攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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大将は大将同士、戦闘要員は戦闘要員同士やり合うんだよ!

 突然瀬川を殴りつけた藤近に、俺は瞬間的にこの男への評価を数段階上げた。

 冷静に、瀬川の視野狭窄を踏まえた上で即座に頭を冷やすよう促す判断力……豪放磊落な男だがその実、シビアなものの見方や考え方をしていると察したのだ。

 

「ぐ、ぅ……!? な、にを、功さん……!?」

「…………」

「功さん……ッ!!」

 

 殴り飛ばされた瀬川はしかし、体勢は崩さずに堪える。

 結構な勢いと威力だったように思うんだけどな、今の。藤近からも悪魔憑きらしい気配が漂うから、それなりに強化されたパンチだったはずだ。

 

 それをまともに受けてなお、瀬川は踏ん張った。そして唖然とした顔で藤近を睨みつけ、けれどすぐに言葉を失う。

 じっとやつを見つめるその目に、その顔に圧倒されたようだった……俺から見ても分かるよ。藤近から、有無を言わせない威厳と風格の圧が放たれている。

 

 頭を冷やせ、と。そう言いたげな表情に、頭に血が上っていた瀬川が冷静さを取り戻すのを確認する。

 悔しげに唇を噛み、やつはサークルのリーダーへと謝罪した。

 

「すみ、ません。我を失っていました。あんな程度の低い、挑発なんかに」

「いや、敵ながら見事というべきだぜ聡太よ。どうしてそうなったかは知らんが、セーレを実に効果的に利用した手口だ! シャイニング山形は戦闘力のみならず智謀もいける口らしいな、ふははははっ!! ──呑まれてはいかんぞ。俺達は最後まで、俺達のままやり遂げようって決めたじゃないか。なあ」

「はい!! それが、僕らの生き様でした。たとえ、間違っていたとしても」

「いや、別にこっちも意図してないんだけどな…………とはいえ、ふむ」

 

 すっかり落ち着いた瀬川を笑顔で宥めつつ、視線は鋭く俺を見据える藤近功。ものすごく誤解されてるが、それどころではないと俺は今のやり取りから得たものを読み解く。

 サークル幹事長……思っていた以上に質が悪いな。悪のカリスマとでも言うべきだろうか、下手に大物な分危険性が桁違いだ。

 

 間違いなく、人の上に立つだけの器を持つ男なんだろう。だからこそ徒党を組んで犯罪に手を染めている今、その危険性は計り知れないものがある。

 しかも悪魔憑きですらあるんだ。ある種、異様な相手を前に俺も神奈川さんもステラも、改めて気を引き締めて向き直っていった。

 

 横並ぶ俺達。

 聖剣を構える神奈川さんが、小声で俺に呼びかけた。

 

「山形さん。瀬川の野郎は俺が食い止めるから、あんたは藤近を頼む」

「……バリアのことを考えると、瀬川こそ俺が相手したほうが良いと思うんですが。っていうか両方まとめて捕縛くらいしますよ、俺一人でも」

「あんたはヴァールさんと並んで事実上の大将だ。無敵くらいしか取り柄のない、鉄砲玉の瀬川なんぞにかまけてちゃいけない。やるなら大将同士だ、藤近の野郎からなんぞ聞き出すのにも、学のない俺じゃ不足だろうしな」

「神奈川さん……」

 

 思った以上に大局的な見地からの提案。俺が大将かって話は置いておくにしても、なるほどたしかに瀬川自身は単に戦闘力があるだけの構成員に過ぎない。

 サークルの中核としていろいろ知っていて然るべき藤近に比べても、情報面ではなんら期待できそうにない相手だ。

 

 だからこそ同じく戦闘要員である自分が受け持つ、と告げる神奈川さんに俺は感心する。明らかに視野が広く、今この時この局面ばかりでなくその後のことまで考えているのが分かるからだ。

 つくづく頼れる人を選んだんだな、ステラ。人を見る目を持っていてくれた、透明のままの精霊知能をちらと見る。

 彼女もまた、決意した様子で俺に言ってきた。

 

『瀬川の相手は任せてください、山形様……私と千尋で、せめてAMWくらいは破壊します』

「……分かった。神奈川さんもだけどステラ、絶対に無茶しないように。場合によってはこないだ同様、俺がサポートするから」

「ありがたいぜ、山形さん。そんじゃお互い、自分らにできることをやれるだけやってみようかね……!!」

 

 乱戦があちらこちらで起きている戦場の中、俺達の方針も決まった。俺は自然体で、神奈川さんは聖剣を構えて藤近、瀬川に向き直る。

 対する敵も冷静さを取り戻し、武器を構えていた。両方とも俺しか見えてない様子だが、悪いが俺は瀬川には用がない。

 

 さて、やるか。

 俺は一息に距離を詰めた。いきなりトップスピードで、藤近のすぐ前に移動する。

 

「ぬうっ!? な、にをっ!!」

「藤近功。俺はお前とも瀬川とも戦うつもりはない。能力者犯罪捜査官じゃないし、そもそも人を殴るために探査者やってるわけじゃないからな」

「きっ……貴様、山形ァッ!!」

 

 30mくらい離れていたのが、瞬きするより早く次の瞬間には目の前にいるんだ。驚かないほうがおかしいわな。

 硬直する藤近はともかく瀬川はさすが戦闘要員、即座に反応して大鋏型AMW、ルートディバイダーを俺に向けて振るってくる。まあ振るうっていうか挟んで斬るために押し込んでくる、のほうが近いけど。

 

 ていうか普通にエグいな、この武器。怖ぁ……

 わざわざ鋏型にしたウラノスの趣味に若干引くものを覚えつつも、俺は迫る鋏の接合部分を右手人差し指と親指で挟み、ピタリと止めた。

 

 悪魔憑きの瀬川の膂力でも敵わないのがレベル4桁の探査者だ。しかも《誰もが安らげる明日のために》も発動させてある。

 その倍率は100倍。悪魔の力を借りているだけの連中に、どうこうできるはずもない出力だった。

 

「!? くっ、う……!! 馬鹿な、押せない、挟めないッ!?」

「俺の相手してる場合じゃないだろ、瀬川聡太」

「何を────」

「瀬川ァッ!! いい加減決着つけようぜ、なあッ!!」

 

 この時点で俺相手だとどうにもならないことを悟ってもおかしくないんだけど、やはりセーレへの執着はそれだけ強いということだろう。

 ルートディバイダーで、どうにかして俺に攻撃しようとする瀬川だが、俺の忠告とほぼ同時に動いた神奈川さんに反応してすぐさま鋏を引っ込めた。

 そのまま向き直り、聖剣とルートディバイダーが激突する!

 

「っ、神奈川ッ!! いつまでも邪魔するな、お前えっ!!」

「邪魔はテメェらなんだよッ!! テロリストが、調子づいてんじゃねぇぇっ!!」

 

 互いに叫ぶ二人の、武器が火花を散らしてぶつかり合う。

 本格的な戦闘が始まった……瀬川は神奈川さんとステラに任せよう。

 俺は気を取り直して、藤近功に向き直った。




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