攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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悪魔が来りて不意を突く

「一対一だ、藤近功。さっき言った通り俺からはお前に危害は加えないけど、それでも捕らえることはできる。大人しく降参するのを勧めるよ」

「っ……そいつは無理な相談ってもんだなぁ! 俺とて腹を括ってるのだ、シャイニング山形!!」

 

 瀬川を神奈川さんが受け持ってくれて、ついに対面する俺と藤近。あくまで自然体、構えることさえしてない俺だけど圧は相応に放っている。

 常人ならば魂ごと気圧されて、一も二もなく降参するくらいの圧力だ。けれど藤近はそれを受けてなお、冷や汗を垂らすくらいに留まり傲然と笑い飛ばしていた。

 

 悪魔の権能による防護が多少、あるのはあるにせよ……藤近自身の格というか、魂と精神の強靭さがすさまじいな、これは。

 瀬川といい、サークルでなければ。悪の道を歩んでさえいなければ、あるいは敬意をも抱けていただろうに惜しい話だ。まったく、こんな傑物がどうしてここまでやってしまうかね。

 

「……いや。傑物だからこそか? 藤近、お前結局何がしたいんだ」

「それを、聞いてどうする? 少なくとも逃がす気だけはないんだろう」

「当たり前だ、今さら逃げられると思うな。ただそれはそれとしてお前達サークルの動機がいまいち理解できないからさ。思わず尋ねただけだよ……ま、これは捕まえてからの警察に任せることか」

 

 つい尋ねてしまって訝しがられたけど、まあ極端な話どうでもいいんだよな、経緯や理由なんて。

 こいつらはどんな動機があれテロリストだ。人々の生活を脅かし、今ある社会基盤を破壊させようとした恐るべき連中だ。

 そんなのの事情を一々聞いて、わざわざ斟酌してやる気にはならない。少なくとも今はね。

 

 サークルが壊滅して、主要メンバーが捕まって。その後、取り調べでいろいろ明るみになって。

 いろいろと想いを馳せるのはそれからでも遅くはないだろう。このタイミングでああだこうだと聞き取るつもりはなかった。

 

 藤近がノイエヴァルキリーを構えた。たしか……《俊足》だったか。スキルの力が封入され増幅されたAMWを用いて、やつが不意に仕掛けてくる。

 至近距離から斬り付けてきたのだ。実際かなりの速度と気迫、威力が込められている剣で、足取りや重心の動きが滑らかなことからなんらかの剣技、剣術を修めているのが分かる。

 

 そこに悪魔憑きとしての身体能力も加味すればなるほど、瀬川ほどじゃないにせよ、C級探査者くらいの実力にはなっているように思える。

 書類上での俺が相手だと、どうにか食らいつけそうかもってところか。まあ実際には、それどころじゃない差が歴然としてあるわけどな。

 

「ちぇぃりゃああああああっ!! ────っ、ぁ?」

「よっと……速いし強いな。もったいない、こんな力をそんなことにしか使わないなんて」

 

 というわけで超速度での刃を止める。素手で、さっきみたく親指と人差し指でこう、つまむようにね。

 それだけでピタリと止まる藤近。どんなに力を込めて押しても引いても身動きが取れず、プルプルと震えるばかりだ。

 

 それでもノイエヴァルキリーを手放さないのを、果たして見事と言うべきか無駄な足掻きと言うべきか。

 無言でじっとやつを見つめる。藤近は、苦笑いとも失笑ともつかない力ない笑みを浮かべた。

 

「…………くく、マジかよ。渾身の一撃だぞ、これ」

「悪魔との契約だけじゃない、きちんとした技術と鍛錬、努力が見て取れる斬撃だった。あのさ、もう一度だけ言いたいんだけど何やってるんだ。何がしたいんだ? ここまでできるのにやることが、ソフィアさんに喧嘩を売って世の中に迷惑をかけることだけなのか」

「ふっ……小僧めが、知った口を利くなァッ!!」

 

 俺の言葉に、多少は心を乱されたのだろうか。鼻で笑いつつ、明らかに苛立った様子で蹴りを入れてくる。

 これも明らかに戦闘慣れした……いや、喧嘩慣れした動きだ。まあ避けるまでもないけど。俺はつまんだままのノイエヴァルキリーごと、藤近の身体を持ち上げた。

 

 ぐんぐん持ち上がる剣と、それにしがみつく巨漢。

 結構な重さだが今の俺には綿菓子同然だ、離さなければいつまでもこの体勢が続くものと思うが良い、藤近功。

 

「おっ!? おっ、おっ! お、おいおい……化物かよっ!?」

「探査者相手にしてるんだ、こうされるくらいは予想しておくべきだったんじゃないか? ……まあ、もう遅いけど」

「何を、まさか……!?」

 

 とりあえずAMWは没収だ、ここまでやればさすがに手を離すだろう。そう思ってたんだがこいつ、なかなか離れない。

 ノイエヴァルキリーに半ばしがみつくようにして、俺に持ち上げられて天高く掲げられているのだ。せっかく手にしたおもちゃを、絶対に離すものかという執念からだろうか?

 

 こうなると仕方ないな。ウラノスには悪いけどへし折らせてもらおうか……

 空いた手で手刀を作る。下手に残しておくよりはここで破壊しておいたほうが、これ以上の悪用ができなくなるからどう転んでも都合がいい。

 

「テロ組織には過ぎたものだよ、サークル。手離してもらおう、壊してでもな……!」

「っ!? ────アドラメレークッ!!」

 

 さしものこの男も、ここまでやりたい放題された挙げ句に虎の子のAMWを破壊されそうになれば焦るし助けも呼ぶか。

 アドラメレク。そうやつが叫ぶや否や、俺のすぐ背後に悪魔の気配が現れた。空間転移の権能だな。

 

 

「ごめんねえ。悪いねえ。すまんねえ──死んでもらうねえ」

 

 

 そう、呑気そうな男の声がして。

 俺の背中を、強い衝撃が貫いた。




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