攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

1375 / 2049
実は神奈川のほうも大概重いんじゃないか?山形は訝しんだ

 なんやかやと、やり取りしつつ駅着いて電車乗って隣県へ。途中乗り換えなんて挟んで向かうは竜虎大学の最寄り駅だ。

 夏休み前半に宥さんに案内してもらったからこのへんはもうばっちり記憶済みだ、コマンドプロンプトの演算能力を舐めてもらっちゃ困る。

 

 なんなら二学期始まってすぐながら、勉強の調子もめちゃくちゃいいほどだ。

 教科書に載ってることも全部理解できるし記憶だってできちゃう。計算能力もスパコンかよってくらい高いし、なんていうかマジでチートだこのオツム!

 

 ……これ、いいのかなー? って気はしている。正直なんと言うべきか、ズルをしている気にはなるよね。

 でもまあ、こればかりは俺であり私であるがゆえの生来、いや生前からのものだから。無理に否定するのも違う気はしていて。

 結局、謙虚さだけは忘れないでいたいよねって気持ちをことあるごとに再認識するに留まっているのが、新生山形公平くんの新しい学校生活の姿だった。

 

 竜虎大学前駅に降りて、眼の前に聳える神社にこれも久しぶりだなーって思いつつも大学へ向かう。

 立ち寄っても良かったけどこのご時世だ。迂闊に概念存在の領域に入るのもちょっと躊躇われたので止めておくことにする。

 VIP中のVIP、ソフィアさんもいるからね。電車での移動中もずーっと周りの人達が彼女と神奈川さんに視線を向けていて怖かったよ。イケメンと美女はやっぱり注目度が違うや。

 

「……と。そろそろですね、正門前で宥さんが待ってくれているはずですが」

「日本の大学というのも、見ることはあっても入るのはあまりないことでした。うふふ、こう言ってはなんですが楽しみです」

「大学かあ。興味はあったけど俺、高校にも行ってないからなあ。中3でクソ両親が蒸発しやがって、そっからずーっと反社連中に良いようにこき使われてたよ」

「怖ぁ……」

 

 単純に可愛い好奇心を示すソフィアさんはともかく神奈川さんの過去が絶望的に重く暗い。この人、俺くらいの年からずっと裏社会に絡め取られて生きてきたのか……

 親が残した借金を返済するために、社会的身分含めた何もかもを掌握されて。一体具体的に何をする羽目になったのかは恐ろしくて聞けないけど、想像を絶する目に遭ってきたのは想像に難くない。

 

 それで一年前、いよいよ家さえ奪われてホームレスになって命まで狙われる中、出会ったのがステラだったんだな。

 そりゃステラに対して重くなるよ。ステラも大概な重さなんだけど、神奈川さんも彼は彼でステラを異様なまでに想っているわけだからね。

 

 なんとなくその心情が察せられて、俺は二人の幸せな未来を願わずにはいられない。

 ソフィアさんも神奈川さんに対して、優しく、暖かく声をかける。

 

「神奈川さん。あなたにはきっとこれから良いことがたくさんありますよ……月並みですが。この一年のあなたの功績には、私もヴァールもWSOも、あなたが思う以上に報いてみせましょう」

「あー、なんかすみません、不幸自慢みたいになってしまって。俺は今、すでに幸せで満足してますよ。なんてったってステラが傍にいてくれますからね」

「だからこそ、よ。ステラ様が受肉なさったらいろいろ入用にもなってくるでしょうし。単なるお金だけじゃないいろんな部分で、神奈川さんのフォローだってさせてもらうわ」

「……ありがとうございます、チェーホワ統括理事」

 

 神奈川さんのこれまでの、対サークルにおける功績……その大きさは間違いなく今回の事件全体で見てもトップクラスだろう。

 ステラの補佐ありきとはいえ実質たった一人でやつらを追い続けた、なんて誰にでもできることじゃない。ステラを求める一人の男の、想いの強さを彼はここに至るまでずっと示しているように思う。

 

 そんな彼だからこそ、ソフィアさんは多大な報酬をもって報いたいと考えているみたいだ。これはヴァールも、ひいてはWSOという組織のスタンスとも言えるだろう。

 これまで散々に苦労してきた神奈川さんが、これからは少しずつ報われて幸せになってくれれば良い。本人はステラがいるだけでも満足で幸せだって言ってるけど、俺はそう思うよ。

 

 そしてそんな思いはもちろん、ステラのほうがより大きい。

 腕にぎゅっとしがみついた透明の彼女が、祈るように囁くように神奈川さんの耳元で囁くのを俺は見た。

 

『千尋……私が受肉したら、絶対絶対、幸せな家庭を築こうね? もう二度と一人ぼっちになんてさせないから、ね?』

「ステラ。ああ、そうだな……幸せになるんだ、絶対に。俺と、お前と、そしてみんなで。あ、それはそれとしてあのクソ親どもは別だけど」

 

 甘えるように愛を、幸せを語るバカップル二人。

 うーん、砂糖を吐きそうだ……幸せになってほしいけど、人前でやたらめったらバカップル空間を展開するのは控えてほしいもんだ。

 独り身には堪えるからね!




【告知】
 コミカライズ版スキルがポエミー2巻、大好評発売中!
 紙媒体も電子書籍もありますので、ぜひともお買い求めくださいませー!
 ブックマークと評価のほう、よろしくお願いしますー

「大ダンジョン時代ヒストリア」100年史編完結!
https://syosetu.org/novel/333780/
よろしくお願いいたしますー

【お知らせ】
「攻略! 大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」コミカライズ一巻発売中!
ぜひともみなさまお求めよろしくお願いしますー!

コミカライズ版スキルがポエミーも好評配信中!
下記URLからご覧いただけますのでよろしくお願いします!
 pash-up!様
 ( https://pash-up.jp/content/00001924 )
 はじめ、pixivコミック様、ニコニコ漫画様にて閲覧いただけますー!
 
 加えて書籍版1巻、2巻も好評発売中です!
 ( https://pashbooks.jp/tax_series/poemy/ )
 よろしくお願いしますー!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。