攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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いともたやすく見破られるしょうもない逆怨み

「おそらくですが……プレーローマ・アンドヴァリは今後しばらく、己の手にした力をさらに進化発展させるべく動くものと思われます」

「手にした力、というと"神の力"とやらのことですね? 正直なところ馴染みはありませんが、神や悪魔といった超常の存在がいるというのは召喚系スキルの存在からも認知はされていますね」

「そもそもサークルにも悪魔が与しているとか。藤近の側近、新目伶玖もそうした存在の一体だとは、承知しております」

 

 俺の見立て、すなわちプレーローマ・アンドヴァリの次なる動きについての発言に、島根さんと郷田さんは念押しするように概念存在について確認してきた。

 元よりオペレータの召喚系スキルもあるんだ、そうした存在がいるというのは世間的にも、まあ馴染みは薄くとも非常識でない程度には知られているよね。

 

 ただ、実際にそんなのが現世社会に仇なす組織にガッツリ手を貸しているってところに想像が及んでなさそうではある。

 新目伶玖──アドラメレクを捕らえはしたものの、やつとて受肉して見かけは普通のおじさんだしな。

 実は元太陽神の現悪魔なんすよ! とか言っても信じがたいのは分かるよ。俺はうなずき、慎重に答えた。

 

「ええ。まさしく新目は悪魔で、アレクサンドラはそうした存在が持つ力を自らの体内に取り込んで、ヒトならざるモノへと変貌しました。プレーローマ・アンドヴァリ……やつ自身、そう名乗っているモノです」

「ヒトならざるモノ。なんともはや、異常事態ですな」

「……ただ、まだそれは定着していませんから取り除くことも今なら可能です。俺は、やつからその力を取り除くところを目標の一つにしたいと思っています」

「取り除く。すなわち神の力を得たプレーローマ・アンドヴァリから、単なるヒトのアレクサンドラに戻すということだな。山形さん」

 

 戸惑いを隠せないお二人だけど、それでもそのへんは呑み込んで俺の話に耳を傾けてくれる。

 大人として、組織の重役としての度量の広さに感服しつつも俺が個人的な目的についても軽く触れたところ、愛知さんが反応してきた。

 

 使用スキルの都合から概念存在にも明るいこの人も、神の力を得て概念存在のパチモンくらいには成り果てたあの女の末路は気にかかっているのかもしれない。

 プレーローマ・アンドヴァリを構成する力──ウーロゴス。すなわちミュトスの権能。それを取り戻すのはシステム領域側の目的であるのだが、それをそのまま言うわけにもいかないのでそれとなくお気持ち程度の話としてぼかしておく。

 

「はい。そうでないときっと、後味の悪いことになりそうですから」

「そうか……そうだね。アレクサンドラは私としても許せないし、心情的には今回の件をもって始末してやりたいとさえ思うけれど。現実的にはやはり、ヒトに戻した上で法の裁きを受けさせるのが妥当なんだろう。シャルロットの、気持ちはともかくとしてだが」

「…………シャルロット・モリガナ」

「……私は」

 

 アレクサンドラを殺す。その一心できっと今日までを生きてきたシャルロットさんに視線が集まる。ヴァールの、心配そうな声がやけに響いた。

 無表情のまま俺を見る少女。俺の目的、愛知さんとのやり取りを踏まえた上で、彼女はしかし、静かに目を瞑った。

 

 一秒、二秒、三秒。

 そして再び目を開けた彼女は、凪いだ瞳と穏やかな顔つきで、しっかりと俺に応えてみせる。

 やつをも救う。永遠に生きたいという夢を阻止して、ヒトのまま捕縛する。そんな方針への、理解を示してくれたのだ。

 

「私は、山形さんを支持します。もはやこの事件は私個人の私怨で動くべき範疇になく、ダンジョン聖教内部での話に留まりません」

「シャルロットさん……」

「加えて、やはり私ではやつをきっと殺せない。追い詰めるところにさえ至れないでしょう。あの女をどうにかできるのがあなただけであるならば、そのあなたが決めたことに私は従います。先日には命さえ救われた出来損ないの聖女としての、それがせめてもの誠意です」

「……あなたは、立派な聖女です」

 

 暴走はしていたのだろう。間違いなくこないだまでのこの人は、完全に私怨で動きアレクサンドラを殺すためだけに動いていた。

 けれど認定式でのテロが起き、やつがヒトをやめ、そしてシャルロットさん自身も半死半生の目に遭わされた今……もはや復讐によらず止めなくてはならない存在であると、感情を超えた理性と良心で判断したんだ。

 

 それはまさしく聖女としての高潔さの発露だと、俺には思えるよ。

 歴代聖女であるエリスさんも神谷さんも、涙ぐみさえしながら彼女を見ている。アンジェさん達だって優しい眼差しを向けていて、きっとこの話し合いが終わった後には彼女は温かな仲間達に囲まれるのだろう。

 それで良い、それが良い。プレーローマ・アンドヴァリのことは俺に任せて、この人はこれまで奪われてきたありとあらゆる幸せを享受すべきなんだ。

 

 そして、それゆえに。

 あんなヒトでもなければ神でもないようなモノも、さっさと終わらせてやるべきなんだ。

 その思いで俺は、やつの今後について核心的なところを語った。

 

「プレーローマ・アンドヴァリの目的を考えると……たぶん、今後も散発的にこの国の首都圏で活動すると思います。少なくともこのまま黙って姿を消すことはないのかなーと」

「ふむ? その心は」

「理由は三つ。一つにサークル残党や過激派を率いての活動をする必要があるのと、もう一つに自身の力を高めるため。そして最後に、やはり──ソフィアさんとエリスさん、それともしかしたら俺をつけ狙うため、でしょう」

 

 断言は控えるが、これはほぼ確信に近い推測だ。プレーローマ・アンドヴァリは間違いなくこのままこの首都圏で活動し続けるだろう。

 手にしたウーロゴスを取り込み、定着させて神へと至るため。従えている者達に暴れる場を提供するため。

 そして何より、気に入らない者達をまとめて始末するために。あの女の行動原理そのものは、至ってシンプルと言えるからね。




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