攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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《聖女》とシャルロット

「あの洗脳能力の発動条件……見たところ、おそらくは"《聖女》称号保持者に対して信仰心を持つ者"に限定しています。だからこそあそこまで好き放題に人を操れたんだと思いますから」

 

 プレーローマ・アンドヴァリの戦闘力、能力において現状もっとも恐るべきもの、洗脳能力。

 いざとなれば容易にこちら側の人員を人質に取ってしまえる無法極まる権能に対して、俺達は早急に分析と対策を練る必要がある。

 

 やつがその権能を使用するところを見た瞬間、反射的にコマンドプロンプトの力でもって多少なりとも分析したわけなんだけれども。

 《聖女》を保持している者に対しての信仰心を持つ者に限り、あそこまで凶悪な洗脳を施せるという条件付けがなされているのを俺は確認していた。

 

 けれどそれだと一つ、意味のわからない点がある。

 俺はこの場にいるみんなに向けて、続けて語った。

 

「ですが解せないのは、今、その称号はシャルロットさんが持っているということです。《聖女》というのは歴代聖女に引き継がれている称号、なんですよね神谷さん?」

「もちろんです。歴代聖女就任者はその座に就く際、先代聖女から《聖女》を継承する儀式を執り行います。ですが、その……」

「……まさか。シャルロットさんではなく、まだプレーローマ・アンドヴァリが《聖女》を保持しているんですか?」

 

 予想外の事実。申しわけなさそうにうなずく神谷さんに、マリーさんやエリスさん、そしてヴァールまでもが目を見開いて彼女を見た。

 ダンジョン聖教聖女……世界にたった一つ、《聖女》の称号を引き継いだ人。すなわちその称号と聖女という社会的立場は、不可分に近い形で紐づいているものと思っていたんだけど。

 

 どうやらダンジョン聖教内では、ずいぶんややこしいことになっているみたいだね。

 集まる視線に、けれど神谷さんが答えるよりも先にシャルロットさんが口を開いた。話が本当ならば《聖女》を持たずして七代目の座に就いた彼女から、真実が語られるみたいだ。

 

「今現在、私は《聖女》の称号を引き継いでいません。聖女継承の儀を行う前に、アレクサンドラは過激派を引き連れて聖都モリガニアから姿を消しましたので。かの聖なる称号は今なおあの女のステータスにあります」

「そ、そうなんだ……? たしかにシャルロットくんの時は例の儀式とか無かった気がするけど、単に私が呼ばれなかっただけかなーって思ってたのに」

「初代様を呼ばずして儀を行うことはありえません。儀を行わずしての七代目就任も結局のところ、引き継ぐべき称号を持ち逃げされたゆえの対処でした。私自身の経緯も併せ、アレクサンドラとのこれまでの成り行きをご説明します」

 

 エリスさんに対しても無表情のまま答えつつ、シャルロットさんはそして居住まいを正した。俺達も緊張と不安を抱きつつ、姿勢を正して耳を傾ける。

 きっと、ひどい話を聞くことになる。プレーローマ・アンドヴァリ──火野アレクサンドラがシャルロットさんに何をしてきたのか。先日の時点である程度分かっていることだけど、本人の口から聞くのだ。

 

 気遣わしげな一同の視線から、まるで逃れるようにシャルロットさんは視線を天井に向けた。

 どこか虚ろな眼差しのまま、そして彼女は語り始めた。

 

「……私は元々、アメリカのとある村、ダンジョン聖教の信徒が経営している孤児院で育ちました。物心がついた頃にはすでに血縁はなく、自分がシャルロット・モリガナという名であることくらいしか家族に対して知るところはなかったのです」

「スタンピードで、その、ご家族を失ったというのは」

「私を育ててくださった、シスターから聞いた話です。私が生まれて間もない頃、小規模なスタンピードがその村で発生し、私の親兄弟、祖父母をも含めて大勢が亡くなったとか」

「アイナ……私の、妹も。その時に……っ」

「エリスさん……」

 

 物心ついた頃にはもう天涯孤独で、親兄弟の顔も知らないままに孤児院で育ったという、シャルロットさん。

 すでに壮絶だ……エリスさんも、自分の妹がスタンピードで殺されたということも含めて姪孫の生い立ちに絶句している。葵さんがやんわりと寄り添い抱きしめるなか、ショックを隠しきれていない様子だ。

 

 自身のルーツを知らないままに育ったシャルロットさん。住まいがダンジョン聖教の信者が経営しているという孤児院だったこともあり、ダンジョン聖教を信仰するようになっていったみたいだ。

 そしてそうしているうちに5年前、彼女が12歳の時。ある日突然、その時は訪れたのだという。

 

「12歳の春。聖女としての業務の一環で孤児院を訪問してきたアレクサンドラが、そのまま私を聖女候補として引き取りました」

「"奇しくも初代様と同じ姓を持つ少女を引き取った。スキルに目覚めたばかりなので、次代聖女として育てたいと思う"と。アレクサンドラは私にも相談してきてはいましたね」

「神谷さんもシャルロットさんも、その時点では本当にエリスさんとの血の繋がりがあるというのはご存じなかったんですか?」

「はい。その時は珍しい話もあるのですねと思いつつ、彼女ならばきっと正しく教育を施せるだろうと考えていたのですが……実態は……」

 

 偶然だったのか、必然だったのか。たまたまモリガナ姓を見かけたからというだけで聖女候補になんてするとは思えないから、アレクサンドラだけはきっと、最初からすべてを知っていたんだろう。

 初代聖女エリス・モリガナの妹の末裔。たった一人スタンピードから生き延びたその子が、孤児院にいたということを。

 

 そしてやつは聖女の仮面を被りシャルロットさんを引き取った。神谷さんにも本音を隠して、次代聖女として立派に育て上げるという嘘をついて。

 

「…………教育などと名ばかり。あの女のストレス発散をも兼ねた、虐待と拷問こそが私を待ち受けていた日々でした」

 

 そして、その裏でシャルロットさんを地獄に落とした。

 やつが聖女引退後、委員会側からダンジョン聖教を意のままに動かすための傀儡とすべく──凄絶な拷問を、この人に仕掛けたんだ。




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