攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
「どうだろうな、実際のところ。大人しく投降してくれると思うか?」
「ないな、間違いなく」
横並んで施設を見ながらの会話。一縷の望みをも抱いての俺の問いかけに、しかしヴァールは一言で切って捨てた。
抑揚のない平坦な、いつもと変わらない無表情と声だ。あまりにも当たり前のことを当然のこととして答えるように、彼女はこれからこの場所が鉄火場になることを示唆していく。
「認定式の日。あのタイミングで実のところサークルは幹部陣がまったく出張ってきていなかった。悪魔どもとの話し合いの中で分かったことだが、そこから伺い知れることがある」
「……サークルはまったく本気じゃなかった。少なくとも適当な人員以上のものは割いてこなかったんだな。精々が瀬川くらいで」
「うむ。元よりダンジョン聖教騎士団だった過激派構成員はともかく、あの日敵対したサークル構成員の質が極端に劣悪だったことからもそれは伺える。上空で、モンスターの上で酒盛りなどしている連中だったそうだな」
「あれなあ……さすがに酷かったわ。いくらなんでも」
言われて思い返す、認定式の日に見たサークル構成員達。三体目のウーロゴスを喚び出した連中なんだが、とにかく態度から見た目から言動から何から何まで酷かった。
モンスターの背中に乗って酒盛りして、テロに応戦する地上の探査者達を見てゲラゲラ嗤っていたのだ。まるで花見か何かの宴会で、余興を見ながら楽しむように。
あの姿は、はっきり言って不快だった。俺個人への誹謗中傷なんかよりよほど醜くて情けなく感じたところはある。
まあ、取り押さえるのにさほど手間がかからなかったからそれは良かったんだけどね。ともかくそんな連中が投入されていたことを思い出せば、あの時のサークルがまったく本気でなかったこともうなずけるんだよね。
そもそも幹部が瀬川以外、来てなかったみたいだし。
藤近か海方のどちらか、あるいはその両方が姿を現さなかった以上、認定式それそのものはサークルにとって正念場じゃなかったんだと見なすしかないのだ。
嘆息してヴァールがぼやく。
「何がしたいのだ、やつらは……社会や国家の転覆を謀る割に、格好の機会であろう認定式には雑魚を大量に投入するだけで。悪魔セーレの証言からすると、そもそも勝ち目がないことを承知の上ですらあるようだが」
「ウーロゴスは過激派側の手札にせよ、AMWも持ち込まず瀬川が実質の現場責任者みたいな感じだったな。その後にいくつか乗り込んだ拠点も、遊んでばかりの構成員ばかりだったし」
「本命の目的のために切札を温存しているのかもしれんが、そんなことをしているうちにこの通りの包囲網だ。狙ってやっているのかそうでないのかまるで分からん、その場しのぎの適当でやっているようにしか思えないのだ。あなたはどう思う?」
「ん……そうだなあ」
サークルの真意とか目的とか、そのへんを俺に聞かれてもって感じはするんだけど、他ならぬこの子からの質問なんだ、どうにか答えるしかないよね。
というわけで少し考える。後ろでは未だに香苗さん達があーだこーだ伝道だ使徒だ騒いでいて楽しそうだ。なんだかんだ香苗さんとアンジェさん、息合ってるよなあ。
……と、これまでを振り返って一つ、思ったところを述べる。
「思うんだけどさ。サークルってもしかして、本当にサークルなんじゃないかなって」
「……ふむ? 組織名としてのものでなく、原義的な、同好会であったりコミュニティとしてのサークルと言う意味か、後者は」
「そうそう。そんなだから理想を掲げて動く者もいればそうでない者もいるし、瀬川みたいに悪魔の力を借りてるようなのもいればモンスターに乗って酒盛りしたり、アジトでひたすらゲームしてるようなのもいる。そういう、ゆるいコミュニティなんじゃないかなって今、ふと思った」
サークル構成員の少なくない連中のノリを見ていると、これがなんていうかものの見事に軽いわけで。
そもそも、カレッジサーチャーズから派生した組織だってことを含めて考えると、ガチガチのテロ組織ってよりはノリと雰囲気重視のエンジョイパリピ団体のほうが本質なんじゃないかって考えるほうがしっくり来るんだよね。
カレチャでたくさん楽しい思いをして、そうして大学を卒業した後……社会に出てからも同じような集まりで楽しくやっていきたい。なんて、本来サークルはそんな感じで構築されたんじゃないかな。
それがどうしたことか委員会に目をつけられ、悪魔を通してその性質が変質させていった。やつらの言いなりになって大ダンジョン時代をひっくり返そうとする、武装組織に変貌していったんだ。
社会転覆の色に染まっていく中枢メンバーと、それに従うけど意識が追いついてない末端構成員。
サークルにつきまとう二面性は、あるいはそういうことなのかも知れない。
「心底から大ダンジョン時代を壊したいサークルの中核と、とにかく楽しめればそれで良い、カレチャの頃みたいにみんなで騒ぎたいだけの末端構成員。なんて……結構推測ばっかりで飛躍しまくってるんだけどさ、なんとなくそんなことを思っちゃったんだ」
「なるほど……であれば微妙にやる気がないというか、行動にチグハグさが見えるのも分からなくはない。あくまで仮説なのだがそれを踏まえるとして、サークルの構成員の多くは大ダンジョン時代をどうこうするという目的さえ、単なるごっこ遊びとして捉えているのかもしれないな」
本質が歪められていることに気づかずに、あるいは目を逸らして以前同様に楽しくて緩い活動を行いたい構成員達と。そんな彼らを、上手く手駒にして扱う歪んでしまった幹部陣と。
やつらの組織としての変遷を考えると、ある種のねじれ状態が発生しているんじゃないかと俺には思えてくる。
サークルの正体……セーレ曰くの、負けると分かっていてなお走り抜けようとする者達の、本質。
今見ている施設の中に藤近や海方がいるのであれば、今日にでもその真実に触れられるのだろうか。
────その時、アパートの玄関が開く。
閉ざされたドアから何人かが外に出てきたのだ。俺達は瞬時に、いつでも戦闘に移れるよう身構えた。
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