攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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シャイニング山形はただ静かに、その光を湛えていた……

 サークルの、事実上壊滅──幹事長藤近と委員会の悪魔アドラメレクの捕縛。

 その一報を聞いて俺は、すぐさまエリスさん達にそれをそのまま伝えた。

 

「そっか……! 敵の首魁を無事、捕らえることができたんだねヴァールさん達は!」

「はっはっはー! なーんかあっけなかったですね? AMWを持ってるって話でしたけど、やっぱり俄仕込みで扱いきれなかったんですかねえ?」

「さすがですね、WSOは。なんにせよこれで、目下のところ残るはアレクサンドラだけとなりましたか」

「残党はいくらかいるみたいですから、引き続き捜査は続けられるそうだが。とりあえずはそうなるな、敵は絞られてきた」

 

 認定式の日からこっち、さんざん世間を騒がせたり良からぬことに手を染めてきたサークルの崩壊。

 組織トップに加えて委員会からのオブザーバー、並びに幹部陣が一網打尽になったんだ。これで崩壊、あるいは大幅な弱体化してくれなかったらそれは嘘だよ。

 

 そしてこれは戦略上、極めて重要な情報だ。シャルロットさんの言うように当面の敵が、ダンジョン聖教過激派というかプレーローマ・アンドヴァリのみとなったのだから。

 いやまあ、副幹事長の海方や幹部の瀬川には逃げられたっぽいからまだ一波乱あるかもだけどね。それでもサークルについてはほぼ、片がついたと見なしても良い段階になったのは間違いなかった。

 

「こちらの、プレーローマ・アンドヴァリの動向については後日、まとまった時間を設けて関係者と協議するみたいです。その、シャルロットさんの事情も込みでいろいろ……腹を割って話したほうが良いことも、あるとは思いますから」

「シャルロット……」

「…………シャルロット、くん」

 

 そしてさしあたっての合流と、話し合いについての予定をみんなに告げる。サークルについてもそうだし、何より今回、アンドヴァリについて相当量の情報が手に入ったからね。

 それらの共有と今後の方針についての会議は必要不可欠なんだけど……そうなると今度は、あまりにも繊細な問題に触れることになる。俺はシャルロットさんを見た。

 

 火野アレクサンドラに、何があろうと絶対に許されない拷問としか言えない地獄の仕打ちを受けてきた彼女。

 凄絶な痛みを受け続けた果てに今こうしている当代聖女に対して、会議となれば詳しくとは言わずも、ある程度の経緯について説明してもらうことにもなってしまうのだ。

 

 それが、どうしても心苦しい。先程に見た惨すぎる腕が脳裏を過ぎり、沈痛に俯く。

 エリスさんや葵さんも気遣わしく彼女を見やる中、シャルロットさんはしかし──ふう、と軽く息を吐き、少しだけ微笑んだのだった。

 

「当然でしょうね。私も、ことここに至らばもはややつを単独で仕留めることに拘泥はしません。腹立たしいですが、スキルを封印する力を有したアレには対抗できませんので」

「シャルロット。しかし、君は、その。辛い過去を、話すことになるのだぞ」

「どうでも良いことです。必要ならばこの法衣を脱ぎ捨て裸を晒し、全身に刻まれたアレクサンドラによる行いを示すこととて厭いません。やつを仕留め、個人的な復讐と七代目聖女としての義務を果たすためならば私はなんでもいたします」

「…………そう、か。無理は、するな」

「急に態度を変えましたね、愛知九葉……ありがとうございます」

 

 相変わらずの、あまりにも突き抜けたアレクサンドラ殺害への意志。視野が狭いどころでない、たとえ何一つ見えない暗闇のなかであってもなお、ただひたすらに憎悪の刃を研ぎ澄ませる絶対的信念さえ孕んだ姿。

 凛としたそれは、しかしあまりにも悲壮で壮絶なものだ。けれど同時に少し、いやかなり俺たちに対してのあたりが柔らかくなっていることにも気づく。

 

 真実を知り、一気にシャルロットさんに対して同情的になった愛知さんに戸惑いつつも謝意を示しているのもその証だろう。

 やはり、アンジェさんやランレイさんの言う"いつものシャルロットさん"はこんなふうだったんだろう。冷静でクールながら刺々しさの薄い、静かな微笑みを見てそう感じるよ。

 

 そんなシャルロットさんは俺にも視線を向けてきた。

 えっ、なんで? 戸惑う俺にも微かに笑いかけ、彼女が続けて話しかけてくる。

 

「山形さん。あなたには今回も助けられた形になります……重ね重ねありがとうございました」

「い、いえ。お気になさらず」

「……今後アレクサンドラと戦うにあたり、先程のようにやつの力を無効化できるあなたの存在は鍵となりましょう。あなたの正体がなんであるかは問いません、ただ、どうか私にもご助力ください。これまでの失礼無礼、心より謝罪いたします」

「シャルロットさん……」

 

 深く腰を折り曲げ、俺に頭を下げる。心底からの謝罪を受ける形になり、俺は言葉を失った。

 これまでの言動に対する申しわけなさからのものなのは当然として、それでも根底にあるのはやはりプレーローマ・アンドヴァリを倒すためという打算ではあるのだろう。この人の過去を思えばそうするのは当たり前だと思うしな。

 

 そのために俺を利用することを悪いこととは思わない。むしろ、シャルロットさんの力になりたいと俺自身が強く思っているんだ。

 もうこの人がこれ以上、こんなことで苦しむことはあってはいけない。たった一人で憎悪と殺意を糧に、歯を食いしばって生きてきたんだ……これから先はどうか、少しでも信頼できる人達とともに歩んでいってほしいから。

 

 だから、俺は頭を下げる彼女の肩を優しく掴んで押し留めた。

 称号効果による、人の心を慰め和らげる輝きを発揮しながらシャルロットさんに語りかける。

 

「謝る必要なんてありません。そんなふうに俺を頼ってくださるなら、いつだって俺は力になります。必ずです」

「……あ、温かい、光……シャイニング、山形……?」

「だからどうか、御自愛ください。あなたはもうひとりじゃない、みんながいるんです。これまでたった一人で、本当に大変でしたね……」

「……………………っ!!」

 

 シャイニングリラクゼーションによって、凍てついた心が少しでも癒えたのかもしれない。

 呆然と俺を見ながらも、やがて俯き目を閉じる彼女の瞳は、たしかに潤んでいるのが見えた。

 

 わずかでいいんだ、どうかこの人の心を癒してくれ、光よ。

 そう願い祈りながら……俺は静かに、輝きを放っていた。




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