攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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新人精霊知能ミュトスの頑張れ!空間転移

 自室にて。軽い荷物だけ持った俺達は首都圏に向かうべく並び、空間転移の権能を行使した。

 シャーリヒッタが持ち前のスキル《空間転移》を使用して、ワームホールを生成してくれたのだ。

 

「《空間転移》──場所は首都圏、ヴァールの滞在してるホテルの一室。っていうかアイツのいる座標ですね、父様」

「そうだね。一応メッセージで連絡はしてるから、ワームホールの先にはもうヴァールがいてくれてるはずだよ。ほら」

 

 俺に確認してくるシャーリヒッタだけど、さすがは精霊知能のトップ。文句のつけようがない見事な精度と強度のワームホールを拵えてくれた。

 場所ももちろんヴァールの部屋に合わせている。もう向こうには連絡済みだし、実際につなげた先にはヴァールがいて、こちらに向けてうなずいてくれているね。

 

 今日も行き帰りはヴァールの部屋と俺の部屋を繋げる形になる。あんまり無造作に適当な繋げ方してると、空間転移が必要以上に悪目立ちする上に悪用してるんじゃないかという疑惑も立てられそうだからな。

 認定式の日に、現場にいた結構な数の人に空間転移が知られているとはいえまだ誤魔化しが利く範囲ではある。だからこそこれまで以上に丁寧に、かつ細心の注意を払ったスキルの使い方を心がけないといけないわけだね。

 

「そして帰りはこの家のこの部屋の座標に合わせるんですよね……《空間転移》、精霊知能になってから得た権能ですからまだ慣れてないところがありまして。ううう不安です!」

「だーいじょうぶですよー! ミュトスちゃんも精霊知能としての能力はシャーリヒッタやリーベちゃんにも匹敵しますし、もっと言うなら水の女神時代のノウハウとかもきっと活かせますよー。平気、平気!」

「そうだぜ! お前さんはお前さんでいつも通りにやってくれればそれで良いのさ。ねっ、父様!」

「ああ。シャーリヒッタもリーベもミュトスも、俺は頼りにしてるよ」

 

 空間転移の権能を身に着けたばかりの新米精霊知能、ミュトスがずいぶん不安がっている。

 見かねてリーベやシャーリヒッタが励ましているけど、特にこっちとしては心配もなければ不安視もしてないんだよね。

 

 精霊知能としては規格外というか、偶然と奇跡めいた成り行きでワールドプロセッサの手により生まれ変わった異世界の神。

 そんな彼女は三界機構の存在をも組み込まれているがゆえに、出力だけで言えば全開のシャーリヒッタにも匹敵している。つまりは精霊知能のなかでも最強クラスの力を備えているわけだ。

 

 そんな彼女の能力を疑うなんて、コマンドプロンプト的にできるはずもない。ていうか普通に俺と……私やワールドプロセッサと同格の存在を、その欠片だけとは言え三体分も内包しているのだ。

 空間転移程度の制御に不安など言われても逆に困る。容易い権能とは言うまいが、ポテンシャルから考えれば心配する理由などどこにもないのだから。

 俺もまた、彼女に心ばかりのエールを送る。

 

「ま、行きはともかく帰りは急ぎじゃないから。間違って北極とか100億光年先の銀河とか概念領域とか、なんならシステム領域に間違えて繋げたって問題はないよ。失敗したって良いんだ、気楽に行こう、ミュトス」

「気楽のスケールが大きすぎますよう!? というか改めて思いますけど、ホントに距離の制限とかないんですね、この権能……」

「概念存在の扱う空間転移のほうには制限あるけど、システム領域側のモノ用の空間転移だからね。システムメンテナンス用に使う時もあるから基本、この世界の端から端まで行けるようになってるよ」

 

 誇張抜きに一切の制限なくどこにでも繋ごうと思えば繋げられる。そんなシステム領域用の空間転移の仕様に慄いているっぽいミュトスに苦笑いする。

 概念存在の権能の一つとして用いられる空間転移のほうは、当たり前だけど距離や回数などに制限がかけられていたりはするね。

 

 まあほら、現世の知的生命体ありきなモノである概念存在達が、そんなの関係ねえとばかりに誰も知らんような宇宙の果てだとかに勝手に足を伸ばせるわけもないわけで。

 彼らの空間転移は基本、それぞれが属する神話や伝説圏内……すなわち概念領域における勢力圏内と現世地球と精々太陽系圏内くらいまでが限界って感じに収まっている。

 

 一方でシステム領域側のモノが使う空間転移はそういう縛りなんてなく、宇宙の果てまで行けるしデータ領域だろうがシステム領域だろうが"この世界"の内側ならどこにだって行ける仕様になっている。

 システム上の異常やエラーが万が一、現世とか概念領域とかにもダイレクトに波及した場合。直接メンテナンスのために手をつけるパターンも今や、魂と意志を得た俺達の仕事としてあり得るからね。

 

 本来、システム領域に自律的な意志や魂なんてあるわけもなかったし、そんな事態が起きた場合には創造神クラスがどうにかするって塩梅だったんだけどね。

 システム領域がこんな形になった以上、こういうデバッグ的な権能の行使も必要なわけなのだ。

 

「今後、現世が落ち着くなかで俺達はシステム領域のタスクをこなす機会も増えていくかもしれない。ミュトスだったらなおのことだ……今のうち、ちょっとずつ精霊知能としての権能を使うことにも慣れていこう。大丈夫、ゆっくりで良いから」

「は、はい! が、頑張りますっ!!」

「肩の力抜いてもらって。よし、じゃあ行こうか」

 

 どうしても気負いがちになっちゃうのも仕方ないんだけど、そんなミュトスの肩を優しく叩いて落ち着かせつつ。

 さておき、いよいよ俺達はワームホールを抜けて首都圏はヴァールの下へと向かって行った。




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