋常ではない。しかも後釜ことリーベを呼ぼうとさえ考えていたと言う。
それはなぜか、俺にもすぐさま分かった。
──シャルロットさんだ。血まみれになり、血の海に沈んでいる。
左手と右脚を、切断された状態で力なく横たわっていたのだから。
「────! 《シャルロット・モリガナは怪我をしていない、だから左手と右脚は切断されていない》ッ!!」
「…………ぁ、ぅ……?」
「! シャルロット様! 七代目様、大丈夫ですかっ!?」
言われるまでもなく、俺は即座に権能を行使した。シャルロットさんが負傷した事実をなかったことにして、彼女の傷を否定したのだ。
瞬間、彼女は淡い光に包まれた。切断された手足がくっつき、流した血の海がすべて彼女の体内に戻っていく……いやそもそも最初から流したことにならなくなったのだ。
一秒かけず、シャルロットさんは完全な健康体に戻った。
それを見て叫んでいた人……俺達が探していた五代目聖女、神谷美穂さんがさらに叫んだ。
「シャルロット様!? 大丈夫ですか、私の声が聞こえますかッ!?」
「……ご、五代目様。わ、私は、これは一体。たしか、アレクサンドラに、手足を」
「ああ……っ!! 良かった、本当に良かった!! シャルロット様、ううう……っ!!」
意識が混濁していたところを、いきなり回復したことで混乱しているんだろう。目を白黒させるシャルロットさんを抱きしめ、神谷さんは大粒の涙を流して喜びに咽び泣いている。
じ、事情はともかく良かった……間に合った。めちゃくちゃ際どいタイミングだったぞ、あの負傷具合。
まず間違いなく致命傷だったけど、彼女ほどの人をこうしたのはどうやらアンドヴァリみたいだ。
やはりいたのか……それにしても仮にも弟子を、こんな目にあわせるなんて。
安堵の息を漏らす俺に、香苗さんとヴァール、愛知さんが駆け寄ってきた。
「公平くん! 来てくださって早々にこのような奇跡を起こしてくださる、貴方様こそやはりこの世を導く救世主ですっ!!」
「御堂香苗の言うとおりだ! 大手柄だ山形公平、本当に間に合わないかと思った……!」
「き、君は治療系スキルまで使えるのか? 多芸だし、すさまじい威力だな……間違いなく天才だし、救世主というのもうなずけるよ」
「うなずかないでください。僕は新人です……まあ、間に合ったのは本当に良かったけども」
三人とも心底安堵した様子で、マジで焦ってたのが窺える。この人達をしてこうなってしまうってあたり、シャルロットさんの状況がもう本当に駄目だったのが分かるね。
それをどうにか間に合わせて完治までもっていった俺は、さすがに香苗さん言うところの救世主っぽさがちょっぴりくらいはあるのかも知れない。だからってそれをあけっぴろげに吹聴する気もないけどさ。
さておき、周囲を見回す。
何も無い部屋だし、味方以外には影も形もない。気配もない。
ましてやアンドヴァリなんてどこにも尻尾の一つも見つからない始末だ。
逃げられた……んだろうな。シャルロットさんの手足を切断したのと前後して、どうにかしてこの場から逃げ出したってところか。
だがどのような流れでこうなったんだ? 悪魔達を相手していた時に感知した異様な謎の気配は、アレがシャルロットさんのさっきまでの姿と関係していたのか?
謎は深まるばかりだ。
俺はとにかく、ヴァールに問い質した。
「何があったんだ? さっきこの部屋の中から、異様な気配が生まれるのを感知したけど」
「あ、ああ……そうだな、あなたには説明しなければならないだろう。とんでもないことが起きた。ワタシはおろかきっとあなたにも、誰にも想定できていなかっただろう事態を、アンドヴァリが引き起こしたのだ」
「やっぱりアンドヴァリなのか……」
ヴァールがかつてないほどに深刻な表情をして語るのは、やはりアンドヴァリについてのようだ。
この子がここまでの顔をするなんて、一体何をやらかしたんだ? 俺にも誰にも予想していなかったことだなんて、まったく次から次へとやらかしてくれるよ、敵さんも。
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