攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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高鳴る鼓動よ、鳥籠を壊せ。すべて解き放たれし自由のために!

 さておきダンジョン探査は続く。階層8、総部屋数12とこじんまりした規模なだけに、この調子なら数時間で帰還まで漕ぎ着けるだろう。

 アンジェさんとランレイさんがさっきの部屋を受け持ったため、今度はシャルロットさんと愛知さんが代わりにモンスターと戦うことになっている。

 

 愛知さんはともかくシャルロットさんの、完治後の実力を俺達も把握しておきたかったのでこちらとしても都合がいい話だ。

 ライダースーツの愛知さんに法衣のシャルロットさんが前を行く。それぞれ、すでに臨戦態勢を整えていた。

 

「条件は2つ。一つ、ダンジョン内であること。一つ、戦闘に参加させること──以上をもって発動せよ、スキル《召喚》! 来たれ、概念存在ガーゴイル!!」

『────ぐごごごごごごごっ!!』

 

 スキルによる召喚を行使し、動く石像とでも言うべき概念存在を喚び出す愛知さん。ガーゴイルかあ、ゲームとかで見たことはあるけどこんなんなんだなあ。

 悪魔的な、あるいはドラゴン的な容姿とも言える灰色の姿で、召喚コストの少なさ、容易さとは裏腹にかなり強力な個体のように思われる。

 

 当たり前だけどいろいろ喚べるよなー、この人。手札の多さで言えば過去、見てきたどんな探査者にも優るかもしれないよ。

 単なる戦闘要員だけでなく移動や回復、はたまた偵察なんかにも適したモノを都度、都合に合わせて扱えるのが召喚スキル保持者の一番の強みと言える。

 その概念存在に認められなければいけない、というハードルはあるにせよ……愛知さんの場合はさすがS級なだけあって、様々なモノ達と出会い、喚ぶことを許されているだろうからそこは問題にならない。

 

 おかし三人娘の一人、召喚スキル保持者のアメさんが目指すべき頂点は、間違いなくこの人だ。

 今度お会いしたら、軽く愛知さんについてお話してみるのも良いかも知れない。何か彼女にとっても大きな、ヒントが隠されているかもしれないしね。

 

「シャルロット、君はなるべく前線に出るな。私が護ってみせるから」

「はあ。いえ、あの……お気遣いいただかずとも私は万全です。回復後の実力も試したいので、戦闘には参加したいのですが」

「尊重はするが、気乗りはしないな。君はもう、戦闘から離れて穏やかに日々を過ごして良いはずなのに」

「ずいぶんな変わりようですね……」

 

 そんな愛知さんだけど、相変わらずシャルロットさんに対しては明らかに態度がおかしい。めちゃくちゃ過保護というか、彼女が戦闘行為に参加することを極端に嫌がっているようなのだ。

 これには当の聖女さんも大いに戸惑い、困惑しているほどだ。リーベによる治療後、初の戦闘ということで実力をたしかめたい彼女に、愛知さんは見るからに分かりやすく渋面を浮かべていた。

 

 思うに、愛知さんは愛知さんで何やら過去がおありなんだろう。シャルロットさんの過去を聞き、心配に思うのは当然のことなんだけどこの人の入れ込みようは突然かつ極端だ。

 かつては公安警察側として、速やかに捕縛して国外追放させようとしていた人がこうまでなるからには、何やら複雑な事情があるのだと察せざるを得ないよね。

 

 ただ、それはシャルロットさん本人には関係の薄い話だ。この人は今も変わらず、アレクサンドラとの決着をつけたがっているのだから。

 殺すつもりはもうないにしても、過去の清算のため。そして何より聖女としての使命のため……あえて戦いの道を選び進もうと決意したのは、誰でもないシャルロットさん自身だ。

 

 その想いまでをも止める権利は誰にもない。俺にも、愛知さんにも。

 せめてできることは、この人が無事に生きて戦いを終え、その後に幸せな日々を送れるようにサポートするだけなんじゃないかなって思うかな、俺は。

 周囲の思惑はともかく、とシャルロットさんが一歩踏み出した。もう次の部屋で、中にはモンスターがいくらか屯している。

 

「……お気持ちはありがたく。ですが私はダンジョン聖教七代目聖女。傀儡として育てられた出来損ないであっても、据えられた地位が今、私にあるすべて」

「そんなことはない……! 地位や立場など関係なく君は君だ!」

「それでもです。他に何もない、私はただの孤児なのですから」

「シャルロット、あんた……」

 

 吐露する、心情。シャルロットさんの苦悩の欠片が垣間見えて、俺達は口を噤みじっと彼女を見る。

 最初からここに至るまでずっと、アレクサンドラの都合によって形成されるしかなかった人。それが七代目聖女シャルロット・モリガナだ。傀儡としてやつに操られる、それだけを望まれていたんだな、この人は。

 

 だけど、それでもと彼女は部屋へ踏み出した。

 背中に宿るのは悲壮感ではない、静かな決意、そして闘志。やけっぱちでこれまでを振り返っているのではなく、これからを見据えての振り返り。

 彼女のエネルギーが高まる。スキルを放つ、準備が整う。彼女の心象風景を模した、輝ける鳥籠が顕現していく。

 

「……それでもここからは、これが本当の私です。嘘偽りなく、最後の最後まで生き抜いてみせるために。どんな形であれ、生まれたからには死ぬまで生きるしかないのですから。《光魔導》」

「シャルロットさん……!!」

 

 鳥籠の中、シャルロットさんが宣言するそれは訣別だ。

 過去との、自分との。そしてアレクサンドラとの。本当の自分、ありのままの自分としてこれから先を生きていく彼女の、真の力が今、ここに示される。

 

 鳥籠に罅が入った。彼女を縛るすべてが壊れ、その心が再構築されていく。

 輝ける破片が霧散し、新たな光を無数に煌めかせる。

 それはまるで、星のように。シャルロットさんの周囲を飛び交い、そして彼女の意のままに動いていた。

 

「鳥籠さえも壊して、この鼓動の赴くままに。自由よ来たれ────プリズンブレイカー・オールフリーダム!!」




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