攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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アレクサンドラ流ワームホールの使い方(ゲス顔)

 合流した俺達を、静かに見据えるプレーローマ・アンドヴァリ。さっきまですっかり頭に上っていた血も冷めたようで、落ち着き払った様子で宙に浮いている。

 その、異様な姿を以前に見たことがあるのはこの場ではシャルロットさんと愛知さんのみ。他のエリスさんや葵さん、ダンジョン聖教騎士団の面々はみな、異形と化したやつを見て息を呑んでいた。

 

「あれは……あれが、ハイネンくん? 人ならざる力を手にして変貌したとは聞いているけど、まさかここまでだなんて……」

「角に、尻尾に、翼に触手……を、生やした女の子。モンスター娘って感じですね、実在するとあんなんなんですねえ」

「えぇ……?」

 

 かつてヒトだった頃のアレクサンドラとも面識があるエリスさんはともかく、葵さんはあれ見て真っ先に出てくるのがそこなのか……

 いやでもまあ、いわゆるモンスター娘ってたしかに実在するとあんな感じなのかもしれない。個人的には角じゃなくて獣耳のほうが好みだからそっちだと多少反応したかもだけど、それ以前にそこかい! ってなるところはあるよね。

 

 さすがは葵さん、エリスさんと二人でマイペースコンビを組んでるだけはある。なんだか毒気を抜かれる気分だよ。

 逆に騎士団のみなさんはすっかり愕然としている。ついこないまでの聖女がすっかり見てくれ変えてるんだ、そりゃそうもなるよな。

 

「せ、先代様……!? なんということだ、先代様がモンスターに……」

「おお、神よ……」

「何がどうなされたのだ!? どうして、どうしてこのようなお姿に!!」

 

 ただでさえ内ゲバというか、今の聖女と一つ前の聖女が殺し合いさえしようとしているんだ。

 そのうえ先代のほうがモンスターさながらの姿になりました、なんて動揺するなというほうが無理に決まっている。

 

 ざわめく騎士達。けれどそこに、当のプレーローマ・アンドヴァリ……アレクサンドラ・ハイネンが反応した。

 いかにも聖女然とした、楚々とした笑みを浮かべて彼らへと告げたのだ。

 

「お久し振りです、我らがダンジョン聖教騎士団の騎士達よ。私はかつて聖女アンドヴァリと呼ばれた者。そして今はプレーローマ・アンドヴァリ──この世の最も新しい神として成り上がりしモノです」

「ぷ、プレーローマ……!?」

「勤勉にして忠実なる我らが騎士達よ。よくお聞きなさい……そこにいるシャルロット・モリガナは聖女ではありません」

「っ! ──アレクサンドラ・ハイネンッ!!」

 

 悠然と微笑みつつも、投げつけるのは爆弾。聖女としてのシャルロットさんを貶めて、こちらの連携を崩すかのような言葉だ。

 そうはさせるかと、即座にエリスさんが動いた。ナイフを三本、《念動力》で制御しつつやつへと飛ばしたのだ。

 

 人類最強の探査者だろう、エリスさんによる鋭い攻撃。俺もそこに合わせて山形くんビームの一つも放とうかと思ったが、やつがワームホールを使用できるのを考えて一旦、成り行きを見守ることとする。

 これまでの悪辣さからすると、おそらくやつがエリスさんの攻撃に対してどう対処するか、なんて分かりきっていたからだ。

 

 猛烈な勢いでやつへと飛んだナイフ三本。エリスさんの思念で自在に動くそれは、本来ならば対処などできるものではない。

 けれどプレーローマ・アンドヴァリはにやりと笑い、右手を掲げた。同時にナイフの進行方向に展開されるワームホール。

 繋げた先は……! 俺は即座に演算して、ワームホールの繋がった先、タイミングを合わせてスキルを発動した!

 

「《あまねく命の明日のために》! ……やはり狙うか、葵さんを!」

「…………えっ、私!? 今私、狙われてたんですか!?」

「あ、葵!?」

 

 ────そう。葵さんの急所3箇所にめがけて繋がった地点めがけてだ。

 いきなり飛び出してくるナイフを消滅させれば、事態についていけなかった葵さんが数秒遅れて唖然として叫んだ。もちろんエリスさんもだ。今、自分が放ったナイフで弟子を殺しかけたことに気づいて顔を青くしている。

 

 やはり葵さんを狙ったか。そういうの好きそうだもんな、この女。

 認定式の日、シャルロットさんの範囲攻撃から身を守るため、躊躇なく部下を盾にした姿からすでに分かっていことだ……この女は、人を苦しめ痛めつけることになんら痛痒を覚えていない。

 

 合理的で効率的ならなんでもやってのけるだろう。多少なりともの悪意さえ乗せて。

 そういう怖さのある女だから、ワームホールを自在に操るのならこのくらいのことはしてくるだろう確信はあった。

 

 自分の放った攻撃で意図せず身近な人を殺傷させれば、少なくとも二人の心身を傷つけられるものな。最低だけど、やるだけの値打ちがあるならなんのためらいも、良心の呵責もなくやってしまえるんだ。

 プレーローマ・アンドヴァリを見れば嘲りの笑みを俺達へと向けている。あからさまな冷笑。

 

「今の私を止められるとは思わないことですねえ? エリス・モリガナ……今みたくそこの子供が邪魔立てしなければ、あなたはご自慢の弟子をその手で殺していましたよお? うふふふふ!」

「……アレクサンドラッ!! あなたはっ!」

「人がましく怒りますか? 不老存在のあなたが。私の大事なものすべて、踏みにじってきたあなたがそんなふうに言いますか? ────腹立たしいですねえ!」

「な、何……?」

 

 エリスさんの激昂に、けれどやつは怒りをもって返した。大事なものすべてを踏みにじられた……思わぬ告発とともにだ。

 急に出てきたエリスさんへの恨み節に、俺達は顔を見合わせて戸惑うしかなかった。




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