攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
現状、プレーローマ・アンドヴァリは未だヒトを超えたモノにはなりきれていない。精神的な話とかでなく、存在的な意味としてだ。
単純明快な話、手にした力が魂に定着しきっていないんだ。
ウーロゴスとはそもそもの由来からして神の権能。それも異世界の存在である水の女神ミュトスの権能という、極めて特異なストレンジャーだ。
一朝一夕で簡単に身につくものでないのはわかりきった話だった。
「加えて、やつがまだ取り込んでいないウーロゴスも複数あると思われますから……それらすべて、あるいはいくつかを追加で取り込もうとするなら余計、定着までに時間が掛かるでしょう」
「つ、つまり……アレほどの力であってもまだ、やつは未完成状態だというのか? 山形さん」
「ええ。とはいえ戦闘力の話というよりは、あくまで魂的な格の話です。やつが目指しているだろう神の領域にはまだまだ届いてませんからね」
愛知さんの質問に答える。そう、プレーローマ・アンドヴァリ──火野アレクサンドラはまだ未完成だ。
戦闘力そのものは神に匹敵するものがあるだろうけど、肝心要の権能がまったくその領域に到達していないんだね。
一通りの機能は使えるようだけど、出力がまったく足りていない。空間転移にしろスキル封印にしろ洗脳の権能にしろ、現状だと制約がキツすぎてそう長い時間、あるいは頻繁には使えないだろう。
あの女が望んでいる地点に至るためには、もう何割か強度がないと至れまい。
代わりと言ってはなんだけど、不老不死のほうは極めて完成度が高い状態に陥っていたあたり、やはりやつは己の野心、夢、念願を叶えることにのみ注力していると言わざるを得ない。
星の、宇宙の終わりを見届けたいという願い。そのためだけにすべてを利用してきた女だからこそ、手にした権能をまずは何よりも先にそこに振るのはある種の必然なんだろう。
そうした視野の狭さこそ、何よりもアレクサンドラが結局ヒトなのだという証明にしかならないとしても、だ。
アレクサンドラの人間性にまで踏み込みつつも、持論を展開する。
「……加えてやつには大勢の部下がいます。過激派構成員達に、もしかしたらサークルの残党も合流しているかも知れない。やつらを有効活用しようとも、プレーローマ・アンドヴァリは考えているはずです」
「認定式と同様のテロリズムに、再度手を染めると?」
「こちらを足止めするためだけにですね。やつは、俺がウーロゴスを引き剥がしに来るつもりだと知っています。それより先に手にした権能と不可分になるまで魂を混じり合わせてしまいたい、できれば残っているウーロゴス達とも。そう考えているでしょうから」
「アレクサンドラは山形さん、チェーホワ統括理事、そして初代様を強く意識しています。とりわけ山形さんに対しては、虚仮にされたと思ったのか強い復讐心を感じましたね。なるほど、そのこともあってどこかへ高跳びの可能性も低いというわけですか」
プレーローマ・アンドヴァリの心情を推測しつつの今後の予測。島根室長にも応えつつ述べていく俺へとシャルロットさんが声をかけた。
どこか感心というか、畏怖も混じった声色だ。弟子としてアレクサンドラを見てきた彼女からしても納得のいく予想を、やつとほとんど関わりのない俺が言ってのけたことに戸惑っているのかも知れない。
まあ、こういうとアレだけど多少はそうなるように仕向けたからね。
あの女にしつこく説教めいたことを言ったり挑発なんかしたのも、あえて狙われるようなことを言ったのも一応の次善策だった──あの場で捕らえきれず逃げられた際、次にやつの取る行動を少しでも絞れるようにするための。
結果として相当食いつきは良かったし、そうなると今言ったみたいな推測も妄想ではなく予測に変えられるってわけだ。
何かに気づいたんだろう、葵さんが目を見開いてつぶやいた。
「山形さん、もしかしてそうなるまでアレクサンドラを誘導したりしました? 思考誘導的な……」
「どうでしょう? ただ、やつが異様にプライドの高い性格だとは思ってます。そしてそういう者ほど、自分を舐めてきた相手から完全に逃げるようなことはしないだろうとも」
「…………さすがだな、山形公平」
あんまり人聞きの悪い話を肯定したくもないため、曖昧な物言いで迂遠に話す。ヴァールが、呆れとと尊敬ともつかない一言を漏らしたのが静かに会議室にて響いた。
いやーぶっちゃけ認定式で最初に出くわした時点で、あの女が俺のことを極度に警戒していたのは分かってたしね。話がどう転ぼうが、少なくとも俺のことは放置できないだろうとは踏んでいたんだよ。
そこに加えて先日相対した際のやり取りで、思っていた以上に短絡的というか、報復感情の強めな性格だってのを知ってあえて挑発的な言動をいくつか重ねたところはあった。
本人的に神に至れたと思っていたのを、いやそんなん神じゃねーしヒトでもねーし、おまえ一体何してんだ的なこと言われて、しかも実際に無敵のはずの自分を圧倒される。
さぞかし悔しかったろうし、さぞかし俺のことが憎いし恐ろしいだろう。ことによっては、ソフィアさんやエリスさんを差し置いてでも真っ先に殺してやりたいほどに。
人心を操ったなどとまではとても言えないし、誘導目的ばかりでなくあの女に言った言葉はすべてが本音だけれど。
その表現、出力方法については多少、打算的なものを入れたのはたしかだった。
「公平さん、たまに策謀してきますよねー。人畜無害な言動からしれっとそういうことかましてくるの、なかなかのなかなかですよー」
「さすがだぜと、公平サン! これなら野郎の行動もかなり絞れるぜ!」
「瞬時にその者の特性を理解し、言葉でもって制する力……! おおおこれこそ救世主式言霊法とでもいうべきでしょう! これは細部はもちろんぼかしつつけれど信者達にも伝道しなければメモメモメモりメモメモメモり!」
「えぇ……?」
若干苦笑いしているリーベや、相変わらず俺のこと全肯定気味なシャーリヒッタはともかくとして、謎のネーミングをかましつつ全力でメモを取る伝道師さんがあまりにも伝道師さんすぎる。
怖ぁ……一同みんな微妙な顔で香苗さんを見ているよ。空気は緩んだからいいアクセントにはなったけど、代わりに若干のカルト感が漂ってきたのはなかったことにしたい。切に。
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