攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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夢に取り憑かれたモノ─たとえすべてを踏み躙っても─

 天高く持ち上げたプレーローマ・アンドヴァリを、思い切り背後に叩きつける。俺が得意とする技の一つ、ダブルアーム・スープレックスだ。

 今はみんながいてくれて、《風さえ吹かない荒野を行くよ》は発動していないけど……《誰もが安らげる世界のために》のバフが発動しているから、この状態でもこの女の意識は十分に刈り取れる。

 

「終われ! お前の夢は、お前以外にとっての悪夢だ!!」

「がはっ!? ふ……ふざけっ、るなァァァッ!!」

 

 全力で抗い、身体をジタバタさせるプレーローマ・アンドヴァリ。翼を広げ尾を伸ばし、どうにか逃れようとしているな。

 無駄だ、関係ない。投げっぱなしでなく腕を極めたまま俺は、自らもブリッジ体勢になるようにやつを投げ飛ばした。

 

 ズドンッ──と、響く衝撃。陥没する地面、コンクリートが大きくヒビ割れ崩壊する。

 相当な衝撃だ。まともなモンスターなら、たとえA級であっても倒れるだろう威力。元がS級探査者クラスであり、さらに権能を得たことでパワーアップしているこの女にも通じているはずだ。

 

「こ、公平さん!」

「私ではなく、山形さんを狙った……? 何か因縁があったのでしょうか、この二人には」

「察するに、どうやらここに至るまでの山形さんの発言に激昂していたようだが、しかしすごい威力だ……神にもなったアレクサンドラを、こうもあっさりと」

 

 エリスさんの驚きの声と同時に、シャルロットさんと愛知さんが反応するのを聞く。

 まさかアレクサンドラが、因縁のあるエリスさんやシャルロットさんを差し置いて俺を狙うとは思っていなかったんだろう。正直に言えば俺も意外だったよ。

 

 思うに……おそらくだけど、恐ろしいまでにプライドが高いのが本性なんだろうとは思うよ、この女。

 ここまで俺、結構いろいろ言ったもんなこいつに。直球で夢を否定したし、現状を指摘したりもした。さっき襲いかかる際に言ってたように、説教めいていたところさえある。

 

 それが許せなかったんだろう、他の何にも比べられないほどに。つまりは根本のところ、他者から何かを言われたり説かれたりするのがあまり好きじゃない質なのかもしれない。

 ああ、けれどさすがに師匠である神谷さんは別だろうけど。彼女にだけはこいつ、明らかに対応や言動が違ってるものな。

 袂を分かってなお、敬愛する恩人であり師匠、か。

 

「ぐ、ごぇ────っ!? く、う、馬鹿な、山形公平っ」

「意識が未だあるのか。なら、もう一発いくかっ!!」

 

 意識を奪うに足る威力だったのは間違いないが、それでも反応があるのはプレーローマ・アンドヴァリの執念からのものと見る。

 どうあれ今の一発で体力は相当に削られたはずだ。だったら悪いがもう一回、コンクリートを舐めてもらうとしよう。

 

 両腕を離した俺は、即座に体勢を入れ替えてやつの胴体を逆さにしてホールドした。

 パイルドライバーの構えだ……先程のダブルアーム・スープレックスといい常人相手には決して放ってはいけない技だが、ここまでしなければ意識一つ刈り取れないほどに今の火野アレクサンドラは異常であり異質だ。

 少しの油断もできはしない。

 

 やつを抱えたまま、俺はその場で飛び跳ねた。両足で頭をホールドし、逃げられないようにして垂直に落下する。

 今度こそ、これが決まれば意識は刈り取れる。とにかくこの女から自由意志を奪わないことには始まらない、権能もそうだが心の在りよう、思想や思考回路があまりに危険すぎるんだ。

 頼むから終わってくれ、これで!

 

「夢を鎮めて諦めろ! 火野アレクサンドラッ!!」

「お断りしますッ!! 舐めないでもらいましょうかっ……権能発動! 《真の聖女に従え、騎士達よ》!!」

「……何っ!?」

「────"畏まりました、我らが真の聖女様ッ"!!」

 

 渾身の一撃の中、プレーローマ・アンドヴァリはなおも権能を繰り出してきた。それもスキル封印ではない、異なるタイプの権能だ。

 馬鹿な、権能の同時発動! 魂レベルで壮絶な負荷がかかるってのに、なんの躊躇もなく二種類の力を一度に行使したぞ、こいつ!

 

 ────さらに。俺は絶句した。

 権能発動を受けてこちら側だったはずのダンジョン聖教騎士団の人達が、総出で俺のパイルドライバーの落下地点に集まってきたのだ。

 そしてその場に倒れて折り重なって、軽い人の山を形成している。まるで、パイルドライバーの衝撃からこの女を護る、クッションになるかのように。

 

 精神操作、どころの話じゃない。これは洗脳レベルの権能だ!

 このまま技を続行したら、下敷きになる人達がみんな死ぬ!

 

「うっふふふふ! さあどうしますかシャイニング山形! 私もろとも、無辜なる騎士を皆殺しにできますかぁっ!?」

「お、お前っ……!! なんてことをっ」

「できませんよねえ救世主! ──どうでもいい良心ッ、ウザったらしい倫理観ッ!! 善性などに傅く愚かな子供では"ソレ"だけは選択できますまい! 悪徳こそが絶対のこの世で、正義という弱者の言いわけに縋るたわけた偽善者がっ!! 精々私を仕留め損ねなさいッ!!」

 

 俺にホールドされるなか、なおも嘲笑するプレーローマ・アンドヴァリ。その悪辣さ、卑劣極まるやり口に、それでも俺は従わざるを得なかった。

 ただこの女の意識を刈り取るだけのことで、人死にを出させるわけには、いかない。

 

 空中で緊急停止する。その寸前に、アレクサンドラはパイルドライバーの体勢を強引に振りほどいて俺から距離を取った。

 追撃したいが、やつがダンジョン聖教騎士団達に何をしでかすかもしれないため身動きしづらい!

 

 これは、詰んだか……?

 この後やつがしてくるだろう手段を感じ取り、俺は静かに内心で歯噛みした。




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