攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
スターライトリバティ・ミーティアサジタリウス。
おそらくはかつて使用していた鳥籠時の技、バードケージ・プリズンサジタリウスが心象風景の変化とともに新生したのだろう。似通う点を持ちつつもしかし、その威力は大幅にアップしていた。
「あの無数の星、シャルロットの意思で自在に動くのか。しかも一つ一つをかなりの精密さでコントロールできる、と」
『そうだね、私の千尋。あの子すごいよ、とんでもない制御力と想像力だよ。腕を100本増やして、しかもそれらを過不足なく全部動かしきってるようなものだもの』
「鳥籠の時よりも汎用性は高そうだ……見るに威力も相当ある。範囲と火力を備えた、これが新たなるシャルロット・モリガナか……!」
神奈川さん、ステラ、愛知さんによるコメント。それらは俺の見解と概ね似通うもので、つまりは誰がどう見ても今の彼女が超パワーアップを遂げているということを示している。
特にステラ、腕が100本云々は結構わかりやすいかもな。実際はサイキック的な思念での操作なんだろうが、スキルの仕様から考えるとシャルロットさんの感覚としてはもっと、肉体に根ざしたものも付随しているはずだ。
ある種のマニピュレータが、鳥籠が砕けた破片の数だけ増えたに等しいのだから……よく伸びる腕が100本増えました、その一つ一つが自身の意思で自在に動かせますってのは、喩えとしてはそれなりに正確かもしれない。
ともかく圧倒的な制御力でもって100の煌めきを自在に操るシャルロットさん。彼女の力の前に、E級モンスターなどたちまち滅び去っていく。
断末魔の叫びすら聞こえず、ただ閃光と轟音ばかりが響くこと10秒。
シャルロットさんが技の発動を終わらせると、後には何も残らない。すべてが消え果てたただの、土塊ばかりが広がっていた。
戦闘ですらない一方的な力の行使、終了である。ふうと一息吐いて、シャルロットさんが一人言ちる。
「…………鳥籠は砕け、私を導く星となった。絶望も、裏を返すことができれば希望になってくれることがあるのかもしれませんね」
「やったじゃないシャルロットっ!! あんたすごいわよ、私らより強いじゃないの! ちょっと《重力制御》試させてよ、撃ち落とせるか試してみたいわ!!」
「シャ、シャ、シャルちゃん後で今の星出して! わ、私の蹴りで潰せるか試してみ、みたいの!」
「怖ぁ……」
駆けつけるアンジェさんやランレイさんの第一声がとにかく怖い。自分達より今のシャルロットさんのほうが強いというのを率直に認めつつ、自身の力がどれだけ通じるかめっちゃ試したがってくるんだものなあ。
ただ俺としては、それでも実戦となるとやはり、こちらのお二方のほうが最終的には勝つんじゃないかなーとは思うんだけど。
単純に出力が強いほう、出せる技の威力が高いほうが勝つとは限らないのが戦いだ。それまでに培ってきた経験とか技術とか、そこからくるメンタルとか直感とかも含めてその人の実力と言えるだろう。
そうしたところからコマンドプロンプトとして評価するなら、アンジェリーナ・フランソワとシェン・ランレイは同年代の誰よりも実力の高いコンビと言える。
何しろ能力者犯罪捜査官としての活動実績も豊富だからな。戦闘面での経験値が高いはずもないシャルロット・モリガナとは比べるべくもない。
ていうかぶっちゃけ全力で戦う想定をした場合、それぞれ香苗さんや愛知さんにだって対抗し得るんじゃないかな。S級のお二人も当然経験豊富だろうけど、対人戦闘面ではどうしたって普段から犯罪能力者を相手にしている捜査官のほうがリードしてるしね。
「あなた方は、少しでも強者と見るやすぐにそれですね……お断りします。肉体が復活したことによるパワーアップは自分でも驚くほどに強力ですが、だからと言ってあなた方や愛知九葉、山形さんに勝てるなどと思い上がりはしません」
「あら、素直。あんた妙なとこで負けず嫌いだから、今ならちょっと煽ればすぐ乗るかと思ったけど」
「……そういうところが怖いですね、アンジェリーナ。ランレイさんは完全に無意識な分それはそれで大概ですが、すべて織り込み済みであえて煽ってくる質の悪さはあなた特有でしょうね」
クールに受け答えしつつも、どことなくアンジェさんにドン引きしているのが見て取れるシャルロットさん。
復活以後、冷淡な無表情は相変わらずながら声色やちょっとした所作から感情が多少、見えるようになってきたな。
計算ずくで相手の気質や力を見極めようとしてくるアンジェさんの、バトルジャンキーぶりとは裏腹のクレバーさは正味なところ、俺としても結構ヤバいと思っているところだ。
天真爛漫で朗らか、いつも明るいお姉さんなんだけどランレイさんとは別ベクトルで戦闘へのこだわりが強い。しかも頭が回るもんだから割と腹芸もこなせそうなんだよな。
パワーアップというか本来の力を取り戻したけれど、それでも冷静に自分の力量を把握しているシャルロットさんへの、ちょっとした挑発混じりの見定め。
それらをも透かされて、拍子抜けしたようにアンジェさんは唇をとがらせた。
「何よー、ちょっと値踏みしたくらいで失敬ね。ちなみに若い頃のお祖母ちゃんはもっとアレだったそうだし、これはもう完全にフランソワの血ね。なんなら非能力者のママだって割と煽り屋気質だし」
「特別理事のお話は三代目様と五代目様からも時折伺っています。特に三代目のマルティナ様については、特別理事の孫であるあなたのことにも触れて相当警戒されていましたが……今ならその気持ちもわかります。見境のない血に飢えた獣に狙われている心地とはこのことでしょうね」
「言い草! いくらなんでもお祖母ちゃんはともかく私はそこまでじゃないってーの!! ったくその三代目さん、私のことまでいらないこと吹き込んでくれちゃって!」
「えぇ……?」
若い頃のマリーさんの恐れられぶりが酷い。初代にあたるエリスさんも時折めちゃくちゃだったと語っていたりするし、もはやダンジョン聖教聖女の半数はあの人について少なからず恐怖を抱いているんだな。
そしてその血を引くアンジェさんについても、シャルロットさんは同様のものを感じ取っているみたいだ。
フランソワの血、怖ぁ……
マリーさんは恩人だしアンジェさんも尊敬すべき人だけど、それはそれとしておっかなさは感じちゃうよ。
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