攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
ソフィアさんへの、ヴァールへの、そこはかとなく盲信や妄執にも近しい感情とそこから来る反発心。
藤近の根底にあるものがそうした想いだというのなら、そろそろサークルという組織の実態が見えてきそうな気配もする。
認定式の日からこれまでにかけ、たくさんの構成員達の姿を見てきた。下は大学を卒業したばかりだろう若い人から、上は俺の爺ちゃんや婆ちゃんくらいの年の人まで。
多種多様な人達が集まっていたけど、そのなかでも最初から引っかかっていたんだ……掲げる目標、やってることに対して言動に中身がなさすぎる、と。
たとえばウーロゴスを眺めながらモンスターの上で酒盛りして、人々の苦しむ姿を見るのを楽しんでいたり。
たとえばダミー企業という名の秘密基地を作り上げて、そのなかで身内だけで遊んでいたり。
かと思えば銃火器まで持ち出して大ダンジョン時代の格差について激憤し、あたり構わず引き金を引こうとしたり。
はっきり言って一枚岩の組織だとはまったく見えなかったんだよね。決戦の時、藤近と直にやり取りしたなかでもそれは感じていたことだ。
気になって、意見を出す。
「藤近自身とか海方、瀬川はそれなりに自分達なりの目的に向けて動いていたようですけど……構成員は、むしろそんなことお構いなしって感じな人達が多いように見えました。藤近の意志や方針なんて、まるでどうでも良いみたいに。内部でいろいろあったんですかね、サークルも」
「それは私も感じたわね。なんていうか、幹部連中だけ躍起な感じがすごくて、末端は我関せずに近いっていうか……」
「なまじ藤近が、曲がりなりにもリーダーとしては器が大きかったように思えるんでそこが不思議なんですよね。あの男が率いていたにしては、妙にバラけてたなーって」
俺に答えるアンジェさんも、同じ違和感を抱いていたみたいだ。サークルの矛盾──幹部とそれ以外の構成員達とで微妙に食い違いが見られるところについてだな。
こう言うのもなんだけど、藤近功という男にはたしかに人の上に立つだけの器があるように思える。
ちょっとしたカリスマみたいなものがあって、是非はともかく本人なりの確固たる信念があって、それゆえに一歩も引かないという態度さえ見せつけてきた。
敵ながらあっぱれ、と言うべきなのかな? 少なくともサークルという組織のトップなだけはあるという、説得力は持っていたように思う。
だからこそ余計に浮き彫りになるのが、末端構成員達のやる気のなさだ。大ダンジョン時代社会転覆や探査者と非探査者の格差についての主張、そこを本気で主張する末端が、いないとまでは言わずとも思っていた以上に少なかったんだ。
あの男が率いていてそれなのは、どうにも解せない。
俺の質問にみんなもふむ、と考え込む。資料における藤近の質疑応答部分を見て、郷田局長さんが発言した。
「そこについては、質疑応答の12、13にヒントがあるように思えます。そちらをご覧ください」
「質疑応答、12……ええと、これか」
『問12。サークルはそもそもどういった目的で運営されていたのか』
『応答12。本来はカレチャ卒業後、社会に出てもOBOG達で交流し青春を楽しめる場を提供するべく組織されたものだった。委員会介入後もこの性質は重視しており、構成員達に対しては必要な時に協力だけ呼びかけ、後は自由にして良いと常々言っていた』
『問13。委員会介入後の方針変更について、異を唱える構成員達はいなかったのか』
『応答13。当然いたが、それでもサークルを愛する者達ばかりだったのでみんなついてきてくれた。元々カレチャ出身者ばかりで、社会での生活に疲れ果てた者達も多かった。そんな彼らの憩いの場として機能していたため、離れるに離れられなかった者も多かったように思う』
言われるがまま目を通す。これは、なるほど。
俺の抱いた疑問に対する、そのもの答えに近い質疑応答だけど……サークル構成員達の、心情がいかにも察せられる供述だな。
カレチャ出身者で構成されたサークルという組織。元々は純粋に卒業生達で在りし日の青春を蘇らせよう、という意図で作られたソレは、社会に出て暮らすなかで疲れた人達の拠り所の機能を果たしていたんだな。
きっと、構成員達にとっては本当に楽しい、心から素晴らしい場所だったんだろう。だから方針転換後も抜けるに抜けられず、藤近のカリスマや懐柔策もあり残った結果、中途半端な姿勢でテロに走る者が多かった、と。
神奈川さんが、呆れも大きく要約した。
「つまり、社会に疲れて青春に戻りたい連中が、居場所を失いたくないから幹部陣の計画したテロリズムに乗ったわけか。なんかずいぶんと世知辛い話になってきたな」
「そして藤近はそうした心理を利用して、彼らを扇動したわけか。構成員達にもやる気のムラがあったりしたのは、そのために」
「末端構成員達からの取り調べでも、これといって重要な情報はありませんでしたが……動機については"やれって言われたから"や"どうでも良かったけどサークルは居心地が良いし、離れたくなかったから"という声が多くありました。十中八九、そういうことなのでしょう」
「憩いと青春を謳い人々を集め、ドップリと沼に浸からせてから犯罪に手を染めさせる。これも一種の洗脳ですね。藤近を教祖としたカルト集団と言ったところでしょうか。恐ろしいですね……」
怖ぁ……島根室長さんの話を受けて、香苗さんがバッサリと核心を突いた。
結局、藤近のやったことって洗脳なんだよね、たしかに。逃げたいと思えなくなるまでぬるま湯に浸らせて、そこから取り返しのつかない行為に至らせる。
なまじ元々は本気でただの憩いの場だったからこそ、構成員達にとってこの手法は効いたんだろうな。
青春と癒しを求めて、他者を加害するまでに至ってしまったならず者集団。それこそがサークルの本質だということだった。
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