攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
現れたサークル幹事長、藤近功によるソフィア・チェーホワへの批判、非難。
時代を停滞させている元凶としての糾弾と、今の自分達でなくともその意志を継いだ何者かが必ずやそれを打破するだろうという、ある種の予言。
面と向かって罵倒されたに等しいもので、いきなり何をふざけたこと言ってるんだこいつは、としかならないのが本音のところだ。
とはいえ、直球で言われたからにはヴァールも多少、気にしてしまうところはあるかも知れない。この子は、ソフィアさんもだけど優しい子だからね。
そう思って彼女を見たところ、予想に反したリアクションが返ってきていた。
まったく揺るぎない、冷めきった表情でサークルを見据えていたのである。
「なるほど、そういう手合か。久々だな、真正面から言われるのも」
「ヴァール、あんなの気にするなよ。分かってるとは思うけど、今ある状況についてお前とソフィアさんは立派に使命を果たしてくれたんだ。誰かに何かを言われたとして、それは本来俺やワールドプロセッサに向けられるべきものなんだからな」
「ん? ああ……気にしないでくれ、ワタシもソフィアも大丈夫だ」
俺の心配に、ヴァールは軽く首を傾げてから何か、納得したようにうなずき応えた。
特に動揺とかないみたいでそこは何よりだけど、思っていた以上に落ち着き払っているな。いやまあ、この子も精霊知能なんだし何より人生経験豊富だ。この手の誹謗中傷を受けてきたことだってあるのかも知れない。
と、思っていたら本当にそうだったみたいだ。
苦笑いして彼女は、俺を見て皮肉めいた口調で話し始める。
「この100年、ああいうことを言われるのは腐る程あったから、さすがに慣れている。理屈は分からなくもないが、こちらもこちらで必死だったのだから悪いが気にもしていないさ」
「そ、そうか……大変だったな、今まで。ごめんな、ありがとう」
「何を言う、ワタシはワタシのやるべきことをしただけだよ……とはいえ、あの手のいわゆる"統括理事世界支配論"とでも言うべき陰謀論を直接主張されるのも久しぶりだな。何十年ぶりだ?」
「そんなに」
怖ぁ……陰謀論でぶっ叩かれてるのか、何十年も前から。ネットのアングラな掲示板じゃあるまいしそういうのよくないんじゃないかなあ、ホント。
まあ、ヴァールも言ってるけど理屈は分からなくもないってか見方を変えるとそれはそうと言えるんだけどね。
目的や真意がどうであれ、大ダンジョン時代を構築したのはソフィアさんとヴァールなのは揺るぎない事実だ。
100年前に突如、世界中で現れたダンジョンと能力者。それにまつわる国際組織や秩序の構築が急務だったこともあり、先駆けてその部分を担おうとした彼女達はわずか10年でWSOを設立するという快進撃を成し遂げた。
そもそもそれ自体がシステム側による計画的なものであるところからして、割と真に迫った論ではあるんだけれど……それを今、目の前で主張している犯罪組織のボスが把握しているわけもなく。
つまりはWSO統括理事が世界を支配し時代を停滞させている、なんてのは完全に当てずっぽうで言ってるだけなんだよね。
「完全にデタラメ、とも言い切れんのがなんともな。ワタシ達の統括理事としての在り方はあるいは強権的であろうし、支配的、独裁的ですらあるだろう。アレの言うように、いつか必ず終わりの時が来るべきものだ」
「……そもそも、もう事実上終わってるしな。大ダンジョン時代」
「"ワタシ達側"の認識としてはな。だが現世では今しばらく続くだろうし続けていかねばならない。何ごともそうだが、変化というものは一朝一夕ではないからな」
「ヴァール……」
自分達が成し遂げたこと、作り上げた社会。それを指して"いつかはなくならなければならないもの、否定されなければならないもの"と語る。
どんな気持ちなんだろうな。使命のために戦い続けて、その果てに否定されることさえ受け入れて消えることを望むなんて。
並大抵の覚悟じゃないと到れない境地だろう。
その姿に、WSO統括理事としての揺るぎない信念を感じるよ。そして凛として振る舞うヴァールを、俺は……私は心の底から誇りに思う。
シャーリヒッタも同意見のようだった。ヴァールの頭に手を置き、撫で擦りながら笑ったのだ。
「偉いぜ、ヴァール……さすがは父様の娘、オレの妹だ」
「ナチュラルに脳内設定を基準に話さないでくれるか、あと頭を撫でるな。これから戦闘に入るのだぞ、いつまでも気の抜けたことを言うなよ」
「分かってるって! お前がこんなに覚悟を見せてんだ、オレもきっちりそいつに応えねえとなァ!!」
大笑しつつもスキルを発動して鎌を顕現させるシャーリヒッタ。周囲もすでに武器を構えて待ち構えており、もはや一触即発の状態だ。
ソフィア・チェーホワと大ダンジョン時代を否定せんとするサークル。その主張自体は一理あるものなのだろうけど、だからといって今、ここでこれ以上の好き放題は許すわけにいかない。
藤近、海方、瀬川を見る。
向こうももはや、一切退く気はない構えだ。
「ふははははははッ!! よっしゃ一丁やってやろうか陸、聡太ァ!!」
「フッ……こんな時でも余裕だな、功さんよ」
「当然だろう? これを楽しまずしてなんとする! なあ聡太、お前も楽しめよ!」
ことここに至ってなお、状況を理解しているのかいないのか……まったく楽しそうに笑う藤近と、クールに笑ってニヒルに振る舞う海方と、そして。
「山形……公平……ッ!!」
「瀬川聡太……」
「返してもらうぞ、僕のセーレさんを……!! たとえお前を今から、八つ裂きにしてでもッ!!」
俺に対して憎悪を吐き出す、瀬川と。
アパート内のサークル構成員達までもが武装して身構える中、いよいよ戦闘は始まろうとしていた────
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