攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
「母は、私が10歳の頃に亡くなりました。流行り病でしたが、逝く間際に私に対して遺言と引き継ぎを行ってから死んでくれましたよ」
「遺言と、引き継ぎ?」
「"愛する父を奪ったエリス・モリガナに復讐しろ"と。そしてそのために私へ、委員会メンバーとしての座を譲ったのです。つまりは私は最初から、委員会の者だったのですよ……神谷先生に教えを請うた日々は、間違いなくダンジョン聖教の信徒だったとしても、ね」
「アレク、サンドラ……!!」
なおも衝撃的な話を続けるプレーローマ・アンドヴァリ──アレクサンドラ・ハイネンもとい火野アレクサンドラ。
父、火野源一は自身の存在を把握さえしないままに行方を去り、母は幼い彼女に復讐の呪いと悪への道筋を示して逝ってしまったのだという。
惨い、話だ。少なくとも委員会に入った経緯は、紛れもなく誘導されてのものじゃないか。
憎悪も憤怒もなくただ、神谷さんに言及する時だけは申しわけなさそうに軽く俯く。師匠として仰いだ神谷さんだけには、そんな顔をするんだな。
実父に捨てられ、実母に呪われ委員会に属した。そんなアレクサンドラにとっては騙していたとはいえ、神谷さんという師匠の存在は本心からありがたいものだったのかもしれない。
そんな人さえ裏切った、悲しい女はなおも語った。
「エリス・モリガナ。ダンジョン聖教初代聖女にして、不老の存在として世界を放浪している伝説的な存在。他ならぬ火野からの情報もあり、私はダンジョン聖教の信徒として組織に入り込み神谷先生の弟子として拾い上げられました。聖女となることで、そこの女に近づけると思ったからです」
「最初から、最後まで……私を狙うためだけに聖女をしていたのか!? 神谷くんとの日々さえ偽りだったと!?」
「信じてもらえないでしょうが、そんなことはありません。委員会に依らず、正しき道で人々に憧憬される日々は素敵なものでした。私も自然と信心豊かになり、人々のために聖女としての務めをまっとうせねばならないと……本気で思っていたのはたしかです」
エリスさんの糾弾に、静かに瞳を閉じて語るアレクサンドラ。そこに偽りの色は見えない……本気で聖女を務めていたのだと、信じてしまえるほどにそこには真剣味だけがあった。
委員会という日陰でない、ダンジョン聖教の聖女として日向で在り続けた日々。そこに彼女は、もしかしたらかけがえのない価値を見出していたのか?
そして、それでも委員会を捨てられない。復讐を諦められないで再び闇の深淵に身を沈めた、のだろうか。嫌な気分になる想像をしてしまうな、いろいろ。
「エリス・モリガナとの接触の機会は聖女となって比較的すぐに訪れました。そしてその時に……母の復讐とはまた別に、私個人としてもエリス・モリガナに思うところが生まれたのは事実です」
「思う、ところ?」
「…………私は、母の復讐とは別に望むところがあって委員会に与しました。通常、叶うはずのない夢と理想を叶えるためにあえて組織に入ったのです」
母の想いとは別に、アレクサンドラ個人のものとしてのエリスさんへの感情。
どうも友好的なものでないのはたしかだけど、ここで夢や理想という言葉が出てくるのに強烈な違和感がある。
復讐の対象を通して、実現したい何かへのヒントを見出したのだろうか。
アレクサンドラはうっとりとした様子で天を仰ぎ、両手を大きく広げる。次の瞬間には何をしでかすかも分からないような輩のやること、一挙手一投足が緊張と不安を孕んでいるよ。
身構える俺達に一切構うことなく、やつは微笑み、なおも語る。
「子供の頃から夢見ていた。"この星が生まれた頃の姿は、果たしてどんなものだったのだろう"。地質学、星の歴史というものに私は、幼い頃から途方もない憧れを抱いていました。探査者としてのスキル、その技にさえジオロジカルボイジャーなどと、由来する名をつけるほどにね」
「何を……言ってるんだ。突然」
「叶うならばタイムスリップして、星の始まりから今に至るまでをずっと観察していたい。それが叶わないにしても、せめて星の行く末を見届けたい……どんなふうにしてこの星は終わるのでしょう。人の身では到底知ることのできないその時の訪れを、私はどうしても諦めたくありませんでした」
「えぇ……?」
いきなり、えらく壮大な方向に話がいったな……惑星の、地球の始まりと終わりに興味を示すアレクサンドラに俺は戸惑う。
いや、多少理解はできなくもないんだが、今そんなことを言い出すのかって感じにはどうしてもなっちゃうんだよね。
星の始まりも終わりも、只人の身には遠すぎるのは事実だ。過去にしても未来にしても億年単位で離れた話だ、そんなものを見届けられるわけもない。
だからこそ追い求めるところもあるのかもしれないが、しかしそれと今のこの現状に一体どういうつながりがあるのか。
そう考え、一つの推測に至ろうとした矢先だった。不意に頭の中に声が響いた。
脳内のアルマが、なるほどと声を上げたのだ。
『ははあ、それでエリス・モリガナとウーロゴスか。なかなか面白いアプローチに至ったもんだね、滑稽だけど健気で好感が持てるよ』
「…………アルマ?」
『公平、難しく考えるなよ。つまるところこいつはただの馬鹿だ。夢にかまけてすべてを投げ捨てるのは父親そっくりってところかね? いや、親子揃ってそうさせるエリス・モリガナが魔性なのか。ははは、これはそれなりに楽しい話じゃないか!』
いきなり一人で気づいて愉悦に浸り始めてる。
エリスさんや火野老人まで含めて皮肉ったようなことを口走るけど、その内容は俺にも頷けるものだ。
つまるところこういうことだろう──星の終わりを見届けるために、この女はあえて人を捨てたのだ。
エリスさんという前例を目の当たりにして、その可能性があり得ることを知ったんだな。
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