攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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現世利益に満たされた者ほど、超常の力に目が眩みがちなところあるよね

 予想以上にやり手な面を覗かせつつ、ウラノスコーポへの捜査について話し始めるサン・スーンさん。

 ことは現在進行系で取り調べを行っている最中のこと、暫定的な報告に近いらしいのだけれど……それでもいろいろ、興味深いことが分かってきたという。

 

「実際のところ、ウラノスと委員会のつながりは思っていた以上に深く太いものだったようです。遡れば35年ほど前、AMW計画が始動した頃にはもう、連中からの技術支援を受けていたとのこと」

「やはりスキルブースト・ジェネレータか。以前、別の悪魔からも情報提供があったのと一致しているな」

「まさしく。エドウィンの父、先代CEOのマーク・ブドレドにも話を聞きましたが……若かりし頃、委員会からの使者と名乗る者から一方的にスキルブーストについての理論を提供されたと言っていました」

 

 明かされた内容はある意味、予想通りのものだった。

 AMWに内蔵されている超テクノロジー、スキルブースト・ジェネレータ。元より人間だけの手によるものじゃないだろうと踏んでいたその機構は、やはり委員会からもたらされた技術だったらしい。

 

 明らかに現在の地球人類の技術力では開発できないだろうそのジェネレータは、そもそもスキルの増幅って時点で相当な厄ネタではあったからね。

 人間だけで開発したって言われてもマジかよ……って本気で驚く話だし、むしろ概念存在のテコ入れがあったのはそりゃそうだろって感じだったり。

 

 現世存在の技術力を低く見る気はないけれど、さすがに現時点ではまだ、システム領域謹製のプログラムに手を届かせられるほどではないはずだと思っていたから納得できる話だよ。

 

「マークはその際に概念存在についてを知り、また委員会が大ダンジョン時代の終焉と、その先にある新時代を目指していることを知り、一計を案じたといいます」

「AMW計画の真実だな……対モンスター用と偽り、その実は委員会側に与する能力者を討つための武器を用意する。それが、ウラノスコーポなりに選んだやつらとの戦いだったというわけだ」

「若い頃から驚くほどに誠実だった男です。武器商人だからこそ、せめて心根は立派でいたいという信念を貫き通してきた彼だからこそ、私はそうした証言には信憑性があるように思えましたよ」

 

 当時のウラノスで一番偉い人だったという、今の一番偉い人のお父さん。マーク・ブドレドさんについてサン・スーンさんが語る。

 たしか……AMW計画を起ち上げた裏で、対委員会の構想をも練っていたという方だったかな。委員会に利用されつつも逆に利用してきた、ある意味陰でずっとやつらと戦ってきた人だと先日聞かされた覚えがある。

 

 WSO事務総長にも登り詰めた人にここまで評価されるその人柄。AMW計画の真意が本心からのものならば、間違いなく立派な人なんだろうね。

 あるいはWSOが預かっているAMWの存在も、その証拠の一つに数えられるかも知れない。俺はそっと、視線を葵さんに向けた。

 

「ハッハッハー。まあマキシムやらミレニアムやら、あるいはフーロイータ見てたらなんとなく察しはついてましたけどねえ。どう考えても人間相手を想定してますよねこれ、的な」

「はっはっはー! やっぱりワル由来のワルワル武器でした! でもそれを正しいことに使うために、ウラノスは私にフーロイータを授けてくれたんですね!」

「たしかその槍がWSOに渡った時はまだ、マーク・ブドレドがウラノスを仕切ってた頃だったからねえ。ファファファ!」

 

 エリスさんと葵さんの師弟に加えてマリーさんがそれぞれ、相変わらずの笑い声をあげてフーロイータを見た。ごてごてした機械の取り付けられた、大型の突撃槍。

 AMWそのものの成り立ちからして委員会の手が入っていた以上、この槍も元々は人殺しを目的にした武器ということになる。

 

 けれど今は、葵さんによって立派な社会秩序維持のために振るわれる、正義の槍だ。

 そこにもやはり、マークさんが思い描いていた"真のAMW計画"の理念が垣間見える。

 

 ……ただ。それと同時にサークルにもAMWが渡っていたという現実もある。

 委員会に面従腹背だったマークさんと異なり、今現在のCEOであるエドウィン・ブドレドは、完全にやつらに屈服して恭順を示し、その一環としてAMWをサークルにも渡したのだという。

 

「しかして、息子のエドウィンは……マークが嘆いていましたが、強欲すぎたようですな。CEOとして概念存在というものを知り、その強大な力に魅せられ服従したようです。あっさりとAMWを引き渡し、挙げ句マークとその妻、つまり両親を軟禁状態に追いやっておりましたわ」

「親にそんなことまでしてたんですか!?」

「左様。アメリカの片田舎、物々しい警備までつけて厳重に"檻"を守っておったよ。なかなかの親孝行ぶりに乾いた笑いが止まらなんだ、ホホホホ!」

「えぇ……?」

 

 愉快げに、けれど瞳は笑っていないまま笑うサン・スーンさんが怖い。息子のエドウィンがやらかしたことに、率直に呆れと怒りを覚えているのかな。

 たしかに無茶苦茶だ、両親を監禁してまでウラノスを委員会に売り渡すなんて。それだけ概念存在の持つ力や権能は人々にとって魅力的なのかも知れないけれど、だからってやることが極端すぎる。

 

 プレーローマ・アンドヴァリもだけど……ヒトならざるもの、永遠の命とか意識、あるいは強烈な権能や権威ってのは、そんなにも人を惑わせてしまうものなんだな。

 聖女だとかCEOだとか、現世にあってはそれこそ押しも押されもしない紛うことなき上流階級の人達だったんだろうに。それをもかなぐり捨ててまで、神や悪魔に近しくなりたかったのだろう。

 

 怖いけれど、それもまた人間なのかも知れない。

 俺は静かに、そんなことを内心で思っていた。




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