攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
身寄りのないシャルロットさんを、聖女候補として引き取ったアレクサンドラ。けれど実際に行われたのは教育とは名ばかりの虐待、拷問だった。
シャルロットさんが12歳で能力者として覚醒していたこともあり、あの女はストレスの捌け口としてスキルを使うことさえ厭わないでいたのだ。
「毎日、毎食は簡素なシリアルを5分間のみ。睡眠は毎日4時間。それ以外は徹底して修行と称してモンスターの群れに放り込まれ、半死半生になるまで放置されてきました。モンスターもろとも《土魔導》で攻撃されることも日常的でした」
「…………むごい……」
「なんと、いうことを……!!」
「当時は、私も愚かでした。引き取ってくれたアレクサンドラに恩義を感じ、受ける仕打ちも私のことを思ってのものだと信じていたのです。信じていなければ、やっていられなかったというのもありますが」
想像以上に胸の悪くなる話に、俺も、みんなも顔をしかめてアレクサンドラに怒りを募らせる。
憎んで当然だ。殺したいと思って当然のことだ。むしろここまでのことをされてなお、理性的に行動できているシャルロットさんのメンタルの強さに戦慄さえ覚えるほどに、やつの所業は鬼畜そのものだった。
無表情の中に、自嘲を滲ませて語る当代聖女に言葉が出ない。自分を引き取った人物に対する信頼、尊敬……抱いていた希望や期待もろとも踏みにじられた彼女は、それでもそれを誤魔化すようにアレクサンドラに従い続けたという。
これも、ある種の洗脳だろう。虐待を愛情と思い込む、一つの防衛本能のなせるものかもしれない。
いずれにせよわずか12歳の少女をそこまで追い込んだアレクサンドラの罪はもはや、テロ組織の首魁というだけには留まらなかった。
そんな、少女にとっての地獄の日々が実に4年も続いた。
終わりを迎えたきっかけは、これも皮肉なことだろうアレクサンドラの発言がトリガーだった。
「私の、聖女継承を目前に控えたタイミングであの女はハッキリと口にしました。七代目聖女シャルロット・モリガナは傀儡に過ぎず、ダンジョン聖教の実権は変わらず自分が握り続ける、と。そしてそれをもって委員会の尖兵組織として変貌させ、己の野望を果たす道具にする、と」
「野望……不老不死、そしてその先にあるこの世界の終わりを見届けたいっていう、アレか……」
「あの女がそのような願いを抱いていたなどとは私も知りませんでした。徹頭徹尾、アレクサンドラにとって私は操り人形に過ぎなかったというわけですね。ですが、その発言を聞いた私は……目の前が真っ赤になり。そしてその場で、やつを殺すべくスキルを放ちました」
暴力はまだ良い。耐えられた。それでもそこに愛があるのだと、シャルロットさんは思い込むことで耐えきっていた。
けれど直接的に"傀儡にするためだけに引き取った"と言われては……この人の精神はそこで完全に、ブチギレたんだな。
今まで押さえつけていた抑鬱、憤怒、憎悪、悲嘆。ありとあらゆる抑圧、ストレスがその一言で完全に臨界点を超えたんだろう。
そうして今のシャルロットさんが生まれたんだ。アレクサンドラを殺すためだけに生きていると、それだけが己の意義だと言ってしまうあまりにも哀しい、鳥籠の聖女。
《光魔導》で顕現する鳥籠も言ってしまえばそういうことでしかなかった。この人はずっと、アレクサンドラによって閉じ込められた鳥籠を壊すために生きているんだ。
陰鬱な空気が流れる。一人の少女に降り掛かった、凄絶な地獄を想うと目がどうしても潤んできてしまう。
愛知さんの物言いも理解できるよ。本当ならばこの人はもうこれ以上、戦うべきじゃない人だ。
真に安らげる場所、人に囲まれて心身を休めるべき人なんだ。そうなってしまうほどに、追い詰められているんだから。
アレクサンドラの師匠として、誰よりも責任を感じているのだろう神谷さんが、死にそうな顔色をしてつぶやいた。
「大聖堂内で起きたとされる、アレクサンドラ失踪のきっかけとなったスタンピードは……七代目様による、アレクサンドラへの反抗戦を覆い隠すためのカバーストーリーだった、のですね」
「そうなります。ダンジョン聖教大聖堂内での、聖女同士の激突などというのはあまりに外聞が悪いため、急遽でっち上げました。神谷様にも初代様にも、他歴代様方にもお伝えしなかったのは……」
「シャルロット、くん?」
「……私も、こう成り果てても聖女でありダンジョン聖教信徒です。聖女信仰を含めた宗教的威信を損なうことはしたくありませんでした。それに、初代様は私の曾祖母の、姉であることはアレクサンドラから知らされていました。この世でたった一人の血縁に、ダンジョン聖教を失望されたくないと思ったのは私個人の都合ですね」
「…………!!」
もはやこの世にたった一人だけだろう肉親を、ガッカリさせたくなかったと。そう語るシャルロットさんに、エリスさんは堪らず立ち上がり、そのまま彼女に抱きついた。
労るようなハグ。泣きながら、その健気さを労う曾祖伯母に……曾姪孫たるシャルロットさんは、戸惑いつつもその温もりにそっと、手を添えていた。
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