攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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サン・スーンのこと、時々でいいから……思い出してください

 部室棟をしばらく進めば見えてきた、カレチャの部室。看板が立ってあるから分かりやすいもの、手作りの味がある素敵な立て看板だ。

 なんでも竜虎大学のカレチャは規模が大きく、小早川さんのようなプロの探査者を擁していることから予算や設備面で大きく優遇されてるみたいで、通常どこの部室も基本は一部屋分なのを、カレチャについては二部屋使って活動をしているとのことだった。

 

 入室する前に軽く、小早川さんからカレチャについての説明が入る。

 せっかくだし聞かせてもらいたい話だ。パンフには載らない生の、しかも副幹事長直々の説明だしね。

 

「カレッジサーチャーズ──探査者同好会と銘打つだけあって、探査者が実際におらずとも、界隈のマニアやファンによるコミュニティとして活動しているところが大半なのですがね。弊会のように探査者がいれば、実績面に大きなプラス評価をもらえるんですよ」

「そしてそうなると予算面なども都合がつきやすくなる、と。それで折に触れてカレチャの人達、私を勧誘したりしてるんですよ公平様」

「へぇー……そうなんですねえ」

「予算の問題は、あらゆる組織につきまといますものねえ」

 

 なかなか生々しいお話だ、探査者がいれば実績扱いで予算がつくとは。ソフィアさんがしみじみ遠い目をしているのがなかなか怖いよ、世界一の組織のトップだもんね、この人。

 でもまあ、いろんな活動するのもタダじゃないだろうし、大学のお金を使ったりすることもある以上はそりゃそうなるよなあ。

 

 先立つものがなければあまり派手な活動はできないし、そうなるとやはり探査者はできる限りカレチャに入ってほしいと。

 それで宥さんを時折勧誘しているそうだけど、この人もう文芸部に所属してるんだよね。

 掛け持ちって線でもOKなのかも知れないけど、そもそも彼女の性格的にそういう理由で求められるのはたぶん、NGなんじゃないかなあ。

 

 今もほら、ちょっと困ったように眉をひそめて俺に耳打ちしてきたし。

 そんな姿を見て、樋口さんが明るくにこやかに話しかけてきた。

 

「望月さんはネームバリューも実力もすごいですから! 最近はその、目新しい活動のほうにも精を出してますけど……実力もありますし、カレチャにこそいてほしい方と言いますか! カレチャこそあなたに相応しいと言いますか!」

「すみませんが私、大学生活にはなるべく探査者としての実績などを持ち込みたくないと思っています。文芸部の活動も楽しいですし、カレチャに入る気は一切ありませんね」

「う。あー……そうですよね、すみません勝手なことを。失礼しました、ごめんなさい!」

「あ、いえ。こちらこそすみません、せっかくのお誘いを」

 

 しきりにカレチャに勧誘してくるタイプの人なんだろう、宥さんの実績を引き合いに出してくる彼に、宥さんはしかしきっぱりと拒否の意を示した。

 明らかに自分の実績を見てくる樋口さんに、やんわりとしつつも結構強めに言ったなあ……まあ当然だと思う。

 

 探査者だからカレチャに入るのが相応しい、なんてのは俺としても首を傾げる理屈ではある。

 別になんらかの義務や責任があるわけじゃないんだし、大切なのは本人がどこにいたいかとか何をしたいかであって、どういう立場だからとか、どういった事情だからとかって話ではないと思うんだよね。

 そして宥さんは割合、その手の物言いに対して敏感なのを俺はGWの探査者ツアーを経て知っていたりする。

 

 あの時、関口くんにコラボを持ちかけられた時にも彼女は強い意志でしっかりと断った。

 今の樋口さんと同じ──いや物言いは当時の関口くんのほうが数段アレだったけど──で、宥さんの配信者としての実績や探査者としての実力だけで一方的に自分にこそふさわしいとか言ったんだよね、彼。

 それを今みたいにバッサリ切って捨てたのが彼女なわけなので、今回もそうならない理由がないのである。

 

 部室の前でのやり取り。少しばかり気まずさが残る空気になって、樋口さんが申しわけなさそうにしている。

 藤代さんが陰で頭を抱えて馬鹿……とつぶやくのを誰もが聞こえないふりをしていると、小早川さんはやはりダンディにコホン、と一つ咳払いをして言うのだった。

 

「樋口くんが失礼しました。彼はカレチャの活動にとても積極的でしてね。若さゆえに前のめりになりがちなのですが、今回は空気が読めなかったようです。後ほど指導いたしますので、平にご容赦のほどいただけますれば」

「そんな大袈裟ですよ、小早川さん。熱意があるというのは素敵なことですし、私も別に不快な思いはしていませんよ」

「ふふ、なんだか若い頃のサン・スーンくんを思い出しましたねえ……彼も政治屋としては昔、結構強引にことを運ぶタイプだったんですよ、山形様」

「そ、そうなんですか?」

「ええ。あれについては師匠のレベッカ・ウェインが悪いのだと今でも思っています。まったくあの子と来たら、誰に何を教えるにしてもとりあえずゴリ押しなんですもの。ヴァールともども頭を抱えました……」

 

 樋口さんも別に、そこまで問題になる発言をされていたわけじゃないとは思ったんだけど。小早川さん的にはカレチャの副幹事長としての立場もあるし、謝るしかないのも分かる。

 分かるんだけど……ソフィアさんってば何やら過去のアレコレを思い出したみたいで、まさかのサン・スーンさんを引き合いに出して俺に話しかけてきたよ。

 

 そう言えばあの人、もう帰国したのかな?

 認定式の日には見かけなかったし、後でソフィアさんに聞いてみよーっと。




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