攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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あっ瀬川の脳が破壊されたッ

「シャイニング山形……山形公平ッ!! セーレさんはどこだ、彼女を解放しろっ!!」

 

 怖ぁ……開口一番それかよと、俺は内心でドン引きしつつ瀬川を見た。

 もはやセーレのことしか頭にないって感じで、両手にした大鋏を俺に向けてすっかり殺意満々だよ。隣の藤近でさえ肩をすくめて苦笑いしているあたり、完全に視野狭窄に陥っているな。

 

 少なくとも俺にとっては都合がいいことだ。見境をなくせばなくすほど隙が大きくなるし、冷静さも欠くからね。

 興奮した様子の瀬川へ、あえて冷淡に話しかける。

 

「やけに執着するな、瀬川聡太。そんなにセーレと仲が良かったのか?」

「そんなことがお前に関係あるものかッ! 返せ! 僕のセーレさんをッ!!」

「……だ、そうだが。セーレ、何か言うことでもあるか? 少しくらいなら誓いにも抵触しないとは思うぞ。肩入れしたら当然ペナルティ食らうけどな」

『…………それは。彼と言葉を交わさせてもらえるのであれば、ありがたいところではあります。我が新しき契約者』

 

 俺の言葉に、透明だったセーレが半透明になり瀬川の目に触れるようにもなって、それでも俺に侍るように寄り添った。いや近くない?

 若干困惑しつつも、瀬川にとって相当大事らしい悪魔に目を向ける。

 

 ほんの一言二言くらいのやり取りでは、先に交わした誓いにも抵触はすまい。

 さすがにああまで求め訴えてくるのにノーリアクションを貫かせるのもなんだかなと思うし……セーレもちょっとは言いたいこともあるだろうし、くれぐれも肩入れするなよと釘を差しつつも発言を許したんだけど。

 

 なーんか、嫌な予感がするぞ? 薄く微笑むセーレに、ちょっぴり背筋が寒くなる俺ちゃんだ。

 一方で現れた悪魔セーレを見て、喜色満面になる瀬川。どうも執着が過ぎるな……かつての青樹さんみたいだ。ますます強くなる嫌な予感。

 

 俺はセーレに視線と小声で促した。

 軽く礼を述べてから、彼女が瀬川に話しかける。

 

『久しぶりですね……聡太』

「セーレさん! ご無事でしたか、待っていてください! 今からそいつを殺してあなたをっ!!」

『止めてください、迷惑です』

「っ!?」

 

 愛しのセーレを確認できたことで一気に吹き上がる瀬川に、他ならぬセーレが冷水を頭からかけた。バッサリと一言で切って捨てた彼女に、瀬川が愕然と目を見開く。

 まあ、驚くだろう……こいつが青樹さんと同じタイプなら、結局自分の理想のセーレを求めているようなものだろうし。虚構の彼女は取り戻すと言われればまさしく悲劇のヒロインぶった返事の一つも返したんだろう。

 

 だが、現実は違う。

 瀬川は勇敢なヒーローでもなければ、愛しい人を救い出すムービースターでもなんでもない。ただの悪魔に魅入られたテロリストだ。

 そしてその悪魔はもう、こいつの元には戻らない。

 

 まあ、力尽きるまで頑張るところが見てみたいとか抜かす普通にヤベーやつだし。こんな悪魔とは縁切ったほうが全然良いと俺は思うんだけどさ。そこは個人の好き好きだし、なんとも言わんけど。

 これまで接触した悪魔の中でも抜きん出て悪魔らしいセーレは、そんな俺の内心も露知らずに瀬川へとさらに続けて告げた。

 

「せ、セーレさん……!?」

『あなたとの契約は依然成立していますが、私は新たにこちらの山形公平とも契約を結びました。今後一切、あなた方と関わりを持たないという内容の契約です』

「な、あ!?」

『分かりますか? 今や私にとっての契約者とはこちらの山形公平です。聡太、あなたに授けた権能は有効ですがそれはそれとして私自身はこの御方に仕える奴隷なのですよ』

「…………えっ。いやおい、奴隷はそれ言い過ぎ」

『生殺与奪の一切を委ねていますから、あながち言い過ぎでもないでしょう? ふふ』

 

 えぇ……? ニコニコ笑顔でとんでもないことを言い出すセーレに唖然とする。こいつ、死ぬほど外聞の悪いことを平然と言い放ったぞ!

 ていうかふざけた焚き付け方すんなよこいつ、瀬川の顔がさらなる憤怒と憎悪、殺意に染まってもうグチャグチャになってるよ!?

 

 セーレめ、まさかせめてもの意趣返しか? たしかに今の言葉にはどこにも瀬川に肩入れしてない、完全なる訣別だったんだけど表現の仕方最悪だこれ。あと俺の印象最悪だこれ!

 慌てて俺は、彼女の言を否定した。

 

「ど、奴隷は人聞きが悪すぎる……! 誓ってセーレの尊厳を踏み躙るようなことはしてないよ! ただ、委員会やサークルと関わるなって契約はたしかに結んだけどな。それがある以上、彼女がお前の元には間違いなく帰ることはないさ」

「セーレさんを、よくも……! よくも、よくも!! 彼女を縛り付けて、何が踏み躙るようなことはしていないだ!! ふざけるな山形公平、殺してやる……殺してやるッ!!」

「わあ、聞く耳持ってくれない。お前何してくれてんだ、セーレ!」

『これも聡太が走り抜けるためです。どうかご容赦を、我が契約者』

 

 盛大に脳が破壊されちゃったらしく、もはやこの場で刺し違えてでもって感じになってる瀬川。怖ぁ……

 完全に我を失っている以上、損得勘定で動く冷静さはないから付け入る隙だらけなんだけど、それにしたってキレすぎである。

 

 セーレも、俺の抗議にもしれっとした顔で素知らぬフリだし。つくづくいい性格してるよな、まったく!

 ことが終われば即刻、概念領域に突き返してやろうと心に決めたよ今。いろいろ危険すぎるわこいつ、下手に野放しにしてたら何しでかすかマジで分からん。

 

「瀬川のやつ、なんかもう頭おかしくなってねえか」

『あいつ怖いね。私の千尋に近づかないでほしいかも』

 

 神奈川さんとステラもブチギレ瀬川にはドン引きというか、呆れ返った冷ややかさで眺めている。

 結局悲劇のヒーローみたいな面してるのは変わらんし、残念ながら当然かもね。

 

 仔細はどうあれ、まあ瀬川は弱体化したかな? 感情的になればなるほど視野は狭まり、やつの動きは直情的になるだろうからね。

 まったく意図してなかったけど、ハッキリと誤解なんだけどもこれはこれでオーライ、としておくべきだろうか。悩むラインだ。

 

「聡太ァッ!! 頭ァ冷やさんかい、バカモンッ!!」

「っ、うぐっ!?」

 

 ────そう、思っていたんだけれど。

 

 ただ一人、藤近だけは満面の笑みのまま、冷静に行動を起こしていた。

 岩のような握り拳をもって瀬川の頬を打ち抜き、やつを殴り倒したのだ。




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