攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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おかしい。リラクゼーション効果がある光を見て興奮している伝道師がいる(白目)

 アンドヴァリの性格を読んで、あえて関西でなく首都圏に網を張ったシャルロットさん。そしてそんな彼女に半ば監視するかのように同行しているのだろう、愛知さん。

 弟子であるがゆえの発想というか推理って感じだし、実際にこれまでやつが取ってきた行動から見ても頷けるものだ。

 

 かつてはアンドヴァリの師匠だった神谷さんでさえ、そうしたシャルロットさんの判断に感嘆の吐息を漏らしている。

 永らく付き合いがあった弟子の裏の顔を見抜けなかったということへの、悔恨さえ滲ませながら彼女は語った。

 

「アレクサンドラは、よほどシャルロット様に対してはそのおぞましい内面を見せつけてきたのでしょうね。聖女様があの女にどのような修行をつけられたかは実のところ、知らないのですが……あれだけの嫌悪と憎悪、殺意を剥き出しにするあたり察せてしまうものはあります」

「それは、つまり……」

「虐待、あるいは拷問。それに近いことがおそらくは、日常的に行われる凄惨な修行時代だったに違いありません。自らの手でアレクサンドラを殺したがっているのも、そうであれば納得がいきます」

「……い、いや。それは、さすがにどうとも言えないというか。落ち着きましょう、神谷さん」

 

 いささかぶっ飛んだ推論を口にする神谷さんの、顔が徐々に憤怒に染まっていくのを俺は慌てて止めた。

 怖ぁ……なんとなく辻褄の合う話な気はするけど、にしたって何段飛ばしの発想なんだ。

 

 さすがに証拠や証言がないのに決めつけで昔、アンドヴァリがシャルロットさんを修行の名目で拷問にかけてましたーなんてのはさすがに暴論というか極論な気はする。

 師匠ゆえの目線というより、完全にアンドヴァリが敵であることからの決めつけにすぎない。これに乗っかるとそれはそれで大事なことを見落としちゃいそうだぞ。

 

 自分で言ってて自分で頭きちゃったんだろう、またしてもブチギレ神谷さんになりつつある。

 それを止めたのは彼女のお付きの騎士ウィリアムズさんと、長年の付き合いがあるヴァールの二人だった。

 

「先々代様、どうか冷静に……」

「いくらなんでも飛躍しすぎだ、神谷……シャルロット自身の口から何も語られていない以上、滅多なことは口にするな。たとえアンドヴァリが敵であっても、憶測で言って良いこと悪いことはある」

「……失礼しました。駄目ですね、私。完全に怒りで心と目が曇っています。20年前に戻れたならドイツでのあの日、あの教会でぬけぬけと弟子入りを叫んだあの女を殴り殺したいと、そう思ってしまうほどには冷静ではありません」

「怖ぁ……あの、今から光りますからそれを見て落ちつきましょうよ」

 

 あんまり過激なこと言うから、俺はもうとりあえず落ち着かせようとおもむろに光り始めた。

 いつものシャイニングリラクゼーション効果のある光だ。それも気持ち、いつもより強めに輝いております。

 

 プリプリとか超えてビキビキキテる神谷さんも、いきなり発光しだした怪生物山形くんを見て驚いたものの、すぐに鎮静効果で落ち着きを取り戻したようだ。

 真っ赤になっていた顔も平時に戻り、ふう、と息を吐く。

 

「重ねてすみません、山形さん。ええ、もう大丈夫です。この話し合いが終わったら少し、ここから離れたところから成り行きを見させてもらいますね。今の私では、間違いなく足手纏いになる」

「そうだな……この間のこともある。正義感が強く信念に沿って進む姿は好ましいが、それで暴走するなら悪いが下がっていてくれ。お前の分まで、我々が戦おう」

「はい。ありがとうございます、ヴァールさん」

 

 良かった……本気で落ち着いてくれたみたいだ。光るのを収める。こういう時にはやっぱ便利っちゃ便利なんだよなー、この光。

 周囲の人達には、急にシャイニングしだしたってことで驚きと好奇の目で見られるけど知ったこっちゃない。開き直ってるよもう!

 

 まあ、隣で香苗さんが例によって例のごとく興奮しだしちゃって、ものすごい勢いでメモを取り始めてるからそこはアンジェさんとランレイさんが苦笑いしているけども。

 うちの伝道師がお手数おかけしてます……

 

「香苗……アンタねえ、もうじきここ戦場になるかもなんだけどそのへん分かってる?」

「分かっています! 分かっていますがメモくらいは許してくださいアンジェリーナ! 本当ならこの場でハープを用いた大伝道大会を開きたいほどなのですよ、あの寮の中にいる不心得者さえ巻き込んで!!」

「し、しかし今は間違いなく仕事の場面なのだが、香苗さん……!? 見るからに小説さながらの記述をしているが、せめて走り書きに抑えるべきではないだろうか!」

「くうっ、紛うことなき正論……! しかし、しかしかつての聖女をその御威光によって宥め鎮めた今の姿はまさしく救世主神話伝説! 私にはこれを正確にメモして後世に伝える義務があるのです……!!」

「えぇ……?」

 

 なんてこった、仕事と使命に板挟みになっている。焦りながらペンを躍らせるとか結構珍しい姿だぞ、今の香苗さん。

 まあ、別に今すぐことが動きそうな気配もないんだしそこはメリハリつければいいと思うんだけど。ミュトスやシャーリヒッタも、興味津々でメモを覗き込んでいるしさ。

 

 ただこめかみに手を当ててため息を吐くヴァールには申しわけない、ホント申しわけない。

 ちょっとフォローがてら、彼女の隣に立って二人、俺達は件の施設に視線を投げた。




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