攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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愛知も愛知でなんだかいろいろ抱えてそうな匂いがする……

 藤近、およびサークルについての真相は粗方明らかになった。残すところは精々、藤近や幹部陣のパーソナル部分についてくらいだけれど、そこはこの際、優先すべきものでもないというのが警察とWSOの判断だ。

 付随して悪魔アドラメレクについての質疑資料もあったんだけど──島田室長と郷田局長が、難しそうに眉を寄せて説明してくる。

 

「新目伶玖。そう名乗る藤近の側近については未だ、黙秘権を行使しており質疑が難航しています」

「"ソフィア・チェーホワと話せるならその時にいろいろ話す"の一点張りでして。そのこともあり近く、統括理事には新目の取り調べを行っていただくべく日程調整中です。ここについてはこの話し合いの後、統括理事と打ち合わせる予定です」

「新目伶玖……」

「アドラメレク、あどらめれく、あらためれいく……うーん、無理があるような、ないようなー?」

 

 ソフィアさんを指名した上での取り調べ要求。システム側としては迂闊なことを現世存在の前で言われるのも勘弁してもらいたいところだったから、それはこちら的にも好都合なんだけど。

 新目伶玖。アドラメレクを日本っぽい名前にしたってことなんだろうが、結構凝った名前を持って受肉したんだな、あの悪魔。

 

 ともあれさておき、アドラメレクについては取り調べの日程をこの話し合いの後、ソフィアさんやヴァールを交えて決めるみたいだ。

 事前に聞いている通り俺達システム側も参加することになるだろう、いつでも予定は空けられるからどうぞご随意にって感じだね。

 

 なのでそこは後回しとして……次はいよいよ、ある意味では本題と言える議題だ。

 サークルは壊滅した、ならば残るはあと一組織。けれどそれを率いる女こそが目下のところ、最大級に危険な存在なのだ。

 島田さんが厳かに告げた。

 

「さて、次の議題に移りましょう。アレクサンドラ・ハイネン……いえ。火野・アレクサンドラ。プレーローマ・アンドヴァリと名乗る犯罪者と彼女が率いるダンジョン聖教過激派についてです」

「アレクサンドラ……! 来たわねあの化物、シャルロットにずいぶんと惨い真似してたって話だけど」

「自身の夢と野望のために、他のすべてを利用し踏みにじっている、まさしく悪魔のようなモノ……」

「捕らえた過激派構成員達からの取り調べをまとめたものも資料内にあります。そちらを参照しつつ進めて参りましょう」

 

 プレーローマ・アンドヴァリ。あるいは火野アレクサンドラ。かつてダンジョン聖教六代目聖女にしてS級探査者だった、今はもう、ヒトでも概念存在でもない中途半端な化物。

 やつについての話し合いが、これから始まろうとしているのだ。

 

 アンジェさん、愛知さんが身構える反応を見せた通り、こないだの顛末については粗方俺やエリスさん、神谷さんのほうから説明している。

 ゆえにシャルロットさんが受けた仕打ちについてもそれなりに把握というか気付いていて……そこに対してこの場の誰もが憤っているというのが現状だ。

 

 もっとも、当のシャルロットさん自身はまったくどこ吹く風って感じなんだけど。

 彼女についてはこの後、個人的に提案したいことがある。きっと受けいれてもらえるものとは思うけど、これまでの経緯から大分凝り固まっているところもあるからどうかな、不安だよ。

 

「……どうしました? 山形さん。私の顔に何か?」

「え。あ、いえ……その、おそらくシャルロットさんにもお伺いすることが、あるかなーと思いまして」

「構いません。不躾な好奇心と興味のみをもって問うならば無視しますが、今回のこれはアレクサンドラを仕留めるために必要なものと承知しています。これまでにご迷惑をおかけした以上、いかなる質問であれ答えるつもりです」

「そ、そうですか。その、ご無理はなさらずに」

「お気遣い感謝いたします」

 

 思わずチラチラとシャルロットさんを見ていたら、気づかれて気まずいやり取りを交わしてしまった。

 

 一番最初に会った、認定式の時を思えば驚くほどに協力的だしお互い、多少は慣れた感じの会話になってる気はしているけども。

 明かされたプレーローマ・アンドヴァリとの因縁を思うと、シャルロットさんにはもう、これ以上辛い目を見てほしくないって気持ちになるんだよね。

 

 こうした気持ちは俺だけじゃない。

 彼女のお祖母さんのお姉さんであるところのエリスさんや弟子の葵さん。加えて先々代聖女である神谷さんを筆頭に、一時期行動をともにしていたアンジェさんやランレイさん、神奈川さんにステラも見るからに心配そうに見ている。

 そして、これは意外なことなんだけど……愛知さんが、ちょっと不思議なまでにシャルロットさんに肩入れしているのだ。

 

「シャルロット、どうか無理はするな。本当ならば君はこのような場にも参加せず、ホテルで養生すべきなのだ。身も心も傷つききった君は、これ以上辛い思いをしてはいけない」

「……どういう心変わりかは知りませんが、お心だけ受け取ります。ご心配なさらずともことが終われば、謹んで日本から退去しましょう」

「そんなくだらないことはどうでもいい。事情を知った今、お咎めなしとはいかないだろうが一方的に国外追放などとは私がさせない。安心してくれ、君は……私が護る」

「は、はあ」

「怖ぁ……」

 

 これまで割とギスってたっていうか、立場もあって結構対立関係じゃなかったっけ?

 いや愛知さんが心優しい方なのは分かっていたけど、それにしたって態度が変わり過ぎである。

 

 シャルロットさんですら困惑しているんだから、ある意味すごいよ……

 愛知さん、いろんな側面を持った方だなあ。




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