攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
さすがに予想していないタイミングだった。
落とし穴さながらに足下にて発生したワームホールに、ストンと落ちる俺。
「公平くんっ!?」
「山形公平ッ!! くっ──《鎖法》、鉄鎖乱舞!!」
落ち際に、すぐさま反応して叫ぶ香苗さんとヴァールがチラと見えた。特にヴァールは即座に判断して、藤近とアドラメレクに向けてスキルを放っている。
拘束のためだね。俺が戦線離脱することは止められないから、せめて残される形になったあの二人を逃すことはすまいって判断だろう。
助かる。どこに転移させられようがアドラメレクの権能は封印し続けるしスキル《清けき熱の涼やかに、照らす光の影法師》は展開し続けるけど、それはそれとして何かの間違いで逃げられないとも限らないからな。
あの子がそこまで危惧して動いてくれたなら問題ない。俺は俺で、安心してこの事態に向き合えるだろう。
「…………概念領域じゃないな。現世だと?」
落とし穴ならぬ落としワームホールに吸い込まれ、着地した先。普通に物質的な感覚のある足下に、おもわず顔をしかめる。
現世だ。埃っぽい、どこかの廃墟内のようで荒れ果てた空間が広がるのを視認する。放置された木材やパレット、ドラム缶に、壁や天井のあちこちが壊れて穴あきになり、光が差し込んでいる。
てっきり概念領域にでも飛ばされたかと思っていただけに不思議な話だ。それにマグマに直接叩き込むとか、真空空間に放り込むとかでもない。
どちらにせよ俺には通じないけど、そもそもそうした罠でなさそうなのがまず驚きだよ。どういうつもりだ、敵対してるだろうに。
周辺に感じる、気配を踏まえて俺は呼びかけた。
わざわざこんなところにまで俺を連れ込んできた、張本人だろう女の名を。
「出てこいアンドヴァリ──アレクサンドラ・ハイネン! ここまで中途半端な罠を仕掛けておいて、何もなしとは言わせないぞ」
「……当たり前のように気づいてきますねえ。やはりあなたは恐ろしい、シャイニング山形」
物陰から出てくるモノ、一つ。それは認定式の日に見た顔であり、しかし初めて見る姿でもある。
ダンジョン聖教過激派首魁、先代聖女アンドヴァリ。アレクサンドラ・ハイネン……らしきナニモノか。それが姿を見せたのだ。
前に見た時より明らかに大きい。2m近い長身に、アレクサンドラの顔はそのままに頭に角が生えており背中には羽が、腰部からは九つの獣の尾が生えている。
顔と、シャルロットさんが着ている法衣に似たローブ以外はもうほぼほぼ別人と言っていい有り様だ。特に身長が明確に伸びていて、誰がどう見てもただごとじゃないと思わせるに十分な姿だ。
何よりその気配。人間の探査者のものでない、概念存在そのものの気配を漂わせている。
話には聞いていたが本当に"そう"なんだな、こいつ。
「ウーロゴスを取り込んで概念存在になった、とは聞いていたけどいざ実際に見てみるとインパクトがあるな……人間であることを自ら捨てたか、元聖女」
「うふふふ。はい、いかにも。ここにいる私はアレクサンドラ・ハイネンにしてアレクサンドラ・ハイネンに非ず。権能だけの、持ち主不在の神の力を我が物として取り込み変生した、この身は最新最先端の概念存在ですとも」
宙に浮かび、悦に浸った姿で俺を見下ろしうっとり語る。アンドヴァリ、明らかに現状の自分に酔っているみたいだ。
そう、今のやつからはたしかに概念存在たる気配を感じられていた。ウーロゴスに感じたそれとよく似たものだ、あれを取り込んだというのは間違いなさそうだな。
人が概念存在になるパターン。そりゃ人間の長い歴史だ、紐解けばないわけでもないけど大体が遠い昔の話だ。
今、この時代にこんな形で変生するやつが出てくるとも思っていなかった。たしかにウーロゴスは持ち主不在の権能だったが、それを取り込むとはな。
「ふふ……藤近とアドラメレク相手に数多の権能を使ってさぞや消耗しているでしょう? あなたが何者であれ、ああまで力を行使してはいけませんねえ。私のようなモノには垂涎の機会ですのに」
「……見ていたのか、それも権能を使って。最初からお前の目的は、力を使って消耗した後の俺をここに引きずり込むことだと?」
「ええ、まあ。あなたのような厄介者は、疲れさせて孤立させでもしなければ殺せませんから。そのためだけのサークルでしたよ、うふふふ」
場合によっては人間としての魂が汚染され、自我を保っていられなかったかもしれんのによくやる。呆れた思いで俺は、やけに勝ち誇るアンドヴァリを見据える。
大博打に勝ったという自負もあって、ここまでドヤ顔しているのかもしれないな、この女。概念存在めいたモノに成ったことで、気が大きくなっているところもあるんだろう。
────だけど、まあ。
俺からしてみれば、こいつみたいなのは概念存在と言えないんだけどね。
気の毒な彼女へと、言葉を投げる。
「単なる混ざりものに成り下がって、よくそんな顔をしていられるな。いっそ哀れだよ、アンドヴァリ」
「……………………なんですって?」
嘲るわけではないが、憐れむ。そうした俺の言動に、アンドヴァリはあからさまに不愉快そうな表情を浮かべた。
美人の真顔は迫力あるな……でも、憐れなのは本音だ。こいつは自分を成り上がったと言うけれど、俺に言わせればそんなものは成り下がったに他ならない。
人間であることを捨てようとしたところで、概念存在にはなれないんだ。
神の権能を取り込んだって、神の権能を持った概念存在っぽい人間っぽいナニカに成るだけなんだよ。
「人間でもなければ概念存在でもない。じゃあお前は一体何者なんだ? ……可哀想に。誰に何を吹き込まれたか知らないけれど、お前は超えるべきではなかった一線を越えてしまった」
「この私を、こうまでなった私に、そのような口を……!」
「今いるその場所はもう、不可逆の立ち位置だぞ。アレクサンドラ・ハイネン……この世のどんなものより、無惨なモノ」
中途半端なナニカになったこいつは、正真正銘ひとりぼっちだ。
戻ることはできない。これ以上進むこともできない袋小路に自ら突き進んでしまったんだ……
それが、どうしても俺には哀しいものにしか見えなかった。
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