攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
まさかの関西は俺が住む県にある、地域どころか地方の水源を担う湖。
その畔にサークルとカレチャのつながりが濃い、いわば拠点があるらしいという話を聞き、俺は信じ難い思いで群馬教授を見ていた。
カレチャは国内全土にある団体だから、関西にも竜虎大学だけじゃなくあちこちの大学にある。無論うちの県にもだ。
だから拠点の10個20個は関西にあってもそりゃおかしくはないんだけど……よりによってそんなところに、件のサークル幹事長が通っているらしい施設があるのかよ。
率直に言って迷惑極まりない話だ。
地元住まいの俺や宥さんが苦い顔をしていると、ソフィアさんが冷静に仔細を詰めていった。
「失礼ながらその情報、信憑性のほどはいかがですか? 提供者の実業家の方が、すでにかの団体に取り込まれているという可能性はありますか」
「もちろんありましょう。ですが永年にかけて支援してくれている方ですし、何より他に得られた情報もありません。たとえ罠の可能性があったとしても、手にした以上は確認しなければ始まらないと思ったのです。そのために山形さんにお話した次第です」
「……山形さんには失礼な話になりますが実のところ。望月さんを通して依頼の形にしたのはそのお力を見込んだだけでなく、あなたの人脈に頼りたかったところもあるのです」
「あー……ソフィアさんは言い過ぎにしても知り合いに警察関係者さんや能力者犯罪捜査官さんがいますから、そっちも頼りたかったと」
「そうなります……すみません、本当に失礼なことを」
確認すれば、群馬教授も福井さんもひどく、申しわけなさげに謝罪してきた。
いや、別に謝ることでもないと言うか、納得というか。いきなり俺に話を振ってきた時点でそんな思惑もあるだろうなーって気はしてたしね、実際。
これもひとえに認定式の日に全国デビューしたからだろう。改めて悪目立ちした俺について、ソフィアさんや数多のS級探査者、何より伝道師とのつながりについては毎日ってレベルでテレビでも取沙汰されてたりするからね。
他に報道することないのか? と率直に聞きたくなるんだけど……あの日見た信者系リポーターの方を見るに内部にも救世の光に入信してるんじゃないかって気がして迂闊に触りたくもない。
家族も救世の光発足当初はからかってきてたのが、最近ではあまりの規模の拡大具合に割と本気でドン引きしてきている始末だもの。辛い。
とまあそんな我が家の空気はさておき、そういう流れから俺とコンタクトが取れれば芋蔓式に強力な助っ人を呼べるんじゃないかと思ったのも分かる話だ。
ましてや直通のホットラインとも呼べる宥さんが学内にいるからね。ダメ元でも一度話を持ちかけてみようってなるのは俺にも理解できる話だった。
ただ……ソフィアさんと宥さんはちょっとそこに引っかかるものを感じたみたいだった。
眉をひそめ、ちくりとそれぞれ言葉を放つ。
「……山形様は優しい方ですから、きっとお気にされてはいないのでしょう。ですから代わりに言わせていただきますが、あまりに自分達の都合ばかりですね? 本来の筋を言うならばまず、何より先に警察に情報提供するべきだったでしょうに」
「…………はい」
「それをせず私を通して公平様に真っ先に話をもちかけたのは、察するになるべく小規模な形で、かつ迅速に問題を片付けたかったからですか。直接的に警察に頼れば大学ごと大事になるし時間かかる。その上痛くもない腹を探られることになるからそれは困ると」
「仰る通りです。本当に、恥じ入るばかりです」
怖ぁ……やんわりとしつつも圧のある詰問に、教授が汗だくで頭を下げている。
まあ、ソフィアさんや宥さんの言い分は当然の理屈だ。本来の筋を言えばとりあえず警察に行きなよ案件なのを、できるだけ騒ぎにしたくないからと極秘ルートに近い宥さんからの俺を通じて警察を動かそうとしたってわけだからね。
要は俺を出汁にしたということなので、お二人としてはそこが引っかかったんだろう。
でもまあ、この際もうそこについては良いんじゃないかな。
俺は二人をやんわりと、笑顔で宥め抑えた。
「あの、お二方。俺は気にしてないですし良いですよ、大丈夫。ありがとうございます、お気遣いいただいちゃって」
「山形様……あなたはもちろん、そういう方でしょうけれども」
「毎回頼られるのはさすがに困りますけど、今回についてはほら、こっちとしてもメリットありますから。連中の情報はどんな形であれ欲しいってのはこっちも同じでしょう?」
「それはそうですが、しかし」
「利害が一致しているなら悪くない話です。俺は出汁でもコンソメでもなんでも良いですし、最優先はまずサークルについての情報と捜査の進展でしょう」
この際、大学側の思惑や都合なんてのはこちらの気にすることじゃない。重要なのはサークルのトップが潜伏しているかもしれないという情報を得られたという事実そのものだ。
藤近功……サークル幹事長。認定式の日にも結局姿を見せなかったらしいその男を首尾よく捕まえられればあるいは、一気呵成にサークル壊滅にまで持ち込めるかも知れない。
そうすれば過激派にも大ダメージだ。さすがにアンドヴァリは一筋縄ではいかないだろうけど、少なくとも局面を大きく打開できる可能性はあるってことなんだよね。
だったら俺のことなんてなんでも良いんだ。大切なことは決してそんなところにはない。
それにぶっちゃけ、大学から警察に話が行くのも大学から話を受けた俺から警察に話が行くのも同じじゃろって感じはするし。独自権限で動けるアンジェさんチームのことを考えればたしかにこっちのが早いよねって納得するほどだ。
大学側の判断も、自分達の都合に沿って考えるならそう的外れなものでもないんだろう。
「それにわざわざ頼ってきてくれたなら、なるべく応えたいですしね。ここのカレチャさんには以前、お世話にもなってますし」
「……山形さん」
そうでなくとも小早川さんや藤代さんとの縁もあるのだし、こちらとしては協力することにやぶさかでもない。あ、もちろんソフィアさんやWSO、警察の方の意向や許可を得てからだけどね。
勝手に何かをするつもりはない。そこはきっちりしとかなきゃね。
「あなたは……本当に、そういうところが救世主なのですよ。ふふふ」
そんな感じで思いを述べると、ソフィアさんは目を細め、眩しいものを見るかのように俺を見て言うのだ。
やめてくれシャイニングしてないのに。そしてもっと止めてくれ隣で瞳をキラキラさせてメモをとっている宥さん!
絶対後で香苗さんと情報共有して動画のネタにするやつでしょそれ!
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