攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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探査者だって青春がしたい!……と思う探査者は意外に多い、かも

 過ぎ去りし学生時代の青春を、社会に出てからも取り戻せるようにと組織されたカレチャOBOGグループ。

 サークルの原点にして本来の姿は、言ってしまえばありふれた動機によるコミュニティだった。

 

 それが、委員会の介入とそれによる藤近、海方ら幹部陣の方針転換によってテロ組織へとその性質を一変させ……青春をある意味質に取られた構成員達は、消極的肯定ともいうべき形でその活動に参加した、と。

 

 藤近からの取り調べで得られた情報を勘案すると、つまるところそれがサークルという犯罪組織の正体ということになる。

 正直なところ、納得できる話だと俺やアンジェさんはうなずいた。

 

「それで構成員達の中にも、意識の差のようなものが見られたんだな。幹部陣に触発されてやる気を出したようなのがいれば、まったくやる気がなくアジトで遊んでいるようなのもいたし」

「探査者主義社会とやらへの反発は、もしかしたら藤近とかから薫陶を受けて染まった結果なのかもしれないわね。なんにせよ、拍子抜けにも程があるけど」

「委員会が介入したってのがもちろん前提だけど、それにかまけて本来の姿を捻じ曲げ利用した藤近達に、止めるに止められずズルズルと付き合うだけだった構成員か。なんかこう、呆れるやら物悲しいやらって感じだな」

 

 神奈川さんも乗っかって話すのは、当然ながら俺達が実際にアジトを強襲し、構成員達と相対した経験や知見があるからだ。

 いろいろいたしね。麻雀やってるのとか悪魔憑きとか、御年配の方とか、果てはフルオープンアタック婆ちゃんとか。

 

 全員大体刃物なり飛び道具なりを手に突っかかってきたんだけど、それでもやる気の有無というか、テロ屋なりの信念の有無みたいなものを感じてはいた。

 やる気のある手合ばかりが悪魔憑きだったあたり、悪魔側も人を選んで力を与えているんだろう。当たり前の話だな。

 

 そういう意識の差も、藤近なり海方なりに影響されたりされなかったりした結果のものと考えると……神奈川さんの言う通り、どこか物悲しいものを覚えなくもない。

 元は誰もが穏やかな、平和な青春を謳歌すべく入ったサークルだってのに。上の都合や外部からの横槍で犯罪組織に変貌していくなかで、居心地の良さを捨てるに捨てきれず固執するしかなかった連中なのかもしれなかった。

 

「青春……き、気持ちは分かるかもですぅ……私にそんなのありませんでしたけど、一番輝いていた頃に戻りたいって気持ち、ありますよね……」

「何を年寄り臭いことを……まだまだランレイちゃんは若いじゃないか。ま、かくいう私も40過ぎたくらいの頃にゃそんなことをチラホラ考えたりしてたか。肉体的な全盛期を過ぎた頃だったかねえ」

「第五次モンスターハザードの頃だったか? そのあたりの時期にサウダーデを弟子に取ったのだったな、たしか」

 

 そんな中、サークルの当初の姿に対して想いを馳せるランレイさんが絶妙に反応しづらい。一番輝いていた頃を知らないし、今だって十分に輝いた日々を送っているように見えるからね。

 マリーさんもさすがに呆れてツッコんでるけど、それはそれとして御自身にもそうした想いを抱いた時期があったと吐露している。40歳頃っていうと40年くらい前か。当然俺が生まれる前だし、なんなら父ちゃんや母ちゃんも生まれてるかどうかって頃だ。

 

 その頃にはもうこの御方、肉体的な面では全盛期を超えてたんだよな。

 なんなら一般的な探査者だったら割と引退して後進育成に取り組んでいてもおかしくない頃合いで、そこから現代に至るまでさらに40年、戦い続けてきたあたりさすがとしか言いようがない。

 

「青春とかって話になるとエリスさんとしては曖昧な笑みを浮かべるしかないかなー、ハッハッハー。世間一般でいうリア充陽キャパリピをやってた時期とか、96年生きててもなかったからねー」

「な……なか、ま……?」

「えぇ……?」

 

 一方でエリスさんが青春について、それこそ曖昧な笑みを浮かべるしかできないことを仰っている。

 18歳で不老体質になって以降、一箇所に留まることなく世界各地を放浪するしかなかったこの人には、青春とかリア充陽キャパリピとかって話はとんと縁がなかっただろう。

 

 今でこそコミュ力つよつよな葵さんと一緒だし、多趣味で人生を謳歌している様子だけれど……そこに至るまでには筆舌に尽くしがたい、想像を絶する道のりだったはずだ。

 ランレイさんが仲間を見る目で彼女を見ているけど、若干タイプの違う陰の者っぷりな気はしていた。

 

 あ、ちなみに俺はどちらかと言うとランレイさんタイプですね。エリスさんはなんやかやSNSとかやりまくってるタイプだし、本質的にはコミュ力あるほうだし。

 そういう意味で言うと、ランレイさんの仲間はどちらかと言うと俺のほうだろうね。

 

「ま、まあ……そうした青春についてはさておき。サークルとは結局、藤近によって振り回された組織であるということが証明された形になります」

「藤近については海方や瀬川と言った幹部陣との関係性についても今後、聞き出していく形になりますが……さしあたり特筆すべき情報はこのようなところでしょうか」

 

 島根さんと郷田さんがそう締めくくる。

 もちろん、まだまだ藤近からは聞き出すことが山ほどあるけれど……ひとまずはサークルの目的と本質、そして彼自身の思想や来歴についてがかくして明かされたのであった。




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