攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
癒やされていくシャルロットさん。俺の見立てとヴァールのヒアリングによって微調整されたリーベの《医療光粉》は見事なもので、瞬く間に少女の傷を消し去っていく。
それと同時にシャルロットさんの顔がどんどん穏やかで、静かなものになっていっているのが分かり……立ち会っていたエリスさんや神谷さんが息を呑んだ。
「シャルロットくん……!!」
「七代目様! お加減はいかがですか? どこか、苦しいところはございませんか!?」
「だ……大丈夫、です。むしろ、かつてないほどに清々しい、解放感があります。痛みが、な、なくなって……っ」
信じられないのだろう、今、自身に起きている現象が。いつになく狼狽した様子でつぶやくシャルロットさんの瞳から、滂沱の涙が溢れ出てきている。
意識的なものじゃない。無意識のうちに、常時感じていたという痛みによって抑圧されていた心が歓喜に咽んでいるんだ。
もう自分でも死ぬまで、わずか数年しかない残された時間をただ苦痛に苛まれつつ生きていくだけだと覚悟していたこの人にとって、それはどれだけの救いだろうか。
喜びとか嬉しさとかより、哀しさや惨さ、痛々しさが見ていられない。釣られて俺まで泣きそうになるのをぐっと堪えて、俺はせめて彼女の心を落ち着かせようと光った。
「シャルロットさん。大丈夫、あなたを縛るものはこの世にない」
「! しゃ、シャイニング……山形……!!」
「アレクサンドラに刻まれたソレは、あなたを縛る悪夢の鎖。それから解き放たれる今、あなたは何にも苦しむ必要はもうないんです」
「後遺症とか余命とか、そんなの全部吹き飛ばしますよー……っ!! 命を救えるこの力は、こういう時のためにあるんですからー!!」
光る俺を呆然と、泣きながら見つめるシャルロットさん。凝り固まっていた感情に支配されていたゆえの無表情が消え、無垢な少女のあどけない幼い顔を覗かせている。
これが、本当のシャルロット・モリガナさん。アレクサンドラに囚われ、痛めつけられた挙げ句鳥籠に押し込められた聖女の、本来の姿なんだ。
それを見て、リーベが一層奮起してスキルの出力を高めた。《医療光粉》は扱いの難しい力で、肉体が持つ再生能力を活発に高めるものだから、重度の損傷を癒すって場合になると出力ミス一つで肉体を暴走させてしまう恐れがある。
普通の怪我とかなら雑に鱗粉を振りまいてたら良いだけなんだけどね。だからマリーさんの時も今も、ヴァールのサポートありきで使っているわけだった。
────だが、シャルロットさんの肉体はもうほとんど治り終えている。重篤だったいくつかの部位も問題なくなっているし、全体的に見れば多少、ダメージを負っているだけの状態にまで漕ぎ着けた。
こう言うとなんだけど、さすがに若さというやつだな。元より新陳代謝が活発な年代というのもあり、スキルの効きがそもそも覿面に良い。
これなら全身完治に到れるな。リーベが最後に一際、えいやっと翼をはためかせた。
そして柔らかく優しい光と風に包まれた少女へと、俺達みんなで呼びかける。
「あなたを縛る鎖なんてない、あなたは自由だ! 寿命だって戻ったし、これからどんなふうに生きてどんなふうに変わっていっても良い!」
「だから諦めるな……幸せになろうとしてくれ。誰にだってそれを求める権利は与えられているのだ、シャルロット」
「どんなに暗い闇の奥底でも! 光とともに風は吹きます!! 澱んだ歪みを照らして吹き飛ばす、救世主の風があなたにも吹いていますよーっ!!」
「ここに来て使徒発言!?」
ヴァールに続いてのリーベの発言にたまげる。肝心なところで伝道師的ムーヴかますの止めろや!
思わずツッコミを入れつつも最後のひと押し、シャルロットさんのすべての傷とダメージが消えていくのを確認し、俺はリーベに合図する。解除される《医療光粉》。
シャイニング俺のシャイニング光も収めれば、何事もなかったかのように静けさと普通の部屋の光景が戻ってくる。
前後で変わったのはたった一つ……シャルロットさんの、容態だけだ。
「どうですか? シャルロットさん。どこか、痛みや違和感のある箇所は?」
「……あり、ません。いえ、ありえないほどに身体が軽い、生命力と気力に溢れている今のこの状態は、違和感しか覚えていませんが」
「それが本来のシャルロットさんです。あなたは、これまでずっと当たり前の自分を、奪われ続けていたんですよ」
見た目は何一つ変わらないシャルロットさん。だけど俺だけじゃなく、この場にいる誰もが理解しているだろう。別人だと。
生命力。気力。おそらくは体力も。これまでアレクサンドラによって極限まで削られていたそれらが復活したことにより、彼女は実質的に超パワーアップを遂げたのだ。
すさまじいエネルギーを感じるよ……元よりこの人はA級探査者だったけど、今はもうS級にも匹敵する力を有しているように思える。
これまで枷をつけていたようなものだったのがすべて解き放たれた、逆境を乗り越えたことで一気に潜在能力も開放されたのかもしれない。
「こんな、ことが……今までの2倍、3倍にも思える力が。これが本来の、私」
「見違えた……! こ、この力の威圧感は、出力だけならば間違いなくS級クラスはある」
「シャルロット様の傷が、本来の力さえ封じていたのですね……」
手を何度も握り、開き。己の身体の感覚を、徐々に精神と合一させるシャルロットさん。
初代聖女と五代目聖女はその様を見て、ただひたすらに瞠目して驚いていた。
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