攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
仲間達との合流もそこそこに、ヴァールから現状の説明を受ける。施設を囲う探査者達より数m離れたところで、全体の様子を伺いながら有事に備えて臨戦態勢は維持しつつだ。
すでに車の中で神魔終焉結界は展開している。沈みゆく夕日に照らされてのまぶしさの中、そして話は始まった。
「そろそろ各員の配置も終わり、包囲網を形成した上で捜査令状を持っての事情聴取と、家宅捜索の通達がこちらから行われる手はずになっている。少なくとも内部にカレッジサーチャーズ関係者がいるのは確認済みだが、サークル構成員がいるかどうかまでは情報はないな」
「ああ、それについては間違いなくいるよ。オペレータだけじゃなく悪魔憑きや悪魔の気配も複数感じる。それが藤近や海方、瀬川かどうかは判別がつけられないけど」
「そうか……ならばサークルとカレッジサーチャーズの一部が繋がっているのは確定だな。まったく、なぜにそうなる……」
俺の感知した情報から、カレチャとサークルの関係性が確定的なものになったことを受けてヴァールがぼやく。
気持ちは分かるよ、意味不明だもんな……なんで大学の探査者同好会のメンバーが卒業後、反探査者社会を標榜してるに等しい組織の構成員になっているんだか。
そんでもってそのサークルの標榜するところも、今となってはどこまで本気なのかって話だ。
これまでサークルの拠点に踏み込むアンジェさん達に同行してきたけど、どうも大半がやる気がないというか、ただ遊んだりしているだけだったし。
少なくとも幹部陣と末端とでずいぶん意識がズレている気がしてならないんだよなあ。
正直、アンドヴァリ同様にマジで目的が見えてこないもんだから不気味で仕方ない。一体何がしたいんだ?
まあ、今はもうそんなことを論じる段階ではないんだけどね。とにかくやつらを捕まえる、話はそれからってことだね。
「ともあれ、家宅捜索に応じない場合は強制捜査執行という形になる。素直に応じてくれることを祈りたいところだが」
「十中八九、そうはならないでしょうね……だから探査者を集結させて、前線に並べてるんですよね?」
「ああ。サークル構成員がいると知れた今、もはや戦闘は避けられまい。場合によっては過激派構成員達やアンドヴァリさえいるやもしれん、ウーロゴスなりAMWなり持ち出されてもおかしくないと心得ていてくれ、みんな」
本当なら戦闘には至らず、穏便な形でサークルが投降してくれるならそれが一番ありがたいんだけど。まず間違いなくそうはならないだろうなってのは、もはや俺たち全員の共通認識だ。
荒事になる……そしてその際、鍵の一つはアンドヴァリがあのアパートの中にいるかどうかってところだ。
いた場合、間違いなくウーロゴスも出張ってくるだろう。アンドヴァリ自身もその力を取り込んでおり、空間転移をはじめとした権能を駆使できる状態にあるなら非常に手強い相手となる。
ウーロゴスはミュトスが、アンドヴァリは俺が相手をすることにはなってるけど、さてどうかな。
「……ていうかシャルロットさんや愛知さんはいないのか? アンドヴァリがいるかもってなったら、あの二人もいておかしくないと思うんだけど」
「今日の捜査についての通達にも、ダンジョン聖教のことは記載されていませんでしたね。連携してないので当然のことではありますが……」
「うむ、しかしこれまでの経緯から言って、彼女らがここにいてもおかしくはないな。それについては神谷からの説明がある」
アンドヴァリといえば、ここで気になるのがシャルロットさんと愛知さんだ。
やつを追っているシャルロットさんはこの場にいないほうが不自然だし、そのシャルロットさんをターゲットにしている愛知さんも含めて二人、ここにいてもおかしくないように思える。
香苗さんも同様の疑義を呈したところ、ヴァールはひとつうなずいて神谷さんを見た。
ダンジョン聖教先々代聖女。彼女がこの場にいるってことは、シャルロットさんの行方について何かしらあるんだろうか?
耳を傾ける。
「ご説明いたします。聖女シャルロット・モリガナ様は現在首都圏のほうに戻られ、全域に網を張っておられます……アンドヴァリは関西でなく、すでに首都圏に戻っていると考えていらっしゃるのです」
「……その根拠は? こないだまで関西にいたんですし、サークルもこっちにいるんですからやつだってここにいてもおかしくないと思うんですけど」
「だからこそ、です。アンドヴァリ、アレクサンドラであればそこであえて首都圏で行動を起こすだろう、と。やつの弟子だった聖女様は強く確信している様子でした」
「サークルそのものを囮に……!? ああ、でもそうか、自然公園でも、倶楽部の隠し拠点でもやつは」
まさかの判断に驚く。シャルロットさんはこの、一つの決戦とも言える場にアンドヴァリはあえて姿を見せず首都圏で動くと予想しているんだ。
そして言われてみればそう思えるだけの要素はたしかにあった。何せこれまでにも、やつは何度も大方の予想を裏切っているんだ。
たとえば認定式の日。戦闘真っ只中の現場から離れた自然公園で活動していた。倶楽部の隠し拠点の時も、首都圏にいると思われていたのをまさかの関西にまで移動していた。
いずれも常に、事件の中核となっている事柄の裏で密かに動いていたんだ……であれば今回も、ここまでことが大きくなっている裏で密かに河岸を変えていてもおかしくない。
アンドヴァリ。アレクサンドラ・ハイネン。
その手口は言うなれば囮戦術。スケープゴートを立てつつ自分は別の目的のために動く、それがあの女のやり方ってことか。
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