攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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別働隊、到着!

 誰か来る。それも結構な大人数で。

 まあ現世にいる以上、何かしらの横槍が入る可能性は考えていたけれどちょっとまずいな。プレーローマ・アンドヴァリに付け入る隙を与えてしまうことになるかもしれない。

 

「子供が……!! 何者か知りませんがいい加減に身を弁えなさい、あなたは神を前にしているのですよ!」

 

 激昂する目の前の、神を自称する神モドキはなおもワームホールを展開、触手を俺に差し向けてくる。

 以前には神谷さんを庇う形になったシャルロットさんの、手足を切断した慈悲なき殺傷兵器だが……俺を相手に同じことができるなどと思ってもらっちゃ困る。

 

 俺の周囲に出来上がるワームホール。そこから出てくる触手のすべてを俺は、極限倍率の体をもって真正面から叩き伏せた。

 全身を躍動させ、あらゆる場所から襲い来るソレを瞬時に殴りつけて消滅させたのだ。

 

「遅い」

「っ、この、生意気な子供っ……!!」

 

 さっきみたく放つエネルギーだけでも完封できたが、それじゃ足りないと判断した。

 目の前の女を倒すには、その心を折らなければならない……何をどうしても叶わない、逃げても無駄だから降伏すると思わせるほどに、力の差を示す必要があると考えたんだ。

 

 肉弾戦でも自身の遥か上をいかれたプレーローマ・アンドヴァリ。概念存在に近くなったことで変じたその身体が強張り、端正な顔立ちも醜悪な憎悪に染まる。

 どうでもいいが、ウーロゴスを取り込んだことで肉体的な年齢も若返らせているのか? 10代後半から20代前半くらいに見える。

 

 認定式の日には年相応な感じだったんだけど、どうやら手にした権能を見栄えの良さにも使い込んだみたいだな。

 そういう人間らしさも含めて、やはりお前は神には程遠いと思うんだよ、プレーローマ・アンドヴァリ。

 静かに彼女へと告げる。

 

「あんたのそんな惨めな有り様が、神であってたまるか」

「何を……言いますか、なおも! 私の夢を、未だに鼻で笑う気ですか、山形公平ッ!!」

「その夢ってのがなんなのか分からないんだけどな、どうあれ俺はあんたを笑う気はないよ。ただ、憐れむだけだ……欲に目が眩み、文字通り底もなければ果てもない愚行に手を染めた。そんなあんたは、あまりにも悲しいよ」

「あなたは……ッ!! 人を、馬鹿にしてっ!!」

 

 いよいよ怒り心頭って感じだ、ついにワームホール越しでなく俺に直接殴りかかろうと飛び出してきた。

 そうだ、それで良い。怒りは視野を狭くして、逃げようなんて選択肢を奪う。今のこいつにはもう、一旦退こうなんて考えがほとんどないはずだ。

 

 その隙に俺が叩きのめしてこいつを助ける。

 どうにかしてウーロゴスを剥がし、プレーローマ・アンドヴァリをただのアンドヴァリに戻す。ただの人間、アレクサンドラ・ハイネンへと戻すんだ。

 そして罪を償わせる。そのためにも、逃げてもらっちゃ困るんだよ……!

 

「────見つけたっ! アンドヴァリと、山形さん!?」

「っ……アレクサンドラはともかくなぜ、山形公平までここに。それも戦闘中のように思えますが」

「ハッハッハー、ヴァールさんから今さっき公平さんがワームホールに呑まれたってメールが来てたけど、なるほどそういうことかあ」

「はっはっはー! つまりはアンドヴァリが山形さんを拐ったってことですね! よーし、悪役!」

 

 迎え撃とうとした矢先、廃墟の後方、入口から聞こえるざわめきと雑踏。声から察するに俺の知り合いだ。

 愛知さん、シャルロットさん、エリスさん、葵さん。そしてダンジョン聖教の者達だろう、いくつもの探査者の気配。

 

 こちらはこちらで大所帯だな……来るまでにどうにかして終わらせたかったが、さすがにこの距離この時間じゃ無理か。

 プレーローマ・アンドヴァリもこちらに向かっていたのを、即座に後方へと退いた。進行方向に作ったワームホールを潜り、緊急避難的に後ろに転移したのだ。

 意外に上手く使うな、ワームホール。厄介に思いつつも俺は、後ろの面々に振り向いた。

 

「みなさん! みなさんもアンドヴァリを追っていたんですか!? というかここ、関東なんですね?」

「ハッハッハー、まあねー! 関西でサークルを相手にしてる隙に、アンドヴァリがこっちで動くんじゃないかってシャルロットくんの読みがあったから一応網を張ってたんだよ。ここは首都圏近郊の山奥、かつて資材置き場だったあたりだねー」

「やつのことです、どうせ廃墟あたりを根城にしているのでしょう。そう思っていくつかの場所を重点的に捜索していましたが当たりでしたね……愛知九葉。ここに至るまでの道中の協力、感謝します」

「ふん、構わないさ……今はとにかくアンドヴァリを倒すべきなのは同じだからな。というわけで山形さん、ここからは私達も参戦させてもらうよ」

「助かります!」

 

 なるほど、シャルロットさんの読みは見事に的中していたってわけだ。

 ものの見事にプレーローマ・アンドヴァリの居場所を絞り込み、迅速にここへと現れた。

 

 頼もしいけど……モドキとはいえ概念存在にまでなってしまった今のやつに、どこまで通じるか。

 エリスさんや愛知さんクラスなら問題ないだろうけど、シャルロットさんや葵さん、騎士のみなさんだとちょっとキツイかもしれないね。

 

 いざとなればどうにかしてでも全員、護り切るけど……ここに来て冷静さを取り戻してしまったあの女がどう出るか、それが怖いな。

 静かに向き直る。プレーローマ・アンドヴァリはやはり宙に浮きつつも、静かな、頭を冷やしたような様子で静かに俺達を見下ろしてきていた。




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