攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
俺の見立て、それそのものだけを論拠とするわけにはもちろんいかない。プレーローマ・アンドヴァリの今後の行動については引き続き警察やWSO側でも懸命な捜査が行われることになるだろう。
とはいえ、やつを捕捉できればそこからは俺達の出番だ。特にウーロゴスが出てきた日にはミュトスしか対応できる存在がいないため、彼女はどうしたって前線に出張ることになるしね。
とりあえずは捜査次第ということで、俺達はひとまず動きがあるまで平穏に日常を送る方向で話がまとまる。
こないだの悪魔アガレスみたく、学校だろうがどこだろうが問答無用で襲い掛かってくるようなのがいるかも知れないけれど……あんまりなことをやるようならその時は俺が責任をもってどうにかしよう。
特に無関係の人々を巻き込むのは絶対に赦さない。当たり前だけどね。
そんな決意を内心にて固めつつも、島根さんの司会で進行する会議を静かに眺める。サークルについて、過激派についてを話し終えた今、残る議題はただ一つだった。
「……それでは最後に。今回の件でサークルにAMWを提供していた軍事産業会社ウラノスコーポレーションに対し、WSOが主導になって行った捜査についてお話しいただきます。捜査の指揮を執られたWSO事務総長、グェン・サン・スーン氏です」
「ホホホホ。いよいよ老体の出番ですなあ」
ノイエヴァルキリー、ルートディバイダー、そしてマキシムとミレニアム。この四つのAMWをサークルに譲りその活動を助長していた、ウラノスコーポへの捜査実施とその結果について。
サン・スーンさんがいつの間にやらアメリカにまで行って指揮しており、これからその仔細が語られようとしているのだ。
好々爺らしい笑い声をあげて、人の良い笑みを浮かべる老翁。
俺の父ちゃんの飲み友ってこともあって、見かけは完全に優しいお爺さんなんだけど……マリーさんや神谷さん、ヴァール曰くこの人がかなりの曲者らしいんだよね。
WSO事務総長って時点で辣腕なのは納得なんだけど、さらに何かあるのだろうか? 興味もあり、殊更に耳を傾ける。サン・スーンさんはにこやかな笑みのまま、そして話し始めた。
「資料にも載っておりますが先日、私は渡米して現地警察及び全探組、並びに能力者犯罪捜査官と合同でニューヨークにあるウラノスコーポレーション本社に突入し、強制捜査を行いました。そしてエドウィン・ブドレドCEOはじめ役員全員とAMW開発部門スタッフ、元スタッフを全員確保し事情聴取を行うに至りました」
「ずいぶんと強引に行ったんだねえ。アメリカ政府が抗議とかせんかったんかえ?」
「ことは国際犯罪ですからなあ。むしろ協力的でしたとも。それにウラノスは大手ですが所詮は一企業、政治的なデメリットを無視してまで関わりたいとは、大統領も思わなんだようですよ」
「と、言いつつ大統領と取引をするくらいはしたのでしょう? サン・スーンさんの手口はわかっていますよ」
「ホホホホ! いやはや人聞きの悪い。大統領とはたしかに個人的付き合いはあるが、それとこれとは話が別だとも。至って"ビジネスライク"に、ことは進めたよ五代目殿。ホホホホ!!」
「怖ぁ……」
ヤバい、思ってたより黒そうだ。まさかのアメリカ政府とアレコレしてそうな気配を醸したサン・スーンさんに思わず顔がひきつる。
大手企業の経営陣を軒並み確保して取り調べをするとか、いくらWSOでも強権的すぎる。アメリカ的には普通に内政干渉だってキレそうなところを、この人は裏取引的なアレで無理に黙らせた感じがひしひしとするよ。
ヴァールが頭を抱えてため息を吐くのが見えた。すごい、この後の処理とか始末とか対応で胃を痛めてそうだ。
きっとこれまでもこういったことはいくらかあったんだろうなあ……マリーさんや神谷さんまでもが呆れた目で彼を見るあたり、それが伺えるよ。
統括理事として、その手口のあまりの乱暴さにヴァールが苦言を呈した。
「まったく、レベッカからいらない手口ばかり覚えてくれる……とはいえ、何もかもストレートかつ強引な彼女に比べればまだ常識的とは言えるか。しかし裏道から手を回すお前のやり方では、どうしたところで誤解は免れまい」
「ホホホホ! 我が永久の師のようなことはさすがにできませんよ。ま、このようなやり方でもスマートにことが運んだでしょう? 結果良ければすべて良しとは、我が心の友である正彦が酒の席で叫んでいたことですとも」
「父ちゃん!?」
「一般人に擦り付けて正当化を図るな!」
なんてこと叫んでるんだと、いきなり飛び火してきたうちの父ちゃんに頭を抱える。
俺のほうを見ながら言ったあたりサン・スーンさんめ、話を混ぜ返すのに俺と父ちゃんを使ったな! ヴァールも思わず一喝してるじゃないか。
まあ、たしかにスムーズにウラノスにメスが入ったのは事実だから、サン・スーンさんの物言いにも理はあるんだけれど。
それはそれとしてやり口が大分アレだな、辣腕ってこういうことか……と、嫌な納得とともにWSOの政治家としての彼を概ね、理解した俺ちゃんであった。
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