攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
エリスさんの抱擁を、優しく受け止めながらもシャルロットさんはなおも話を続ける。
明かされた地獄。4年間に及ぶ虐待の果てに臨界点を超えた彼女が、アレクサンドラに反撃を仕掛けた日。ダンジョン聖教はある意味で救われ、しかし非常事態に陥ったのだ。
「過激派を引き連れて失踪したアレクサンドラ。それゆえに本来ならば私に引き継ぐはずだった《聖女》も、未だあの女の手元にあります。やつが私を指して"偽りの聖女"としたのもある意味、本当のことでしょう」
「正式な継承を行わずして七代目に就いたシャルロット……なるほど、たしかに法的? 規則的? には、正式な聖女とは言い難いのかもしれないわね。本人の言動も、まあ聖女らしさとはかけ離れてるし。割と乱暴で雑だものねー」
「そういうことです、アンジェリーナ。ですが乱暴で雑というのは、がさつが服を着て歩いているようなあなたにだけは言われたくありませんね」
「何よー」
本来、ダンジョン聖教の象徴的な存在である聖女という存在に必要不可欠な称号、《聖女》。
継承の儀を行わずして袂を分かったシャルロットさんは、当然現在その称号は保持していない。つまりダンジョン聖教的には立場的には七代目聖女であるものの、その座に就くに必要な要件を満たしていないということになるのだ。
そしてプレーローマ・アンドヴァリの洗脳称号が、覿面に力を発揮したのもそれゆえだ。《聖女》に信仰心を持つ者に限り極めて強力な洗脳を施す権能……やつが称号を持ち逃げしたままならばなるほど、使うはずだよな。
アンジェさんも納得した様子でうなずいている。先程までのシャルロットさんの過去には怒り心頭の様子でいたのは彼女も同じだけれど、さすがにカラッとした性分なのかすぐに平静を取り戻している。
なんなら彼女に対して気の置けない軽口をも叩いているほどだ。シャルロットさんもそれに対して気軽なトーンで返しているし。
やっぱりアンジェさんとは一時期、共同戦線を組んでいたってところからも仲良しさんなんだな。それだけでもどことなくホッとするのは、それだけ彼女の過去が重苦しいものだったからだろう。
なんなら続いてランレイさんが、シャルロットさんについて口を開いた。
「しゃ、しゃ、シャルちゃんはそれでも、立派な聖女だよう、アンジェちゃん! 私達と一緒にサークルの人達を血祭ってた時も、く、クールな中にも思いやりがあったから!」
「怖ぁ……」
「人聞きの悪いことは言わないでください、ランレイさん。主にそうした行為に及んでいたのはあなた一人でしょう……私とて、単にアレクサンドラの取り巻きというだけで不必要に殺すことはいたしません。仕留めるべきは、あくまでやつ一体のみ」
「へうっ!? そ、そうかなシャルちゃん!?」
なぜにこの人、発言の度に不穏さが出るんだろうね。サークル構成員達を一緒になって血祭りしてたよね! とフォロー、フォロー? を入れたところ、即座に当の聖女様からいやそれあなただけ……と言われてしまった。
けれどこの二人のやりとりも、互いにどこか気安い印象は受ける。この分だと神奈川さんとも、あるいはステラとさえこんなノリでシャルロットさんは話すんだろう。
きっと、それは一般には友人関係と呼べる間柄だろう。シャルロットさんにもそういう人達はたしかにいて、そして今も彼女の支えになっているんだと思う。
見ればほんのり、薄く笑みを浮かべているからね、彼女。無表情でも穏やかな眼差し、それこそが本当のシャルロットさんなんだよ。
エリスさんが優しく抱きしめるなかでのそうしたやりとりに、一時はアレクサンドラへの怒りに満ちていた一同の憤怒も収まりを見せていた。
さて、そうして冷静になったところで考えなくてはならないことがある。
シャルロットさんの悪夢めいた過去。それを受けての現在、俺達はせめて少しでも彼女が報われるよう、そこから得た情報を活かしてプレーローマ・アンドヴァリを追い詰めることが求められるのだ。
すなわちやつの今後の動き、そしていざ相対した時にどう対応するか。
ここについては島根室長や郷田局長だけでなく、ヴァールやマリーさんも頭を悩ませるところみたいだった。
困った様子で話を切り出す。
「アレクサンドラの性格や性質、目指すところは概ね、プロファイリングできるとは思いますが……となると、次に何をしてくるのか。これが重要なところになります」
「狡猾、残忍、そして用意周到。しかしそれでいてプライドが高く、山形さんの挑発にも即座に乗るほどに自己愛が強い。やつ自身の目的を併せるとさて、どう出てくるのやら……」
「公平ちゃん。あんた的にはどう考えてるんだい? 実際にそのプレーローマ・アンドヴァリとやらと相対して、何かしらヒント的なものはあったりしたかえ?」
「ん……そう、ですね」
マリーさんに尋ねられ、俺も考える。というか、そのへんについてはこちらでもすでに演算済みなので、あとはどう伝えるかにかかっているって感じかな。
悪魔がここまで絡む事件だ、すでに島根室長さんや郷田局長さん、シャルロットさんや愛知さんも概念存在についてはそれなりに認知していると思われるけど……それでもシステム領域については絶対に話せないところだし。
私達周辺の事情、特にミュトスとウーロゴスの関係性については上手いこと誤魔化しつつ話そうか。
プレーローマ・アンドヴァリ。野心と野望に取り憑かれた火野の娘の次の行動は、やはりウーロゴスを完全に取り込み制御することだと思われる、とな。
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