攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
一転してシャルロットさん擁護勢に回り始めた愛知さんに、この人どうしたんだろう公安や政府相手に大丈夫なのかなあと思いつつも、プレーローマ・アンドヴァリについての話が始まった。
過激派構成員達からの取り調べをまとめた資料を順次読み進めていく……とはいえ、あまり核心を突いた質疑応答はなさそうだったけども。
『問3。過激派の目的は何か』
『応答3。ダンジョン聖教は聖典に記されたる"神"を顕現させること。そしてその地上での依代になる六代目聖女の下、世界を真なる神の支配する世とすること』
『問4。なぜ、そのような目的を抱くに至ったのか』
『応答4。ダンジョン聖教は拡大の一途を辿っているものの、未だ異教の影響力根強い地域が多々残っている。そうした地域に対しても絶対的な説得力をもって、我々の教義と神こそが唯一にして至高なのだと示すためには"神"による直接統治をおいて他にないと考えた。厳密にはそう主張した、六代目聖女に賛同した』
『問5。過激派という枠組みは一体、いつ頃からできたのか』
『応答5。六代目聖女就任直後から。事前に思想調査を経て過激派に沿う者を見繕った聖女による直接のスカウトがあった』
重要そうなのはこのあたりかな。ダンジョン聖教過激派の成り立ちとか目的について触れられた部分を確認し、俺はふむと息を漏らした。
概ね、予想の範疇を出ない応答ではある。神谷さんから以前聞かされていた、過激派という組織の存在と目的から推測できるイメージ像とさほどかけ離れてはいなかったからね。
けど、割と直接的な支配を目論んでいたのはちょっぴり予想外かも。事実上の世界征服を企む悪の組織だってのが、これで確定しちゃったわけだね。
神谷さんが顔を憤怒の赤に染めて握り拳で震えていらっしゃる。怖ぁ……お願いだからこないだみたいにブチ切れて一人で突っ走らないでほしいよ。
見かねたマリーさんとヴァール、あとエリスさんが彼女に声をかける。
「神谷。気持ちは理解するから落ち着きな。アンタはイノシシだが二度三度と馬鹿やらかすやつじゃないだろ」
「さすがに二度目の暴走は許さんからな、神谷……お前の憤りはこの場の誰もが理解している。その無念ごと抱えて我々とともに戦ってくれ」
「ハッハッハー。ラウラやアーデルハイドくん、あるいはヴィルタネンくんがここにいたら、きっと同じようにして君を止めると思うよー」
「ッ……失礼しました。いえ、いいえ、私はもう独り善がりに独断専行するつもりは欠片とてありません。みなさまとともに、すべて指示に従いやつを捕縛します」
古くからの知り合いからの釘刺しに、さすがに神谷さんも冷静さを取り戻して微笑む。
うん、かなり怒りを堪えた微笑みでおっかないけどこれなら大丈夫そうだ、一応光る準備はしていたけど出番がなくて良かったー。
島根さんや郷田さんもホッとしている。警察からしても、今ここでまた神谷さんに勝手に動かれても困るの一言だろうからね。
こほん、と咳払い一つして、島根さんが上記の質疑応答について軽く触れた。
「えー……まあご覧の通り、過激派の信者達からの取り調べでは動機部分が明らかになりました。ですが肝心のアレクサンドラについては、やつら自身もあまり深くは知らなかったようです」
「予てからの予想通り、やはり過激派はアレクサンドラによる完全トップダウン式の集団のようでして。あらゆる意思決定はすべてアレクサンドラが行い、構成員たる信者達はその手足としてただ、従うだけという状態だったようです」
「でしょうね。あの女は自分以外の者は信じず、上に立つことも横に並ぶことも認めず。ただ己の下に傅かせることのみを要求する万物の支配者気取りなところが出会った頃からありました。例外はそれこそ、神谷様のみ」
「自分に親身になってくれた師匠。神谷さんにだけは、アレクサンドラはただの弟子として振る舞っていたのかもしれないんですね……」
郷田さんからの報告を受けてアレクサンドラについて語る、因縁深いシャルロットさん。
やつの弟子と呼ぶには受けてきた仕打ちがあまりにもあんまりなものだけど、だからこそあの女の表も裏もそれ相応に理解しているのは彼女だけなのだろう。
今やプレーローマ・アンドヴァリと化したモノ。六代目聖女として敬虔に振る舞ってきたその奥底には常に他者への見下しと支配欲、そして己の夢と野心への渇望が渦巻いていたのだろう。
ただ、それとは別に……たしかに師匠である神谷さんへの感謝と尊敬があったらしいんだよね。
聖女としての活動についても、悪辣な本心とは別にやり甲斐を抱いていたそうだし。根っこのところには複雑な善性が多少なりともあったのかもしれないってのは俺の勘違いではないと思うかな。
とはいえ、それがこれまでやってきた悪辣極まる所業を打ち消せるなんてことには絶対にならないけれど。
多くの人を、己の悪徳によって欺いてきたこと。
シャルロットさんを虐げ、その心身を大きく損ねさせてしまったこと。
そしてウーロゴスを悪用し、野望のためにヒトであることさえ捨ててしまったこと。
────そのすべてが決して許されざる行いだ。
システム・コマンドプロンプトとしても探査者・山形公平としても、あの女は決して許さないと強く思う。
絶対に捕まえて、法の裁きを受けてもらわなければ、な。
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