攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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GEOLOGICAL VOYAGER─星の終わりの夢を見るモノ─

 星の終わりを見届けたい。母親から引き継いだ復讐という呪いとはまた別の、火野アレクサンドラ自身の願い、願望。

 本来ならばそれは夢物語だ。人はそんなに長生きできないし、どんなに生きながらえても100年と少しくらいが限界だろう。

 

 彼女自身もそれは分かっていたはずだけど……そこに現れたエリスさんを見て、一縷の望みを見出してしまったみたいだった。

 すなわちスキル《不老》に端を発する本物の不老存在。元々概念存在だったとかですらなく、完全に一人間として到達してしまった擬似的な不老不死に、アレクサンドラの夢は野望に変じたのだという。

 

「委員会に属していた私です、概念存在という超常的な存在がいることは早くから知っていましたがね……まさか人の身でそこに近しい領域に到達する者がいたなんて、父から多少話を聞いていたとしても話半分でしたよ。どうせ加齢が遅いとかその程度、アンチエイジングの範疇を抜けてはいないだろう、とね」

「……それが、初代様と直にお会いして変わった」

「ええ! そうですシャルロットっ!! 実際に見たエリス・モリガナは信じがたいことに、正真正銘、年を取らない永遠の少女でした!」

 

 狂喜とも呼べるほどの喜びようで、シャルロットさんのつぶやきに反応する。心底から楽しそうなのは、自分も事実上、エリスさんと同じく不老存在へと至れたからだろう。

 前提からして間違えていたんだ、俺は……永遠に在り続けることを、この女にとって不幸な地獄だと決めつけてしまっていた。

 

 真相はこの通り、アレクサンドラはすべて理解した上でプレーローマ・アンドヴァリへと変生した。自ら進んで、すべてが滅びて消え去ってもなお在り続けるモノへと成り果てたんだ。

 正直、狂ってるとさえ思う。この星の終わりだなんて、そこまでして見たいものか? 俺にはいよいよ目の前の化物が、理解不能の存在に思えてきてしまっているよ。

 

「ソフィア・チェーホワのように人の皮を被った化け物でなく、ただの人間から不老に到達した、まさしく超人! ──その時から私は、人の身から概念存在へと至るためのアプローチを考え始めました。ウーロゴスというヒントはすでにあったのですから、それを取り込むことで成り上がるという発想は自然なものでしたよ」

「復讐のためにダンジョン聖教に潜り込んで、エリスさんに出会って……そして魅せられたのか、ある意味。まさか初代聖女が不老存在だというのも驚きだけど、こんなことが……」

「事実は小説より奇なり、とはよく言ったものですね。そしてそのために、私を拾い上げて利用したのですか? アレクサンドラ」

 

 エリスさんへの復讐心と、裏腹の憧憬、憧れ。母の想いと自身の夢に板挟みとなって、それでもアンドヴァリは両方を同時に進めた。

 委員会メンバーとしてダンジョン聖教に潜り込み、復讐の機会を待ちつつもウーロゴスを利用した不老存在への変生を計画したんだ。表向きは六代目聖女としての活動を、いっそ完璧なまでに行いながら。

 

 そのすさまじいまでの執念、偏執性に愛知さんが苦々しい顔を隠さずにつぶやいた。俺も同じ思いだ、予想をはるかに超える闇が深い話の数々に、正直もうすっかりお腹いっぱいだよ。

 ……それでもまだ、肝心な部分は明らかになってないんだけどね。シャルロットさんの問いかけに、俺は静かに心を鎮めて備えた。

 

 きっと、ひどい話を聞く羽目になる。

 最初からすべてを欺いてきたアレクサンドラが、シャルロットさんにどんな仕打ちをしたのか。そんなの、火を見るより明らかなことだったからだ。

 再度の嘲笑を浮かべて、プレーローマ・アンドヴァリは弟子へと答えた。

 

「ええ。ダンジョン聖教聖女となったあなたを背後から傀儡として操り、実質的に組織を委員会傘下に仕立てるためと……エリス・モリガナへの嫌がらせのため。孤児院にいることを突き止めたあなたを引き取りました、シャルロット。まあ最後にはものの見事に裏切られましたがね、この親不孝者」

「あなたを親などと思ったことはありません。私の精神を破壊すべく数年間に亘り……拷問にも等しい洗脳教育を施してきた輩を、なぜそう思えるものですか」

「……………………やっぱり、か」

「な……に、を!?」

 

 明かされる、師弟とは名ばかりの関係性。

 シャルロットさんの淡々とした暴露にエリスさんはじめ周囲の人達は皆驚き、俺は静かに瞠目した。

 

 やはり、か。やはりそういうことをしていたんだな、アレクサンドラ。

 シャルロットさんのこれまでの様子や言動、そして《光魔導》による鳥籠の現出から、なんとなく当たりはつけていたけれど……辛い、あまりに辛すぎる。

 

 最初から、その存在そのものを利用されるために引き取られ、そして心身を痛めつけられていたんだ。

 ダンジョン聖教を傀儡とするための道具として、またエリスさんへの嫌がらせの玩具として。

 

 そしてそれはつまるところ、エリスさんとシャルロットさんには明確な血の繋がりがあることをも示唆している。

 もはや血の気が引いてシャルロットさんを見つめるエリスさんを、葵さんが抱きしめて庇う中。プレーローマ・アンドヴァリは、高らかに告げるのだった。

 

「エリス・モリガナの実の妹、アイナ・モリガナの曾孫……それがシャルロットですよ。もっとも、探し当てた時には家族はすでに死んでおり、自身の出生もろくに知らぬまま孤児院にいたのですがね。うふふふふふふっ!!」




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