攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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奇跡を起こせ、天使の光翼

 俺やリーベ、ヴァールの提案を、シャルロットさんは怪しみながらもうなずき応じてくれた。

 苦痛から解き放たれたかったというのもあるだろうし、身体に刻まれた無数の傷跡を消したかったのもあるだろう。けれど本人としては他にある理由こそが一番大きい部分のようだった。

 

「アレクサンドラとの戦い、そこに少しでも食らいつくためにも。生きているだけでも痛みが走る現状でなく、より性能を発揮しやすい状態のほうが望ましい。ぜひともお願いしたく思います」

「食らいつくって……そこはともかく、まずは身体のことを気にしないと。余命のことだって」

「初代様、そのようなところはどうでも良いと考えます。元より出来損ないの聖女ではありますが、せめてあの女の始末さえ果たせれば残りの時間など長かろうが短かろうが」

「良くない! ……良くないよ、シャルロットくん……!!」

 

 あくまでもプレーローマ・アンドヴァリさえ倒せれば。そしてその果てに、ダンジョン聖教聖女としての最低限の務めさえ果たせれば。

 あとに残るものが、余命幾ばくもない命だけだったとしてもそれで良い──そう語るシャルロットさんに、エリスさんがとうとう声を荒げた。

 

 自分の妹の子孫が、もはやあと10年程度しか生きられないところまで痛めつけられて。しかもそのことを半ば受け入れている姿は、まさしく目を覆いたくなるような地獄の状況だろう。

 涙すら流しながらシャルロットさんを抱きしめる彼女。二人の姿に、俺とリーベ、そしてヴァールは顔を見合わせた。

 

「絶対に治し切るぞ。《医療光粉》はリーベに任せる、細かな調整はヴァールで受け持ってあげてほしい。因果関係の制御は俺が行う以上、万に一つもしくじりはないからそこは安心してくれ」

「任せてくださいー! こんなことになっている人、救わなかったらリーベちゃんの名が泣きますよー!!」

「ワタシはともかくソフィアの名もな。ひいては"歴代達"の志さえ受け継いだ身として、目の前の命を見捨てることだけは絶対にしない」

 

 必ず救う、その一心でうなずく俺達。

 《医療光粉》、リーベにのみ与えられたそのスキルはマリーさんの肝臓さえも寛解せしめたほどの出力を持つ。そこにヴァールのサポートと後詰めに俺の因果操作があれば、生きている限りはどんな怪我であれ絶対に癒してみせるとも。

 

 エリスさん、神谷さんもまた力強くうなずいた。ダンジョン聖教聖女としてでなく、ただ一人のかけがえのない命──少女シャルロット・モリガナを助けてほしいと、その目は切実に訴えかけている。

 言われるまでもない! リーベが光の翼を発現させ、神々しくも優しい鱗粉をシャルロットさんに向けて温かく放出する。

 精霊知能リーベ専用回復スキル、《医療光粉》の発動だ。

 

「それじゃあさっそくですが行きますよー! 《医療光粉》!! シャルロットちゃん、痛みはないので素直に癒されちゃってくださいー!」

「後釜、マリーの時と一緒だ。ワタシがシャルロットからヒアリングしつつ、触診で重篤なところを割り出すのでお前はそこに目がけて出力を調節してくれ」

「神魔終焉結界! ……出力トチったら俺がロールバックさせるから思い切りやってくれ。こちらでもシャルロットさんの容態は観察しておく」

「よろしくお願いしますー!!」

 

 発動する癒しの光。リーベが主体となって放つスキルを、俺とヴァールで全力補佐する構え。

 すなわちシステム領域はコマンドプロンプト、および精霊知能によるコンビネーションだ。これで治せなかったらさすがにアレクサンドラにドン引きするわ、もうしてるけど!

 

 《医療光粉》がシャルロットさんを包み込み、その全身、服の下の肉体に刻まれた傷跡に作用していく。

 先日少しだけ見た、あの傷だらけの腕のような状態に全身がなっていたとしても……問題ない。ヴァールが彼女の腕や体のあちこちを軽く触り、痛みの加減を尋ねて確認する。

 

「シャルロット、特に痛むところはあるか? 少し苦しいだろうが今しばらくだ、どうか堪えて答えてほしい」

「……脇腹のあたりと、下腹部が痛みが強いです。ですが、信じられない。いつも全身に絶え間なくある痛みが、驚くほどに緩和されていって……こ、これは」

「緩和では済まさん、必ず消し去るとも。山形公平、あなたの感覚から言って彼女はどうだ?」

「ああ。今言った部位に加えて右足のアキレス腱あたり、左肩、それに頭部も外傷こそないがかなり傷んでいるみたいだ。《医療光粉》の効きがそのあたり、特に悪い」

「分かりました! それならその部分により重点的に効果を偏らせて、そちらから対処を施しますよー……!!」

 

 さっそく効果を発揮している治療スキルが、シャルロットさんの身体からおぞましい傷を瞬く間に消し去り癒していくのが俺の、コマンドプロンプトとしての感覚からも見て分かる。

 痛みを感じない、という普通ならば当たり前の状況がこの人にとっては新鮮なのだろう。癒されていく感覚に戸惑いと恍惚を隠しきれない少女の姿に、たしかな手応えを感じるよ。

 

 だが、やはり顔を除くほぼ全身にくまなく相当なダメージが刻まれているようで、とりわけ今言った部位は深刻なことになっているように感じられる。

 おそらく、シャルロットさんの余命を大きく削っている損傷部分だろうな。

 

 ここまでのことをよくも、こんな少女にしてみせたなアレクサンドラ……!

 改めてやつへの怒りを積み上げながらも、俺はヴァールとともにリーベの《医療光粉》のナビゲートを続けていくのだった。




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