攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
「子供が、命乞い代わりに長話と説教ごっこを垂れているだけですか。みっともなくベソまでかいて、よくやりますねえ」
越えてはいけないラインを越えて、辿り着いてはならない領域に辿り着いてしまった女、聖女アンドヴァリ。
けれど彼女は俺の言葉に一切耳を傾けず、ただ嘲笑を向けてくるばかりだ……無理もない。今は手にした力に酔いしれていてもおかしくないだろうしな。
そもそも永遠に存在し続けることの酷さを、人はなかなか理解しきれないとは思う。実感できた時にはもう、絶望の只中にいるってことも容易に想像がつく。
早期に気付ける人がいるなら、その人はよほど聡明な人だ。少なくともこうなる前にブレーキをかけられるだろうしね。
結局、今、こうしてこうなってしまったアンドヴァリが目の前にいること。それそのものが……
このモノの哀しさを、憐れさを何よりも雄弁に物語ってしまっていた。
「…………あんたは。いや、今ならまだどうにかできるかもしれない。今この段階なら、どうにかあんたからウーロゴスを引き剥がすことも俺ならできるはずだ」
「ああ、結局そういうことですか。あなたごときちっぽけな子供にそんなことができるかはさておき、こちらの油断を引き付けて無力化したい、と。つくづく馬鹿にしますねえ。この私、神となりしアンドヴァリ。すなわちプレーローマ・アンドヴァリに向かって」
「……プレーローマ・アンドヴァリ?」
「そうですとも! 何を下らない寝言をほざいているのか知りませんが、これが、これこそが私の望んでいた夢、理想っ!!」
羽根を広げ、ワームホールを周囲に展開するアンドヴァリ。いや、本人の言を借りればプレーローマ・アンドヴァリか。
10箇所近く展開されたその穴は、すべて俺の周囲へと繋がっている……仕掛けてくるか、やっぱり。
やつの背中から、まるで百足のような触手が無数に飛び出た。そのままワームホールに向かい、そして俺に差し向けられる。
翼、角、尾に加えて虫めいた触手。あまりにも取ってつけたようなツギハギは、単純におぞましいモノに思える。
これが、こんなものが望んでいた夢や理想だと。
その真意がどこにあるのか知らないが、ふざけるなと俺は叫んだ。
「こんな馬鹿げた姿で! どんな夢や理想を掲げるつもりなんだ、お前はっ!!」
「なっ────!? 私の攻撃を!?」
驚愕に表情を染め上げるプレーローマ・アンドヴァリ。無理もない、今の攻撃には相当の自信をもっていただろうに、それをすべて弾かれたんだからな。
今。叫びとともに、俺は全身からエネルギーを解放した。《風さえ吹かない荒野を行くよ》を併用しつつの《誰もが安らげる世界のために》。すなわち極限倍率10万倍へと移行したのだ。
そしてこの身に宿る無限にも等しい力を一部、無造作に解き放つ。その圧はもはや物理的衝撃を伴い、ワームホールごと迫る触手を粉砕し、消滅させていた。
今のやつには多少の動揺しかさせられないが、それでも力の差は示せたはずだ。再度、呼びかける。
「効くか、こんなものっ。プレーローマ・アンドヴァリとやら、お前がどれだけ身に宿したウーロゴスを使いこなそうが俺には通じない」
「何をっ……」
「無駄だと言っている。どんな夢だろうが理想だろうが知ったことか、俺はあんたをヒトに戻すぞ。分かりきった地獄に突き進む者を、むざむざ見逃してなんていられないんだ」
「しつこいですね、私の夢をコケにして……ッ!!」
顔を真っ赤にして激怒するプレーローマ・アンドヴァリ。けれど冷静さを欠くことはないようで宙に浮き、俺から多少距離を取る。
逃げの一手を打つかもしれんがそれは許さない。借り物の力で自分から絶望に突き進もうなんて、それだけは断じて認めるわけにはいかないんだ。
対峙する俺とプレーローマ・アンドヴァリ。
悠然と構える俺に対して、やつはもはや一切の余裕なく汗を流し、こちらを警戒している。
ことここに至りついに俺が、思った以上に脅威だということに気づいたみたいだな。できれば慢心している間に決めたかったが、なかなか上手くはいかんか。
さて、どうにかしてやつからウーロゴスを剥がすか……もはや因果のないこいつから、どうにかして権能部分だけを取り除かなければならない。
偽りの神の器と同じで、俺の因果操作は基本的に効き目は薄いだろう。この世に存在するはずのない力を取り込み、この世に存在するはずのないモノになってしまっているからね。
そもそも、アドラメレクの封印に今なおリソースを割いてしまっている以上、これ以上の因果改変は少しばかりリスクが大きすぎるからね。
つまりは外科手術的に、物理的な干渉をもってことを成す必要がある。
「無理矢理剥がすか……おそらく苦痛を伴いはするだろうが、安易に手を出してはならないものに手を出したペナルティとでも思ってほしい」
「そんなことを赦すとでも? 返り討ちにしてあげましょう山形公平。ソフィア・チェーホワを始末する前の、肩慣らしですよ!!」
「やってみろ、できるものならな。それでも俺は、あんたを救うよ」
殺意を剥き出しに吠えるプレーローマ・アンドヴァリに、俺は来るなら来いと返す。
逃げずにいてくれるなら好都合だ、戦いの中、無理矢理にでもウーロゴスを剥がしてみせる。
覚悟とともに一歩踏み出した、その矢先だった。
────今いるこの廃墟へと近づいてくる、探査者の一団を俺は感知した。
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