攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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いっそ分かりやすいほどのパワーアップイベントへのフラグ

 神奈川さんも一息ついてソファに座り、改めてステラのほうから説明が始まる。

 俺に対してしたのとまったく同じ。すなわち二人にとって分岐点ともなるだろう、重大な選択についての説明だった。

 

『話っていうのは《聖剣》の出力についてのことなの。千尋も正直なところ、最近私達が力不足だって思ってない?』

「ん……まあ、ぶっちゃけるとな。二人でやってた頃は比較対象がいなかったからこんなもんかで済ませたけど、アンジェ達と組んでからは……自分が狭い世界でイキってただけの素人だってのは、常々思い知らされてるよ」

『千尋はすごくよくやってくれてるよ。たった一人でサークルを相手取っていた時も、アンジェ達と合流してからもいつもその時、自分にできることを精一杯してる。そんなあなたを悪く言う人なんていないよ』

「そうですよ、神奈川さん。あなたは立派です」

 

 ステラの指摘に、頬をかいて苦み走った顔をして自嘲する神奈川さん。

 ただ一人で聖剣を手に戦っていた一年間でついた自信が、アンジェさん達と行動するなかで折れているのだと本音を語る姿はいつになく弱々しいものだ。

 

 それをフォローするステラに、俺も深くうなずく。神奈川さんが力不足だとかイキってる素人だなんて、誰がそんなことを言えるだろうか。

 そもそもサークルを一人で追って、数々の悪事を防いできた一年間だけでもとんでもない功績だ。それも本来ならば探査者でもなく、巻き込まれただけの方なのに立派に戦い抜いてくださった。

 誰もがそれを認めているんだ。アンジェさんやランレイさん、ヴァールにもちろん俺や仲間達だって。

 

 けれどこの人からすれば、やはりA級トップランカークラスの探査者、しかも能力者犯罪捜査官というプロ達の姿に、どうしても自分を卑下してしまうところはあるんだろう。

 力なく笑う神奈川さんに、ステラは切なげな目を向けて、だからこそと提案した。

 

『……前から言っていたことだけど、聖剣の力は実はすべてを発揮できていない。私の権限の範疇にないのと、千尋に一時譲渡する方式なのとで、8割方の機能が制限されてる』

「俺の身体が保たないってのもあるんだよな、たしか。そりゃ、今だってパス・オブ・ヘヴンを二発撃ったら息切れしちまうんだし、その5倍の出力なんてどう考えても扱えないぜ」

『そっちは千尋がレベルを上げていけばどうにかなるところだよ。むしろ現時点だと一発打てば行動不能になりかねないあの技を、二発打って以後も身動きできる千尋はすごい』

「神奈川さんの場合、基礎体力があるんでしょうね……」

 

 聖剣の現状──異世界から来たりし概念存在特効兵器は、現状、その機能の大部分をセーブされている。

 由来は二つ、そのうちの一つはワールドプロセッサによる封印だ。フルパワーだと創造神クラスでも破りかねないバランスブレイカーなため、半分にまで出力が落とされている。

 ステラに管理させるにしても、素のままだとあまりに危険すぎるゆえの措置だね。

 

 けれどさらにそこから半分以上、出力制限が設けられているのはステラがスキル《聖剣》を発動して神奈川さんに譲渡するという仕様のためだ。

 本来の聖剣の担い手があくまでステラであり、神奈川さんは現世における代理人という扱いになっているので、余計に枷が掛けられている状態なわけだ。

 

 ただ、これまでの神奈川さんの身体能力的にはそれでも問題なかった。あまり出力が強いと反動もあるし、敵対するサークルの構成員を殺めてしまいかねなかったからね。

 だけど今、プレーローマ・アンドヴァリやAMW持ちの悪魔憑きを仮想敵として考えていくにあたりこのままではパワー不足が過ぎるのだ。

 

 少なくともステラはそう思っているし、神奈川さんも否定はできないでいる。だからこその、この提案なのだった。

 意を決して、彼女が告げた。

 

『これから先、待ち受けるのは決戦。その時に千尋が十全に戦い抜くためにも、せめて聖剣のリミッターを一つ取り外したい。私から千尋に、聖剣使用権限を本格的に譲渡したいの』

「これは世界維持機構ワールドプロセッサもすでに了承済みのことですし、もちろん今ここにいる私、因果律管理機構コマンドプロンプトも承知の上での話です。神奈川さん、最終的にはあなたの判断次第ですけど、私達はあなたに聖剣を託すことを良しと考えています」

「俺が、正式に聖剣の担い手に……!?」

 

 目を見開いて驚く神奈川さん。自分はあくまでステラの代理人と、心底から思っていたからこその驚愕って感じだな。

 こういうところも、俺としてはこの人の素敵なところだと思う。力に溺れる様子が見受けられないんだ……ステラを愛して、ステラさえいればそれでいいと思っているからかも知れない。

 

 そしてそういう人だからこそ、聖剣を担うに相応しい。

 俺は、ステラをも含めたシステム領域の総意として彼に話しかける。

 

「短いながらもあなたを見てきました。ステラにそうまで愛されるあなたは、正しい心で聖剣を振るってきた。だからこそのシステム領域からの提案なのだとご承知ください」

「山形さん……俺に、その資格があると?」

「信じています。あなたは、ステラを愛してくれている」

 

 ステラとともに生きる。そのために手にした力を使う神奈川千尋という人間を、私は信じよう。

 システム・コマンドプロンプトとして……私は、微笑みをもって戸惑う彼を後押しした。




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